バロスの見せ場
魔王一行は地獄の井戸1階層に降りる回廊を降っている。大穴からは禍々しい魔力と共に冷気が漂い穴の外とは比較にならない程気温が低い。
「寒いなぁ、こんなに寒かったかなぁこの穴……。ねぇウル、バロスの後ろ替わってよー」
カイゼルがウルに順番を替わるようせがむ。
「嫌だよ!せっかくここまでの道中ストーブの後ろで我慢したんだ」
カイゼルとウルは悪態をつき合いながらも、仲の良い姉弟の様な関係だ。
「ちぇっ、ワーウルフは寒さに強いだろ?ケチ」
(人気だ……例え、ストーブと呼ばれようとも)
炎鉄のバロス、ユニークスキルの「暖房」が役に立っている。
1階層のボス部屋に続く通路の入り口が見えて来た。20階層までの魔物は狩り尽くしているはずだが、篝火に照らされた入り口には2体のゴブリンが槍を持って守っているのが見える。
「良し、早速敵のお出ましだ。手応えがないが、肩慣らしには丁度……」
レイスが話している途中で魔王一行に気付いたゴブリンは通路の奥に逃げていく。
「ヤタ!マタ!ギエンガ!」
「ゴマト、ナタ、ギエンガ!」
何やら叫びながら、壁を叩きながら走るゴブリン達。
「へぇ、この通路、罠だらけみたいだね。壁にスイッチが沢山ある」
ゴブリンの様子を見て予測するカイゼル。
「魔王様、私がタンクとして先頭で罠を解除して歩きます」
意気揚々とバロスが名乗り出た。
「頼んだぞ、バロス」
「フリかな?」とカイゼル。
「フリだよ」とウル。
「ヒールの用意しておくわ」とセレナ。
バロスは頭を首に戻し、ゆっくりと薄暗い通路を進む。見た所、通路の床にスイッチらしいものは見えないが……。
ゴッゴゴ……
バロスが進んだ先、床の一部が沈む。
ピュンピュンピュンピュンピュンピュンピュンピュン
大量の鉄の矢が左右の壁から射出された!
鉄の矢が刺さりながらバロスの頭が飛んだ!
バロスの鎧には矢が隈なく刺さっている。
バロスは頭を拾うと、ゆっくりと戻ってくる。通路から出たその姿はまるでハリセンボンの様だ。
「ププッ、カイゼル、ちょっと!笑ったら可哀想だよ!」
「ウルだって……くくっ!」
「バロス、無理をするな。ゴーズ!いるか!」
(無念……)
痛恨のバロス。
「ズゴゴォオーン」
壁からゴーズが顔を出した。
「ゴーズ、その通路に罠がある。部屋の前まで解除しながら進んでくれ」
適材適所、最初からゴーズにやらせればバロスが恥をかくことも無かった、とレイスは初めてのパーティでの行動の難しさを感じていた。
「ズゴォオーン」
ゴーズがその巨体を壁から現した。通路までゆっくりと巨体を揺らしながら進むと、僅かに身体を丸めて進み始めた。狭い通路にゴーズの身体は収まらず壁や天井を破壊しながら進んでいく。罠が全て発動するが、ゴーズの身体を貫く事なく床に落ちていく。
「有能だ……」とカイゼル。
「素敵よ、ゴーズ」とセレナ。
「ゴーズ、羨ましいぞ……」悔しいバロス……。
「あぁ、暖かい……」
矢を抜くのを手伝いながらウルはバロスで暖を取っている。
「後に続くぞ!」
レイスは一行に号令をかけた。




