この世の地獄は近所でした
心痛い話になります
おれはついに知ってしまったんだ。この世の地獄はなんと近所にあった。
ニャントレ坂道ダッシュを100本し終えたおれは、家へと帰宅していると、市場から香ばしい匂いがしてきた。なにが書かれているって思うじゃん!?
ニャン○ロステーキだってニャん。。。おれの同族が人族に…命を奪われてしまってるニャン。
人族許すまじってここはネコとしてはキレるべきところニャんだけど…。
おれ…前世人間でおれ自身いま獣人目指してるところだニャン。あと47日以内に獣人化しないと…ご主人様に食べられるらしい。
だが待てよ。ご主人様今のおれに勝てそうもない。どうやって食べる気なんだニャン?
ま、まさか別の意味で食べられちゃう?
そ、そんなことはにゃいと思うんだけど。(ドキドキッ)そうなったらご主人様のお身体が持たないと思うんだニャん。
それはそれとして今日の稼いだお金貢いどけば、おれの命伸びるかって期待してみたり・・・。
さあご主人様!おれの全財産受け取ってくれだニャン!坂道ダッシュしながら荷物運び(運送屋の真似事)してお金たくさん稼いだニャン。まあ、闘技場のファイトマネーより安いのだけれど。
ドアを開けてみるとご主人様がいなかった。仕方ないからおれはご飯の支度をしながら部屋で待つことにした。
だが待てど待てどご主人様は帰って来なかった。仕方ないからおれ、ご主人様がお使えしている屋敷に迎えに行ったんだ。
だが…魔獣ネコだから屋敷の衛兵にとめられて中に入れないんだニャん。
ただごとではない嫌な予感がする。この胸のざわめきはなんだろう。その答えを知るのは3日後のことだった。
おれが家の中でご主人様を待ちぼうけていたとき、3日ぶりにドアがノックされた。
ご主人様お帰りなさいませだニャん!おれはドアに飛んでお迎えにいった。
「あなたが、こねっこちゃんね…本当にごめんなさいあなたのご主人様を私は守ることができなかった。でもなんとかお連れしてきたわ。なにか困ったことがあったら私を頼って欲しい。この償いは必ずさせてもらうから。」
彼女は何度も何度もおれに頭を下げご主人様をおれに手渡し屋敷をあとにした。
気持ちばかりの退職金を手渡しながら。きっとそういうことなんだろう。
目に力がなくだらんとしているご主人様。いつものひょうひょうとした雰囲気はそこにはなく、まるでぬけ殻のようにおれに倒れかかってくる。
屋敷に強盗が入ってそれに抵抗した彼女は乱暴を働かれてしまったらしい。その強盗に組みした男がなんとやんごとなき身分の方で裁こうにもさばけなかったとか。
『…こねっこ会いたかった…怖かった…怖かったよぉ…』
震えるご主人様の顔が指先がおれの身体のビロードのような背中の毛に埋もれる。わずかにだが徐々に溢れ出る涙がおれの背中を濡らしていく。
なにをされたのか。誰を憎めば良いのか。そんなことばかりが脳をよぎる。だがなんとか歯を食いしばって冷静になりただ彼女の側にいることを選んだ。
おれがあの日獣人化できていたら。屋敷の衛兵にかけあってもっと彼女を早く引き取ることができたのに。
なにがタイムリミットだ。おれが明日もあるからと悠長に構えているから彼女の傷はさらに深くなった。おれが側にいたかった。彼女はおれが側にいることでどんなに救われたことだろう。
ごめん…本当にごめん。一番辛いときに側にいてやれなくて。駆けつけることさえできなくて。
早く…1日でも早くおれは獣人にならなければならない。
おれは眠れぬ日々を過ごしたであろうご主人様が穏やかな寝息を奏で始めたのを確認しそっと揺らさないようにベットへ連れていき、毛布をかけた。
おやすみご主人様。そしてお帰りなさい。おれは必ず獣人化し、あなたをこれまで以上に身近で守れる存在になります。
溢れんばかりの想いを彼女の寝顔に誓うのだった。
読んでくれてありがとう♪