お取り込み中失礼する者たち
宇宙戦艦ウィガニス、ウィガン寝室。
巨大なベッドでウィガンとローズマリーが一糸纏わぬ姿で愛撫し合っている。
足元の先、窓の横の壁には十字架に磔刑となっているユーベが扮するオヤマダの姿がある。楔を打ち込まれた両手、両足からポタポタと血が流れている。
(ちっ、人がはりつけにされている前でよくまぐわう気になるわ。おーー、おーー、えーー、なるほど、そうくるか……。それにしても、さっきは危うく血出すのを忘れて疑われるところだった……。なんせ、久々だからなぁ磔刑なんて)
磔刑ははりつけにした後、両脇腹から長槍で絶命させる方法と、罪の重さを思い知らせる為、そのまま放置して徐々に出血させ、身体をカラスなどに食われながら死に至らしめる残酷な方法とがある。今回の場合は殺せば用済みとなるので、捕縛目的だが、見た目は残酷な状態である事には変わりない。しかし、当のユーベには余裕がありそうだ。
ローズマリーは愛撫し合いながらも、上の空であった。オヤマダを連れ帰った彼女に対してウィガンからかけられた言葉は非情なものだった。
「人質などいらん。ロキを見つけて来いと言ったはずだ。ロキがこいつを救いに来るのか? 来なければ予定通りの香辛料にして肉にまぶして地獄の業火で焼いてやる」
(ウィガンが勝ってもこの非情な男から離れられず、ロキがもし勝ったら……女に甘いあいつなら許してくれる……いや、無いか。ハッシュが言うにはあのオヤマダが住む星はロキが最も懇意にしているらしい。あたしはそれの破壊を企てた張本人だ)
過去、ロキが記憶を失う前に、喧嘩を売った同族が消滅させられるのを何回か見ている。本気で怒ったら手がつけられない男、そんな気性に惚れた。
(まったく、強い男を欲しがるあたしのそういう性は死ぬまで治らないんだねぇ)
その瞬間だったーー
寝室のみならず、巨大な宇宙戦艦の至るところにいくつもの強大な気配が一気に生じた!
ブゥンッ
ベッド横に魔法陣が展開され、そこから現れたのはロキ、アイーシャ、魔王レイスの3名であった。
瞬時に身を起こすウィガンとローズマリー。
ロキが巨大なベッドに全裸でいる巨躯のウィガンとローズマリーを見て申し訳なさそうに頭を掻く。
「あらら、ここ寝室じゃん。すいませんねぇ、取り込み中お邪魔しちゃって……。アイちゃん、だから言ったっしょ、廊下から一回ノックして入ろうって」
アイーシャは思わぬ場面に赤らめた顔を背けて抗議する。
「はぁーー? そんな事言いました? いつもところ構わず転移するくせに」
レイスは呆れてたしなめた。
「おい、ロキ、アイーシャ。どうやらここが敵本陣だぞ。緊張感!」
ローズマリーは噂に聞いたアイーシャと言うエルフであることを見とめ、2人のやり取りに対し嫉妬混じりに言った。
「ふぅーん、それが今の女かい、ロキ。相変わらず可愛らしいガキがお好みなんだねぇ……」
「は? 今、私を可愛いガキって言いました? おばさんっ」
怒っているのか喜んでいるのか微妙な表情のアイーシャ。
「誰がおばさんだ、コラ! その長耳引っこ抜くぞ」
「まぁまぁ、2人ともお互い歳の話は言いっこなしにしましょうや、片やエルフだし、片や……ねぇ? もう何億歳かわかんないんだから……あ、いてっ」
ロキは案の定、アイーシャの肘鉄を食らった。
「ローズ、お前は引っ込んであっちの人質の面倒でも見ておけ」
ウィガンが瞬時に鎧姿となり、3mを超える巨躯をベッドから降ろした。
ウィガンは溢れる魔力を纏わせニヤリとしながら言う。
「お前が多次元最強の男ロキか、噂通り拍子抜けするほど軽薄そうなやつだな」
「多次元最強とか、小っ恥ずかしいこと名乗った事もないけど、ふぅん、お前がウィガンか? えーっと、何最強さんだっけ?」
「俺はこの次元最強だ」
「プーークスクスッ、次元がなんたるかもしらねぇ田舎もんが次元を語ってんじゃねぇ。宇宙最強だろ? 井の中の蛙野郎が」
プシュンッ
ウィガンの指からレーザービームが撃ち出され、それはユーベ扮するオヤマダの左肩を貫いた。
「ほら、ロキ様が挑発するからあの人が撃たれちゃいましたよって、えーーオヤマダ社長!」
磔刑とオヤマダが余りに不釣り合いで今更ながらアイーシャは叫んだ。
「ズ、ズコーーッ、き、気付くの遅くてズコーーッ……」
苦しそうにズコるユーベ扮するオヤマダ。
「あぁ、趣味の悪い装飾かと思ってた……」
(ちとやっかいだな。オヤマダが人質、舞子くんはどうした?)
舞子が居ないことを案ずるロキ。
「ズコーーッ、彫像だと思われててズコーーッ」
ユーベはわざとズコーーを連発した。
ロキはオヤマダの方を見て怪しんだ。
(オヤマダはあんなつまらないズコり方をする奴じゃない。ありゃ誰だ?)




