魔王と腹心、全員集合
魔王城玉座の間。
スマホの勇者系RPGに熱中するレイスの傍ら、少年の姿をした魔族が騒いでいた。
「兄上!だからその中ボスは物理効かないって言ってるじゃん!なんで1ターン目必ず物理で殴るの?」
「いや、MPをだな……」
「あ、やっぱやられた状態異常……。アイテムで治して」
「状態異常回復アイテムが無い……」
「え、うそ。この敵倒すなら状態異常回復アイテム99個持ち必須じゃん」
そこへ、魔女狼ウルが現れた。
女性のワーウルフでグラマラスな身体を黒いボンテージで強調している。攻撃的な性格だが、腹心へ取り立ててくれた魔王への忠誠心は高い。
「魔王様、北東の城エゼルを制圧しました。道中及び城内の魔族を配下にし、新たに周辺討伐を任じて来ました」
「そうかウル、ご苦労。で、今レベルはいくつになったのだ?」
「はぁ、レベルとは?」
「いや、すまんこちらの話だ。カイゼル、この中ボスはお前が倒すが良い」
「倒すが良いって、兄上に任せてたらいつになるか分からないよ」
魔人カイゼル、レイスの弟で豪腕の兄を知略で支える。魔剣士としても高い魔力と剣技を持つ。
「カイゼル、弟君とは言え魔王様にその言い草はないぞ?シュタイン城の攻略は済んだのか?」
「あぁ、済んださ。昨日戻ってきたとこ」
「そうかい、所でそれは何をやっているんだい?」
「RPGゲームだってさ。数日前にロキが置いて行ったらしいよ?ウルも見てごらんよ、アイツらの技術はとんでもないよ」
「嫌だ、ロキが持って来たものなど絶対に見ない!」
「あっそ」
そこへ、全身鉄の鎧を纏った3mを超える大男がガシャン、ガシャンと音を立てて玉座の間に入って来た。
手には自身の頭を持っている。
カイゼルが音だけ聞いて、頭も上げずに言う。
「バロス、遅かったね」
炎鉄のバロス、巨大な鎧の中は実体がなく、中身は燃え盛る業火の精霊だと言われている。その為、鉄の鎧は非常に高温で触れられただけで相手は燃え尽きてしまう。
「魔王様、遅くなりましたが、ラング城の制圧完了し、周辺の魔族を全て配下にして参りました」
「炎鉄のバロス、ご苦労であった。ん、頭の持ち方、以前と違うな?」
「はい、魔王様。ハッシュ殿が現れ、頭を抱えた私を見て、この方が楽であろうと、頭の鎧に取っ手を付けてくれたのです。その為、抱えなくても片手で持ち運べるようになりました」
ゲームをしていたカイゼルが手を止めてバロスを見る。
「ちょっとバロス、それじゃバッグじゃん!いいの?それで?」
「構わない。前は不安定でたまに頭を落としていたからな」
「後は、霧のセレナと地殻喰らいのゴーズか」
「セレナはもう来ています」
霧のセレナが徐々に姿を現した。
「はい、ここに……お仕事は全て終わって御座いますわ」
霧のセレナ、幽体の魔族。霧を操り視界外からの暗殺に長ける。美しい容姿を持ち、時に実体化して相手を惑わせる。
「ゴーズは……荒廃した土地を地ならししています」
「そうか、ゴーズは喋れんからな。皆、山脈より北の征伐ご苦労であった。本日はロキから提案された人間側との和平について、率直な意見を聞きたいと思う」
ウルは和平以前に魔王のその言葉に戸惑った。
前の魔王様は、弟のカイゼルはまだしも、我々の意見など聞いただろうか?
魔王様は変わられたのか、それとも敗北によって気弱になられているのか?ウルは測りかねていた。




