王都防衛戦 ⑵ 黒龍と鼻息とおじさん
「毎度どうもー!!ロキシュタイン伯爵ー!!」
「毎度毎度、オヤマダ社長、良い感じじゃない、格納庫」
「はいー今回オヤマダ建設の方でしっかりと設計から施工まで責任を持って完成させて頂きましたー」
オヤマダ電機から始まった彼の会社オヤマダカンパニーは現在、IT産業、建設業、リゾート業、食品外食産業etc……と手広くかなりの規模となっている。
オヤマダはロキの後ろに控えて辺りをキョロキョロ見回しているアイーシャにも挨拶した。
「これはこれはアイーシャ様、本日もお美しいですなぁ。最近は私どもの世界ではこんな事言うと、やれセクハラだポリコレだパリコレだ言われて大変なんですが、美しいものを美しいと言ってなーんで怒られにゃならんのかと……」
「まぁ確かになぁ、美しいものは美しい、それを黙って密かに思っている方がいやらしいと俺も思うよ。パリコレとは言われないけどな」
ロキはめんどくさかったが、オヤマダジョークを一応拾ってあげた。
「オヤマダさん、こんにちは。すいませんねぇ、ロキ様が無理言ってこんな魔族に囲まれた城内でお仕事させて……」
「あーいえいえ、アイーシャ様、我々納期第一主義、例え魔族に囲まれようとも……って、ちょっ、この城魔族に囲まれてるんですか?」
「うんうん、なんか凄いよー?外は。魔族魔獣が大挙して押し寄せて落城寸前だった」
「でも魔族の類いはロキ様が先の戦いですっかり片付けたとお聞きしてましたが?」
「そのはずなんだけどな。とは言え俺も魔王殺すの途中で止めてそこらに居た勇者パーティA、B、Cに任せて帰ってきちゃったから良くわからないんだよね。まあ残党がいたんだろうね、それにしちゃ凄い数だけど」
「ロキ様にしては画竜点睛を欠きましたな?」
「そう言ってくれるなよ。逆に今、久しぶりにちょっとワクワクしてるんだ、あの大群をどうしてくれようかってな」
「おぉ、どこぞの戦闘民族みたいですなー!」
「オラ、すっげぇ……」
「ロキ様、その辺で……」
ロキが調子に乗り始めて話が進まなそうな気がしたのでアイーシャが制した。
「えーと、何だっけ、あー黒龍にコクピットってつけられた?」
オヤマダは良くぞ聞いてくれましたとばかりに
「正直、今回それが一番大変でした……うちの社員に黒龍様を見せるわけにいかず……コクピットをあっちで製造してこちらに運んで取り付けを私がしたんですよ?もう、怖いの怖くないのって怖いんですけどね!」
「あはは、嫌がったろう黒龍」
ロキは黒龍の方を見るが、背を向けているのでどうなっているのかわからない。
オヤマダは案内する様に黒龍の正面に向かって歩きながら説明した。
「はい、まず取り付ける事を了承してもらうところからスタートして、何回鼻息で吹き飛ばされたか……でも、私の熱意が何とか通じて、こちらをご覧下さい」
黒龍の額、二本の角の間に透明なキャノピーが見える。
「おぉ……格好いいな、ピタリとフィットしてるじゃないか。黒龍、どうだ?少し違和感があるかもしれんが」
黒龍はバフー!と鼻を鳴らした。
目の前のオヤマダが咄嗟に頭を押さえる。
「ひぃ!黒龍様、取れちゃう……じゃなくて髪型が乱れますー!」
アイーシャがその様子を見て笑いを堪えきれずに吹き出した。
「黒龍、ちょっとキャノピー開けるぞ、さぁアイちゃんもおいで」
ロキはキャノピーを開けた。
白い革製のシートが縦に二つ並んでいる。
操縦するわけではないので操縦桿や計器類は付いていない。
「良いシートだ、オヤマダ社長」
オヤマダはニヤニヤしながら
「はいー、なんなら背もたれを倒せば二人位寝られない事もないですよー?」
「そんな機能必要ありません!」
アイーシャが即座に反応した。続いて黒龍がさっきより強めにバフーー!!とオヤマダに鼻息を当てた。
オヤマダは頭を押さえながら
「ジョークですよぉ、アメリカンジョーク。黒龍様も怒らないで下さい……虎やライオンより怖いんだから……」
「で、あの扉は自動か?」
「はい、黒龍様が扉に近づくだけで自動で開きますよ!」
この格納庫は南側の断崖絶壁に面しており、扉が開けばそこは広大な海が広がっているはずだ。
ちなみに……上階の浴場は室内風呂を抜けると海に面した、黒龍が浸かれるほどの大きな露天風呂となっていて、ロキもアイーシャもお気に入りの場所となっている。が、もちろん、まだ一緒に入った事は無い。
ロキとアイーシャは早速コクピットに乗り込んで、シートベルトを締めた。
「じゃあオヤマダ社長、ちょっと上空から様子を見てくるから。請求書はその辺に置いといてくれ。支払いはいつもの様に。ここは今戦争の真っ只中だから早めに自分の世界に帰れよ?」
「はい、毎度ありがとうございます!戦闘の様子はキャノピーに取り付けたG-proを通して拝見しても構いませんか?」
「あぁ、別に構わんよ」
「それでは、いってらっしゃいませ!」
オヤマダは深く頭を下げて見送った。
黒龍はゆっくりと巨体を揺らして格納庫の扉の前まで移動した。
扉はゆっくりと前に開くと天井にスライドしていく。
黒龍が飛び立つ前に前面に広がる海原が見えたが……
「アイちゃん?なんか海賊船みたいなのが沢山見えるんだけど……」
「あら、あの帆の印は南の大陸オーストベルクのものですね」
言った瞬間、大型帆船の一つから大砲が火を噴いた。




