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ロキは最強に飽きている  作者: 月極典


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ローズマリーの焦燥


 ウィガンの銀河戦艦『ウィガニス』、全長5kmの巨大戦艦が、太陽系内に侵入、太陽を射程内に捉えた。


 ベッドルームから眩く光る太陽を眺めながら、全裸のウィガンはローズマリーに聞く。

「ローズ、もう射っちまっていいのか?」


「ちょっと待っておくれよ、今ロキの気配を探してるんだけど、居ないんだよ」


「ちっ、俺はあの最強のロキが殺せるって言うからこんな宇宙の端っこまで出張って来たんだ。無駄足だったらお前をすり潰して香辛料にしてやるからな」


 ローズマリーは後ろからウィガンを見ながら後悔し始めていた。褐色の肌に筋骨隆々の身体、身長は3mを超え、顔もローズマリー好みの精悍な顔立ち。最初こそ、ローズマリーの策に乗り優しさを見せたが、徐々にその内なる凶暴性を見せ始めた。通りかかった星を破壊し、知的生命体がいると見るや、部隊を送り支配し、奴隷とした。それもここ数日の出来事であった。


「仕方ないだろう?私だってあんたの術で次元の書を使えないんだ。それにしても、ロキの気配が辿れないなんて、この次元に居ないのかもしれないよ」


 ウィガンは、今は自分を殺さないだろう。ローズマリーには確信がある。何故なら、彼女の次元の書を使い、ロキだけで無く、次元の管理者を片っ端から殺すつもりだからだ。グライネを殺した事でその自信を深めている。ウィガンはこの宇宙最強を自負しているし、恐らくそうだろう。しかし、ロキ達がいる限り、井の中の蛙に過ぎない。彼は己の目標を定めている。

 

 自分こそが、次元を超えた覇者になる。


「ちょっと探してくるよ。最悪ロキの関係者を連れて戻ってくるさ」


「ふんっ、あの青い惑星の自転分だけ待ってやる。時間切れでこの恒星系は終わりだ。戻らなければ、お前は俺に追われて死ぬ」


「わかってるよ!」

(24時間か……あまりゆっくりはしてられないね。あーあ、ウィガンに手を出したばっかりに……)


 ◇◇◇

 

 それより数時間前のアフリカ大陸南西部。

ロキとアイーシャの2人は紛れもない聖大樹の前にいた。


「あぁ、聖大樹様!ご無沙汰してしまい申し訳ありません!」

 アイーシャは膝を付いて手を合わせて謝罪した。


「アイちゃん、この聖大樹様があっちの聖大樹様と一緒かわからんぞ?」

 ロキが頭を掻きながら言う。


「聖大樹様は聖大樹様です!」

 理屈抜きで言い切る。


「お、おう。取り敢えず結界入るか」


 結界内に入ると、先程までの熱帯雨林特有の湿った熱気は無くなり、爽やかな春の様な空気に変わった。植生も変化し、アイーシャにとっては懐かしいエルフの里アルファインと同じと言って良かった。

それを感じたアイーシャが空中高く飛翔した。

 

「ロキ様、あの屋根!我が家です!」

 ロキがアイーシャを追いつくと、森に囲まれた先に見覚えのある屋根が見え、その向こうに聖大樹が聳えているのが見えた。


 アイーシャが森を抜けると、そこには里長の居館アイーシャの実家があり、2階のテラスで裏庭を眺めながらお茶をするエルフの婦人、里長のティアナの姿もあった!


「お母様ぁー!」

 アイーシャがテラスに突進してティアナに抱きついた。


「え?え?アイーシャ、何処から現れたのあなた!裏庭の森は入っちゃ駄目って……」

 突然、思いもしない場所から現れたアイーシャに仰天する里長ティアナ。


「わかりません!なんか、なんか、あいつが変な事に巻き込まれて、今ここです!」

 後ろから来たロキを指差して、母親に言いつける様に言う。


「あいつ?」

 ロキを見て、2人の仲が悪くなっているのを心配したティアナ。報告では、2人は良い感じと聞いていたのに……。


「あぁ、えーっと、ロキ様、ロキ殿、ロキ……なんて呼べばいいですか?お母様」


「いや、知らないわよぉ。普段は何て呼んでるの?」

 涙目のアイーシャに優しく聞く。


「今は……ロキ様です」

 何故か恥ずかしそうに言うアイーシャ。


「じゃあ、それで良いじゃない。ねぇ、ロキ殿」


「あぁ、まぁ、はい。ところでティアナ様、久しぶりに顔出しておいて申し訳ありませんが、ちょいと急いでますので聞いても良いですか?」


「お茶を飲む時間もないかしら?」


「では、一杯だけ……いや、水も下さい、たらふくの」

 ロキは死ぬ程喉が渇いていた。

 

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