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ロキは最強に飽きている  作者: 月極典


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ユーベの策


 オヤマダタワー55最上階ペントハウス。

豪華なリビングルームのフカフカのソファでグレーのスウェット上下を着たオヤマダは眠気に耐えきれずうたた寝している。夢心地の中、誰かがオヤマダの頬を叩く。

「お母ちゃん……。今日は疲れたんだ……もう少し……」


 パッと目を覚ましたオヤマダ。目の前に金髪ロン毛髭面の見知らぬ顔があった。

「お母ちゃん、髭生えてる……」


「誰がお母ちゃんだ、こんなダンディな紳士に向かって」

 ユーベである。遥か遠くアフリカ中西部の密林から大都会のビル最上階に姿を現したのだ。


「えっ、やだ、あんた誰?」

 オヤマダは何故かおネェ言葉で聞いた。


「君はそっち系か?まぁいい、これで顔を拭いて目を覚ましなさい」

 ユーベはホッカホカの蒸しタオルを出現させて手渡した。気が利く男である。


 蒸しタオルに顔を埋めるオヤマダ。

「ん〜効くぅ〜、おじさん、貴方わかってますねぇ。それで、ロキ様のお知り合いですか?その格好」

 目が覚めたオヤマダ、顔を拭きながら鋭く推察する。危険を感じないわけでもないが、さすがに肝が座っていて動揺はない。


 そんなオヤマダの泰然とした様子を見て、さすが世界に名を馳せる企業家と感心するユーベ。

「まぁ、そんなところだ。ロキとはさっき会ったよ、アフリカでばったり。可愛らしいエルフを連れておったわ」


「お?ロキ様とアイーシャ様、聖大樹を見つけられましたかな?」


「あぁ、無事辿り着いて今はこの世界にはおらんな」


「そうですか、それは良かった……。こっちに来られて帰れなくなったらロキ様はともかく、アイーシャ様が可哀想でしたから」


 ユーベは頭を掻きながら言い辛そうに答える。

「それがなぁ、オヤマダくん。万事丸く収まったわけじゃないんだよ……」


 ユーベはこの地球に迫る危機を説明した。この宇宙で悪名高いウィガンが太陽破壊を狙っていること、それがいつ起こってもおかしくない段階に来ていること、そして、首謀者の1人、ローズマリーが今、地球でロキを探していること。


「ロキの知り合い、もう1人居たね?その子は?」


「夜も遅いので寝かせています」


「悪いが、至急呼んできてくれるかな?」


 オヤマダは勅使河原舞子が寝ている寝室に行き、呼んだ。

舞子は目を擦りながらリビングルームへふらふらと現る。

「社長、せっかく今黒龍様に乗って大空を旅する夢を見ていた……ってロキ様がおじいちゃんに!」


「すまんが、お嬢さん詳しくは後でオヤマダくんに聞いてくれ。……申し遅れたが、私の名前はユーベ。この地球を長年見守ってきた者。この星の破壊は私には止められないが、最後の悪あがきをする)


 そう言ってユーベはオヤマダの頭に手を乗せた。


「えっ、ちょ、頭はやめて……」

 

「急ぐ、静かに」

 やがて、ユーベの姿はオヤマダのものへと変わっていった。骨格がきしみ、皮膚が伸び、服までも歪むように変質していく。


「ん、何やら頭部に違和感……」

 オヤマダの姿となったユーベが頭部をペシペシと叩き始める。


 焦るオヤマダ。

「ユーベさん、頭部は弄らなくて大丈夫ですから!」


 ユーベは2人に向かい、静かに話し始める。

「2人とも、あまり時間が無いから良く聞きなさい。今から魔法陣で君らをアフリカにある聖大樹の近くへ転移させる。聖大樹に向かって行くとエルフの迎えがある。彼女らの案内でエルフの里に入りなさい。さすれば、この星が破壊されても君らは無事だ」


「えっ、君らはって、家族とか友達とか……」

 舞子は当然の疑問を口にした。


 ユーベは茫然とする舞子の右頬に、右手の甲で優しく触れる。

「お嬢さん、今ここに至っては終末の刻。全て運命に委ねなさい」


 オヤマダと舞子、2人の身体は魔法陣に消えた。

 

(さて、ローズマリー現れるが良い、我が元へ)

 

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