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ロキは最強に飽きている  作者: 月極典


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その男、小山田カンパニーの社長なり


 私とロキ様が黒龍と共に旅に出てすぐの事でした。


 私達は黒龍の背に乗り、何処へ向かうか、そもそも何から始めるか思案していました。

 

「ん、あれ?なんか声が聞こえるわ」

 

「そうですか?私には何も聞こえないですけど?」

 

「いや、頭の中でオヤマダってやつが何で最近呼んでくれないってしつこいんだ」


「黒龍、悪いがその辺に下ろしてくれるかい?」

 言われて黒龍はフンッと鼻を鳴らして着地した。

 

 ロキとアイーシャが地面に降り立つと目の前に魔法陣が現れ、一人の男が足元から徐々に現れた。


 アイーシャは正体不明の男が実体化するのを、居合の構えで待ち構えた。


「アイーシャ、ちょい待ち。なんか見覚えあるわ」


 現れた男は、紺のスーツに赤いネクタイをした、何となく違和感のある七三分けの中年のおじさんだった。

 

「毎度どうもー!ロキシュタイン伯爵!!ご無沙汰しておりますーー!!どうですかぁ?やってますー?」

 男はそう言ってゴルフのスイングをしてみせた。


「いや、だからこっちにゴルフ場無いからやってないって」


「あっ、そうでしたそうでした!いやもう、全然お呼びがかからないんで、他の取引先に浮気されてるんじゃないかってやきもきしてましたよー!あれ?あれあれあれ?」

 男はアイーシャの存在に気づいた様だ。


「もしかして、彼女さんですか?それとも私に黙ってご結婚されたとか?いやいや、めっちゃくちゃべっぴんさんですなー!いや、隅におけませんなー!」


 アイーシャは顔を赤らめて否定した。

「いえ、そんなんじゃないんです。ただ一緒に旅をしているだけでして……あの、私はアイーシャと申します……」

 

「良いですなぁ、照れながらも居合の構えを崩さない!大和撫子はこうでなくてはいけません!伯爵ー!逃しちゃあいけませんぞー!」

 

 男は懐から何かを取り出し、丁寧に差し出しながら言った。

「これは失礼しました、私、オヤマダカンパニーの社長をさせて頂いております『小山田 金次』と申しますぅ。お察しの通り、次男で御座いますぅ、ええ、ええ。兄は金太郎と言いますぅ、ええ、ええ」


 (何だろう、すごくこわい!ほっとくとずっと喋ってくる!あとなんか変な格好してるし……魔人の類いかしら……)

 アイーシャは初めて見る人種に酷く怯えた……


「オヤマダ社長か、久しいな。ヅラの調子はどうだい?」


「いやいやいや、これ地毛ですからー!生えてますから頭皮からー!伯爵ダメです、生え際どこだ?じゃないですからー!」

 オヤマダは頭を両手で押さえながら言った。

 

「ロキ殿、ロキシュタイン伯爵って、もしかして本当の名前じゃないですか?」


「いや?偽名だよ、確か」

 ロキはアイーシャの耳元で平然と答えた。


「オヤマダ社長、実はな……」

 ロキは自分の以前の記憶が無いことを話した。


「ほう、それはまたお気の毒な……。でもですな、私も伯爵の素性はあまり聞かされておりませんので……」


「俺がロキシュタイン伯爵だと名乗った時、他に何か言ってなかったかい?」


 オヤマダは記憶を辿る様に腕を組んで話始めた。


「私が社長室にいた時に、先程の様な魔法陣で突然現れてこられまして……色々こちらの商品を買いたいから取り引きしてくれとおっしゃいましたな」


「ふむ、怪しさ満点だな」


「失礼ながら、警備を呼ぶ寸前でしたが……目の前に大量の金塊を積まれまして……取り急ぎ前金で受け取れと言われて、そこはまぁ、私も商売人ですから?現金取り引きならと」

 オヤマダは頭を掻き照れながら言った。


「で、いくつか珍しくもない電化製品を注文されて、去り際に私、先程の様に名刺をお渡ししつつ聞いたんです、お名前は?と」


「お、それで俺は何と答えた?」


「俺はロキシュタイン伯爵だ。と」


「それでここからが私なんぞに理解しがたい話なんですが、俺は『多元宇宙を閲覧する者』で、こちらの次元に興味があるから今後協力してくれと」


「それから色々な取り引きをさせて頂きまして、今ではロキ様、キンジと愛称で呼び合うほどに……」


「結局ロキ様って呼ばれたら偽名意味ないじゃないですか」

 アイーシャが笑いを堪えながら小声で言った。


「多元宇宙……か」

 ロキは記憶を辿る……

「うむ、これか!」


 ロキは手を開くとそこに古い書物が現れた。

 そして、それをパラパラとめくり始めると不思議な事にページが金色に輝きながらいつまでも終わる事なく、めくられ続けた。


「ロキ殿、それは……」


「アイーシャ、驚くなよ?この世界、世界って言っても、この星の事だけじゃない。夜、空に輝く星々を含めた広大な宇宙全体の事だ」


「えっと……はい……」

 アイーシャがこの時点で理解が追いつかないのも無理はない。

彼女は夜に輝く星々のその先の事など気にした事もないのだ。


「んー簡単に言うとだな、俺たちの住むこの世界はさっきめくった書物の様に無数に折り重なったページの一枚でしかない。今この瞬間に同時進行で無数の世界が存在しているんだ。その殆どの世界はこの星自体が無いか、あっても生物がいなかったりつまらん世界さ。オヤマダ社長はそのうちの一つから俺が見つけて知り合った……おじさんだ」


「いや、ズコッ!壮大な話の最後におじさんて!」

 オヤマダがわざとらしくズッコケた。

年季の入ったズッコケだ。


「ロキ殿、ちょっと今の話は理解するのに時間がかかりそうですけど……良かったですね、私も嬉しいです。貴方を少しでも知っているおじさんにまた出会えて……」


「感動からの……ズコッ!」

 小山田金次、この男は数年後、米経済誌の表紙を飾ることになる。

 

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