天涯孤独
地獄の井戸2階層の番人の部屋入り口の前に魔王一行がいる。
「イギャ、ゲタキ、マコーラ」
「ゴギャ、クギャス」
「グゲ、グス、ギャラーゲ」
中から複数のゴブリンの声が聞こえる。
「セレナ、毒の霧を扉の隙間から入れてやれ」
レイスが指示する。
「はいな」
セレナは紫色の霧を扉の隙間から送る。中からゴブリン共の悲鳴が響く。
扉がドン、ドンと体当たりされる。
「来るぞ」
扉が勢いよく開いてゴブリンが逃げ出してきた。
待ち構えていたバロスが剣に炎を纏わせて構える。
「憤怒!」
バロスの剣は複数のゴブリンを纏めて叩き切った。
「そうら!」
続けて出てきたゴブリンにウルの拳が放たれる。
レイスは掃除の終わった入り口をゆっくりと中へ入っていく。
部屋の中には奥にゴブリンキングと見える巨躯のゴブリン。周りにゴブリンメイジやハイゴブリン等の上位種がいる。しかし、その表情には魔王レイスの強大な魔力を前にした恐怖が滲んでいた。
「カイゼル、俺が手を下す相手だろうか?」
「いや、兄上。雑魚の掃除は任せてよ」
カイゼルはニヤリとした後、両手を広げ、胸の前でパンと手を組み合わせ呪文を唱えた。
「天涯孤独」
側近のゴブリン共が怯えながらも攻撃体制に入る。最後尾のゴブリンキングも剣を抜き、構えると、どうした事か、側近の首を刎ね始めた。巨躯のゴブリンキングが全ての仲間の首を刎ねた後、夢遊病にかかったかの様に前に進み出てカイゼルの前に跪く。
そして、自らの首を刎ねて戦闘は終了した。
「えぐぅ!でもさぁカイゼル、あたしはアンタの術で天涯孤独が1番好きだね。見応えがある」
ウルが思わず感嘆し、賞賛した。普段喧嘩の絶えない2人には中々ない事だ。
「へぇ、ウルに褒められてなんかくすぐったいよ」
「カイゼル、久しぶりにお前の天涯孤独を見た。相変わらずの恐ろしい術よ……」
「へへっ、ありがと兄上!」
カイゼルは鼻を擦った。
これがパーティというやつか、悪くないものだ。
レイスは3階層に向かいながら感慨に浸っていた。




