ヘリポート
「きゃーアイさん来たぁ〜!」
声を聞きつけた勅使河原舞子が社長室に顔を出した。
一緒にロキ邸の温泉に入ってからアイさん呼びになっている。
「わぁ、綺麗なドレスですねー!袖がシースルーだぁ、ありがてぇ、ありがてぇ」
舞子はハエの様に手をこすり合わせて拝んだ。
「ありがとう、舞子さん。でもお願いだからそんなに拝まないで……」
照れるアイーシャ。
「舞子君、ちなみに俺もいるんだけど……」
ロキが寂しそうにアピールした。
「あ、ロキ様、いらっしゃいませ……」
舞子はロキを直視しない様に丁寧に一礼した。
(ちょい、ロキ様やばっ、スーツ姿かっこよ!だめよ、舞子あれはアイさんのもの、直視したら惚れてまうかも。なるべく、姿がぼやける様に見るのだ!)
一礼から顔を上げた舞子は焦点が合わない様に寄り目になっていた。
「プッ、なんで変顔で俺を見る!」
寄り目の舞子に吹き出したロキ。さすが、オヤマダ自慢のおもしれー女だと改めて思った。
「勅使河原君、お笑いオンステージ中悪いんだけど、これからお二人を屋上のヘリポートにご案内するから」
「わかりました。こちらへどうぞ」
舞子は切り替えて2人をヘリポートへ案内する。
オヤマダタワー55階はエレベーターを降り、フロア入り口を入るとフロア受付、左に進むと秘書課横の通路を通り社長室へと繋がる。
右に進むと屋上へ上がる階段があり、待合室を出るとヘリポートとなっている。
通路を抜けて談笑しながらフロア受付の前を通る4人。受付には2人の女性社員。社長室から来たからには今来た訳ではないので座ったまま丁寧にお辞儀をする。4人がヘリポートへと去った後……。
受付の女性社員が小声で話し出す。
「ねぇ、今のVIP誰かしら?」
「さぁ、私達が休憩中に来たのかな?」
「ちょっと来客予定見て」
「えっと、某国王室王子夫妻だって……」
「2人共めっちゃ日本語話してたよね?しかも、奥様の方見た?」
「見たぁ、めっちゃ綺麗だった!」
「違うの、耳見なかった?」
「見なかった」
「エルフのコスプレしてたの、耳が長くてとんがってた」
「へぇ、アニメの影響だね……」
「もう、まんまエルフだったぁ……てぇてぇわぁ」
屋上に上がった4人、風が強くアイーシャの帽子が飛ばされそうになる。
「きゃっ!」帽子を押さえるアイーシャ。
(きゃっ!だって、かわよ……)
舞子はアイーシャの一挙手一投足にときめいたが、帽子を押さえた時、顔の横に付いている物に気がついた。
(あ、耳……、受付の2人……、大丈夫か後輩だし、本物のエルフだって言っても信じんわい)
「ロキ様、見て下さい!この眺め!夜景!最高ですねぇ、わぁ凄いなぁ……凄いよ、本当に」
アイーシャが心から感動しているのを見て、ロキはこれだけでも連れて来た甲斐があったと思った。
「アイちゃん、このデカい建物、全部オヤマダの所有物なんだぜ?信じられるか?」
「全然、全く信じられません!」
「ズコッ!久しぶりのズコッ!」
オヤマダは強風の中、自社ビル55階屋上で頭を押さえながら渾身のズッコケを見せた。
「さて、じゃあ魔法陣置かせてもらうか」
ロキは次元の書を出して、ロキ邸格納庫を繋ぐ魔法陣を作り出そうとするが……。
「あれ?」
掌を広げ、困惑するロキ。
「どうしました?ロキ様」
夜景に見とれていたアイーシャがロキを振り返る。
「なんか次元の書が出ない……」




