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ロキは最強に飽きている  作者: 月極典


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伝説の龍、墜つ


『損傷率30%、非常防衛モードに移行します。繰り返します、非常防衛モードに移行します』

 

 道路脇に設置された回転灯が赤く激しく回転し各高層ビルの敷地ごと移住区地下に下降、格納されていく。ビルがあった場所には暗く、巨大な穴があいている。


 ゴゴゴゴ……。


 漆黒の闇となった穴から不気味な機械音が鳴り響き、やがてそこから一斉に現れ始めたのは黒光りする巨大な砲台であった。

 

 立体駐車場のごとく、移住区下部に格納されていたその黒き砲台は下降する高層ビルに連動し横、上へと上昇しスライド、そして今姿を見せた。巨大な宇宙戦艦とはいえ、艦内にこれほど複雑な機構を実現させたウィガン陣営の技術力は驚嘆に値する。


 上空からそれを確認した白龍エルザが先程までの夫婦喧嘩はどこへやら、黒龍ノアに注意を促す。

「ノア、何か出てきたぞ。さっきの砲台とは比較にならない大きさだ」


「あぁ、しかもあの数だ。まともに狙われたら身体が保たん。今のうちに破壊するぞ」

 ノアが熱線で上がりきらないうちに砲台を破壊し始める。次に身体から棘を展開、そこから更に熱線を浴びせる。


 しかし、その黒い砲台はビル屋上のものとは比較にならないほど硬い。熱線により赤く変色するが破壊される事はない。


「エルザ、どうだそっちは?」


「凍りはするけど駄目だね。構わず上がってくるよ!」


 砲台に使われている超硬合金は未知の素材が混合焼結されており、地球のそれより格段に硬度、耐熱性が高い。デメリットとなる過重量も固定砲台とすることで問題とならない。


 地上においても、地殻喰らいのゴーズと合体巨大ゴーレムが破壊にかかるが、ゴーズの咬合力をもってしても文字通り歯が立たない。


 ガゴンッ、ウィーーーン。


 砲台が上がりきり、砲架が回転し照準を定める。しかし、それは上空のノア、エルザを狙わずあらぬ方向を向いている。


(追尾してこない。……そうか!)

 ノアは、でたらめな照準の意味するところを理解して急降下を始めた。エルザはまだ地上を警戒しながら旋回している。


「エルザ、地上に降りろ! 逃げ場がなくなるぞ!」


「くっ!」

 エルザが一瞬遅れて降下する。


 数多の砲身の先から高熱の光が溢れ出し、レーザー砲が上空に向けて発射された!

空はレーザーの射線で見事に埋め尽くされた。それは敵の各個撃破を狙わず、確実に上空全ての敵を焼き尽くす高熱の槍襖となった!

 

 レーザーの光は降下の遅れたエルザを直撃し、身体の鱗を引き剥がし、皮膜の薄い翼を貫通した。体勢を崩したエルザは尚も射線に当たりながら墜落していく。


「エルザ!」

 ノアはエルザの救出に向かう為、地上に着地しようとするも、道路も端から撃ち出されたレーザーが地を這っていて叶わぬと見るや、砲台を足場に勢いをつけて飛翔した。


 身体を最小限にすぼめて射線をひらりひらりと潜り抜けエルザのもとへ滑空する。彼女は目を閉じ、全てを受け入れるように身を投げ出していた。ノアは彼女を抱きしめ、空中でその身を受け止めた。

 

 しかし、落下の勢いは止まらない。地面が間近に迫る。ノアはとっさに身を翻し、自らの背を下にしてエルザを庇うように包み込む。

 巨大な翼が空気を裂きながら開き、まるで緩衝材のように衝撃を吸収した。

 

ドッゴォーーン!

 

 大地が揺れ、土煙が舞い上がる中、硬い砲台に直撃したノアの背中は擦り傷と裂傷で赤く染まっていた。だが、彼の腕に抱かれたエルザの身体には、墜落による傷は一切なかった。


「嗚呼、黒龍と白龍が墜とされた……」

 ジョージィが信じられない様子で呟く。

ゴーズと巨大ゴーレムも道路を塞がれ、行き場を失っていた。

 

「散開!」

 巨大化している不利を悟ったジョージィの号令で巨大ゴーレムはバラバラと合体を解いた。


 彼は冷静に戦況を眺め、少し思案した後に叫ぶ。

「ゴーズさん、潜りましょう!恐らくですが、この砲台はどこかと繋がって動いてます。本体が壊れなくても接続部分を断てば止まるはず!」


「ゴッキュン!」

 ゴーズは少し考え頭を整理すると頷き、その場で地面に穴を開け、砲台の下に潜り込んだ。


「ゴーズさんに続いて地面に潜れ!」


 ゴーズが砲台の真下をみると、砲台は土台に超硬合金の柱で支えられているが、攻撃が想定されていない内部構造の為か、あるいはメンテナンスの為か、レーザーエネルギー供給用のパイプと通信、電力供給用の配線は剥き出しとなっている。


 追いかけてやってきたジョージィがそれを見て指示を出す。

 

「ゴーズさん、それからみんな。手分けしてあの配線を断線させるぞ!」

 数百体のミニゴーレムは号令を合図に内部に散らばっていく。


「ズゴゴゴォオーン!」

 ゴーズも雄叫びを上げ、真上の砲台に繋がる配線を咥えて引きちぎった。


 シュィィィィン……。


 真上の砲台は電力供給と通信を断たれて沈黙した。

 

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