お前のようなババアがいるか
タラララーン♪タラランタラーン♪
呼び鈴のメロディがなった。
そろそろ女王一行が訪れる頃合いだ。
インターフォンのモニターを見ると数人の侍女の向うに女王らしき姿が見える
「はい、ロキ邸です」
アイーシャがインターフォンのボタンを押して答える。
「女王陛下の着御に御座います」
侍女の一人が呼び鈴の溝から発せられた音声に驚きながら答えた。
「はーい、今開けまーす」
アイーシャはメインの玄関扉の鍵を開けて、一行を招き入れた。
「おー、沢山来たなぁ侍女10人くらい連れてきたか?ジル」
女王ジル・ズール、先代の逝去により若干17歳の若さでパンゲア大陸人間側の王となった。
ロキとは二年前、この城を初めて訪れた時からジルの方から懐いている関係だ。
「あ、あぁ城の中だから妾一人で大丈夫だと言ったのだが……、どうしても聞かないのでな。これでも希望者を半分に絞ったのだ」
「希望者って……まるで観光ツアーだな」
「ロキ邸はずっとみんな来たがっていたのだ」
ロキ邸にぞろぞろと入ってきた侍女、その中に明らかに違和感のある者がいた。
「おい、そこの最後に入ってきたご婦人」
その身長は高く、他の者より頭、いや肩ひとつ抜けており、かつ横幅もある。
呼び止められた婦人は恭しく礼をした。
「ご婦人、ちょっと声を出してみろ」
ロキとアイーシャはもう笑いを堪えきれない様子で口を押さえている。
「は、はい……何でございましょう……」
何とか作り出した甲高い声でデカい老侍女は答えた。
「ゴルゴリー、お前のようなムキムキのデカいババアがいるか!」
「何故バレたのだ」
「バレるわ!」
ジルのツッコミは早く鋭かった。
一同から耐えきれず、笑いが漏れる。
「まぁ、その努力と面白さに免じて帯同を許そう」
「そうか、では着替えて……」
「あー駄目駄目、侍女の体は保たなきゃ」
歴戦の近衛兵団長アドニス・ゴルゴリー60歳は数時間の間、女装のまま過ごす事になった。
「では、お茶でも飲みながらシアター鑑賞といこうか」
ロキ邸ミニシアター、プロジェクターを投影する巨大なスクリーン、下には大画面テレビとAV機器がある。
また、階段状のフロアには3人掛けをセンターテーブルに変えたカウチソファが15脚並んでおり、ある程度の来客にも対応出来るようになっている。
最も、普段はセンターの一脚をロキとアイーシャしか使わないのだが。
「さぁ、ジルはセンターのソファに。みんなは好きな所に座ってくれ」
「ロキ!これはフカフカして座り心地が最高なのだ!」
ジルは子供の様にソファの上ではしゃいだ。
「ジル、そこのボタンで背もたれの角度と、フットレストを出せるぞ」
ジルはボタンを恐る恐る操作した。
「お?お?おー!?これは夢のような椅子なのだぁ、このまま寝れるのだぁ」
「そうだろ?この防音独特の静寂と薄暗さ、すぐにでも眠くな……って……」
「ロキ様、上映!」
紅茶を持ってきたアイーシャに怒られるロキ。
「あぁ、そっか。アイちゃん、準備出来てる?」
「はい、では昨日の戦闘の一部始終、黒龍に取り付けたカメラ映像でかなり揺れますが、今から上映します」
「楽しみなのだぁ」




