到着、エルフの里
サンダル履きのオヤマダと、よりによってスリッパの舞子。
熱帯雨林のジャングルで歩くのに苦労していた2人だが、合流したエラ、サラの魔法により聖大樹までの道のりが整備されだいぶ歩きやすくなった。
ぬかるみが無くなり歩きやすくなって、色々思いを巡らせるうちに舞子は自然と涙を流していた。今、暑さで自分を苦しめている太陽だが、あれがもし破壊されたら……。
「勅使河原くん、泣いてもいい。だけど希望は捨てちゃいけないよ?我々には誰あろう最強のロキ様がついているんだ。そして、アイーシャ様、黒龍様もいる。ロキ様は普段はテキトーな人だけど、やる時にはえげつないほどの働きを見せるんだ」
オヤマダは一歩一歩、何とか歩きながら舞子を元気付ける。
「だけど、社長。相手は太陽を破壊しようって奴ですよ?どんなエイリアンか想像もつかないですけど、きっと真っ黒いマスクしてシュコーッシュコーッって言ってますよ」
「ダークサイド方面の人ならロキ様には楽勝でしょう。だってあのでっかいペンライトみたいな武器……」
「ライトセーバーですね……」
「あんな物あなた、ロキ様だったら民謡歌いながら倒せちゃいますから」
「そりゃそうか……。ロキ様、強いからなぁ……でもなんでかな、涙が止まらないの、社長」
「それは……アレだよ。久しぶりに抱きしめられたのがボノボ……」
「おい、いくら社長でもそれ以上は許さんぞ……」
「こりゃ、メンゴメンゴ!」
オヤマダはわざといつものように軽口を言って、舞子を少しでも明るく盛り上げようとした。
そんなカラ元気なやり取りをしていると、樹上のエラが声をかけてきた。
「おい、人間たち。着いたぞ偉大なる聖大樹様だ、ひれ伏すが良い!」
「おぉ……」
生い茂った木々が途切れ、ついに聖大樹の全貌が見えた。世界を飛び回っているオヤマダも見た事が無い程の巨木が天高く聳えていた。
「近くで見たらエグいデカさですねぇ、てっぺんが霞んでますよぉ……。あれれ、またなんか涙が……」
過去ロキまでも感動させた慈愛に満ちたその暖かさに触れ、舞子の瞳からまた涙が流れた。
オヤマダを見ると、彼もまた泣いている。アフリカに来てから舞子を連れている事もあり、弱音を殆ど吐かなかったオヤマダであったが、オヤマダ自身も大切なものを失う瀬戸際にいる。築き上げた会社、守るべき社員たち、関係者を含めたその数は何十万にも上る。それらが消えるかもしれない。胸の奥に押し込めていた不安と責任が、涙となって表れた。
そんな2人にエラが声をかける。
「泣いている場合ではない、ここで死んだら祈る事も出来ないぞ。私たちの肩に手を乗せろ、聖大樹様の結界を通らせて頂く」
オヤマダと舞子はエラ、サラの肩に手を乗せて結界を通った。するとそこは森の中ではあるが、先ほどまでのうだるような熱帯雨林の不快さはなく、爽やかで澄んだ空気に包まれていた。
「ファンタジー、すごーー……」
舞子が思わず声を漏らす。
オヤマダにも自然と笑顔が戻る。
「涼しいねぇ、生き返るねぇ……」
「里長のティアナ様がお待ちだ、行くぞ」
森を抜けると大きな屋敷が現れた。裏庭から見える2階のバルコニーに美しいエルフの女性が立っている。
「あなた方がロキ殿のお知り合いですね、私は里長のティアナです。その様子だと道中大変だったようですね……、エラ、サラ、お風呂の用意と着替えを用意して差し上げて」
オヤマダが一歩進み出て挨拶する。
「はじめましてぇ、オヤマダカンパニー社長のオヤマダと申しますぅ。こちらは秘書の勅使河原舞子ですぅ。この度はお招き頂きまして、誠にありが……あれ、めまいが……」
笑顔を保ちながらも、さすがに疲労が限界に達し、ふらつくオヤマダ。
舞子がさっとオヤマダを支えて、秘書らしくフォローする。
「社長、無理しないで。ボロボロなんだから。申し訳ありません、ティアナ様。衣服を整えさせて頂いたら改めてご挨拶致しますので」
「そうですね、無理をなさらず、ゆっくり疲れが取れたらお食事にしましょう」




