ブリッジ強襲班
ウィガニス艦内、巨大な格納庫。無数の漆黒の戦闘機が出撃の準備中である。戦闘機とは言っても地球のものとは違い、そのフォルムは円盤に違い。
格納庫に入る前、霧のセレナが通気口から偵察用の霧を送り、司令室と思われる場所を突き止めていた。近代的な文明に弱いセレナには司令室、いわゆるブリッジがどのような場所なのか分からなかったが、霧から掴んだ情報を同行している異界の魔王ロックに説明し、場所が判明したのである。
ブリッジ強襲班は、異界の魔王ロック、カイゼル、ウル、バロス、セレナ。目的はブリッジを制圧し、太陽を破壊する主砲の発射を止めることにある。ウィガンが目標を太陽破壊から地球支配に変えたことはまだ知らない。
「この格納庫の中央にエレベーターがある。敵が待ち構えている可能性があるから油断は禁物だ」
ロックはそう言って、格納庫の扉を開けようとした。
「待たれよ、ロック殿。ここは私から入ろう、これでも魔王レイスパーティの前衛を務めるもの……」
手に抱えた頭を胴体に戻しながら、扉に近づくのは炎鉄のバロス。レイスパーティの前衛と自信ありげに言うが、今回の冒険が初の前衛、ここまで、専ら暖房としての役割が主である。
「バロス、やっぱりアンタは熱い男だな。良し、前衛は頼んだぜ!」
バロスに近寄られて、物理的に熱っちぃなと感じたロックだが、そこは良い感じに言い換えた。
「お任せあれ!」
バロスが扉を開ける……。
巨大な格納庫には多数の兵士が待ち構えていた。
扉を開けたバロスに向けて、一斉にレーザー銃を発射する!
「効かぬ! 我が鎧は内なる炎にも耐えうる炎龍の鱗を鍛えた精霊族伝来の逸品!」
レーザーに集中攻撃されながらバロスは両手を広げ、パーティを守るようにゆっくりと歩いていく。
「す、凄え……けど、カイゼル? あいつ防御結界とか張らないのか? 直撃してるんだけど」
ロックは自らを防御結界で守りながら、カイゼルに聞いた。
「うん、バロスは結界張れないよ。あの鎧が防御の全てだね……」
「前衛向いてねぇんじゃねぇか……?」
バシュッ!
バロスの頭にレーザーが直撃する!
カラーーン、カラン、カラン、カラン……
バロスの頭は胴体から飛ばされて地面に転がった!
「それにしても、よくまぁ頭が落ちるな……」
ハッシュといい、バロスといい、今日はやけに頭が飛ばされる。普通は頭が飛んだら死ぬもんだろ、ロックは思った。
「あぁ、もう見てらんないよ!」
パーティの後ろからウルが素早く飛び出す。物陰に隠れ、次の瞬間には飛び出し、空中で回転し、また物陰に隠れる。そうしながら敵兵の群れに近づいていく。レーザーの集中砲火がバロスとウルに分散する。しかし、ウルの動きは速くて捉えられない。
「カイゼル、ウルを援護するぞ!」
ロックがカイゼルに指示を出し、次に雷撃魔法を詠唱する。
「スプリットサンダー……」
敵兵の群れの頭上、一瞬紫に染まり、重く粘るような雷撃が奔る。頭上に直撃した敵兵は装備をスパークさせながら吹き飛んだ。
「オッケー!」
カイゼルが胸の前に手を合わせる。
「草木皆兵……」
ロックの雷撃を逃れた敵兵が辺りを見回して怯え出す。
味方の兵士も敵ではないかと疑心暗鬼に囚われるカイゼルの精神操作魔法である。
そこへウルが突撃する。
数十人の敵兵を片っ端から殴る蹴るのボッコボコである。
格納庫敵兵の制圧は完了した。敵兵士はフルフェイスのヘルメットを装着していたが、ウルに殴られて素顔があらわになっている。顔の左右両端まで移動する一つ目に、口からは触覚のようなものがウネウネと飛び出ている。
「うへぇ、キモい顔……」
カイゼルが舌を出して気持ち悪がった。
「アレも大概だけどな……」
ロックが指差す先には、頭が落ちたバロスがヨロヨロ、ガシャンガシャンと歩きながら、頭がそれを追いかける姿があった。
「こいつら、私の毒霧効くんだねぇ……」
しゃがんだセレナが半死の敵兵に対し、手から毒霧を送る。敵兵は緑色の霧を口、鼻から吸い込み触覚がうねる口から泡を吐き絶命した。
「最初からそれで良くねぇか?」
ロックが皆の気持ちを代表してつぶやいた。
「毒霧撒いたら誰もここに入れないじゃないか」
セレナはそう言ってロックにウィンクした。
(こいつ、めちゃくちゃイイ女だが、ヤバすぎる……)




