対峙するローズマリーとユーベ
オヤマダタワー55、最上階ペントハウス。
オヤマダに変身したユーベが瞑想しながら、彼の半生を辿っている。
(小山田金次、次男、生年月日は……ふむ、なるほど。いわゆる苦学生で、父親の経営する小山田電機を立て直し、一代で世界有数のコングロマリットを作り上げたか。大したものだが、仕事一筋でプライベートはさっぱりだな……)
(恋愛はそこそこしてきたが、結婚に至らないのは家庭環境が影響しているか。底抜けに明るく見えて、心の奥底に寂しい影が差している。ま、それが原動力でもあるか)
(さてと、続いて……)
「ズコーーッ! 部屋にひとりなのにズコーーッ!」
ユーベはオヤマダ得意のズッコケ芸を練習してみる。
(ふむ、ズコーー1回に対して、状況説明を入れてもう1回か。そしてあまり連発はしない。彼なりの美学があるらしい……)
くだらない芸まで研究する徹底ぶりである。
その時、気配が変わった。
(来なすったね、ローズマリーや……)
ブゥンッ。
リビングに魔法陣が展開され、ローズマリーのグラマラスな姿が現れた。
彼女はオヤマダの姿のユーベを一瞥すると、すぐに柔和な笑みを浮かべた。
「今晩は、オヤマダさん」
「えっ、えーーっ、誰です? あなた。突然人の部屋に現れて!」
「あら、おかしいわね。あなたの部屋はこの下の階でしょ? ここは今日、ロキとアイーシャってエルフが泊まってるはずだけど?」
ローズマリーは部屋の匂いを嗅ぎながら言う。
「この部屋、わずかにロキの気配が残ってるわね。あと……ねぇ、オヤマダさん。もう一人、誰か来なかった?」
(ちっ、鼻が効く女だわい……)
「いやぁ、それはちょっと分かりかねますなぁ。なにせ、あの方々は自由でいらっしゃるので、あなた様のように出たり入ったりされます。ですから、他に来たかもしれないし、来なかったかもしれませんです、はいぃ」
ローズマリーはやや苛立った様子で言葉を返す。
「あっそう。まぁいいわ。それでロキとアイーシャはどこ?」
「さぁ……それが分かれば苦労しません。風呂上がりにロキ様と一杯やろうと思って来たら、もういなかったんで……」
そのやり取りの中、ローズマリーはふとオヤマダの体から流れる緑色のオーラに目を留めた。
近づき、それを手で撫で取り、匂いを嗅ぐ。
「……オヤマダさん。あなた、人間のくせに聖大樹の加護者なの?」
(……マズいか。聖大樹の加護までは消せんからな)
「聖大樹? あぁ、エルフの里のあの大樹でしょうか。加護についてはよく分かりませんが、お守りいただけるならありがたい話です、はい」
あくまで無知な人間を装うユーベ。
「……ロキは聖大樹に逃げ込んだのね。そうなんでしょ?」
「さぁ? 私は明日の会議に顔を出してくれればそれで……」
ローズマリーはしばし黙考し、くるりと背を向けた。
「もういいわ。オヤマダ、お前を連れて船に戻る」
(よし、計画は成った。あとはロキ、お前次第だ)
「えっ、ロキ様を追わないんですか?」
ユーベはあえて驚いたふうに聞く。
「追ってどうするのさ。あんな化け物相手にしたって、あたしが死ぬだけだろ」




