アフリカ大陸中西部のおじさん
ペントハウスに戻った4人、あれからアイーシャは一言も口をきいていない。
「ロキ様、私は下の54階に自宅がありますので、一度帰宅しますが、いつでも電話下さい。勅使河原君は、うん、今日は思い切ってここに泊まっちゃうか?」
オヤマダは冗談半分で言ったつもりだったが……。
「え?そのつもりで着替え一式持って来てますけど?」
今更何をという表情の舞子。今日はアイーシャと買い物と観光の予定を立てるつもりだったのだ。
「あはは、流石だな、舞子君。なぁ、アイちゃん?」
「……」
「駄目だわ、オヤマダ、俺1人で言ってくるから、このプンスカ娘を何とかしといてくれ」
「え……」
下唇を噛んだアイーシャの顔が紅潮し、目に涙が浮かんで来る。涙を堪えながらロキを睨んでいる。
「…………わかったよ連れてくから、んな睨むな」
ロキは魔法陣を出した。
「じゃあオヤマダ、聖大樹様見つけたらとりあえず電話するわ。舞子君は適当に部屋でゆっくりしててくれ」
「はい待ってます、お気をつけて行ってらっしゃいませー」
「アイさん?気をつけて行って来て下さい」
アイーシャは涙を我慢しながら、舞子にこくりと頷いた。
魔法陣の光がロキとアイーシャを包み込む。
2人はアフリカ中西部、熱帯雨林に囲まれた湿地に転移した。足場が悪いので転移した瞬間に宙に浮いた。
聖大樹の緑色のオーラは日本より色濃く、密林の奥地へと続いている。辺りは鳥や猿の鳴き声で騒がしい。
気温はやはり、30度を超え湿度でシャツが身体に纏わり付く。
「やっぱり暑いな、ジャケット置いて来て正解だったな……んじゃ、進もうか」
ロキは宙に浮いたまま、アイーシャに振り向いた。
「ぐすん……ふぇ〜〜〜ん……」
アイーシャは、オヤマダ達の前では我慢していた涙が堰を切ったように溢れ出した。そして、ロキの胸に顔をうずめて泣いた。
シャツを通してアイーシャの涙がロキの身体に伝わってきて、思わず抱き寄せた。
「そのなんだ……悪かったよ、アイちゃん」
「私も……すいません、わかってるんです。オヤマダ社長が折角用意してくれた食事の場をロキ様が無駄にしないように振る舞ってた事は……でも、これからどうなっちゃうんだろうって私、心配で……」
(半分マジで腹ペコで焼肉食いたかったってのは、冗談でも今は言えない……)
「まぁ、あれだ、俺が何とかするから任せとけ」
「はい……ところで、なんか……」
「ん?」
「ここ、あっつい!」
アイーシャはロキを両手で押し除けた。ロキは慣性の法則により、遠ざかっていった。
「あれ?ロキ様、向こうから誰か近づいてきますよ」
遠ざかりながらアイーシャが指差す方を見る。ハッシュと同じ様な簡素な白い布を羽織った髭面で長髪パーマのおじさんだ。同類の様だがロキは相変わらず記憶が無く、誰だか分からない。
男は鼻歌?を歌いながら近づいて来る。
「フン、フン、フン、フーン♪ドタステーテ、スタッタッ」
何処かで会った様な、いや、親しかった様な……記憶を辿るが、思い出せないロキ、
「アイちゃん、素通りするぞ。なんか歌ってるし、自分でドラムも担当してるし……」
見た目こそ気品を感じるが、この密林で宙に浮きながら鼻歌の時点で得体が知れない。
「はい、怖いですね」
「ドタステーテ、スタドン、チャッチャッ、ピョーン、ギュ、ワーンワワーン♪」
「やばい、ギターも担当し始めたぞ……」
気づかれないよう、小声で言うロキ。
「あれ〜?そこに居るのってもしかしてロキぃ?俺だよ俺!何してんの?女連れて!」
気づかれた。
「あー!おぉ〜……」
とりあえず、やり過ごそうと感嘆して見せるロキ。多分久しぶりなんだろう。
「誰か思い出したんですか?」
「全然……」
男は近づきながら気軽い感じで忠告した。
「何でも良いけど、この星もうすぐ無くなるから、デートするなら他でした方が良いよー」




