本物の海賊
「オヤマダ社長、話は変わるが」
「はい、船の件ですな」
ロキは格納庫の扉を開けた。朝の気持ちの良い潮風が吹いている。
「この下に15隻あるからまずは見てくれ」
遥か崖下にタンガ・ロウの船団が停泊している。
「はぁ、さすがに戦列艦15隻は壮大ですなぁ、勅使河原君ちょっと見てみなさい」
「はい、素敵ですね。ハッチ開いたら海が見えるなんて……って高っ!タマヒュンものじゃないですか!」
「タマヒュンって、君……」
「舞子さん、タマヒュンってなんです?」
「はいアイーシャ様、説明させて頂きます。これは高所から下を見たり、落ちたりした際に、主に男性が二つ程所持しております、たまき……」
「待て待て待て、アイーシャ様に変な言葉をダイレクトに説明するんじゃない!」
「ふっ、アイちゃん、タマヒュンってのは黒龍で急降下する時とかに男の股間がヒュンってなる現象だよ……痛っ!」
ロキは脇腹に軽い衝撃を感じた。
「ロキ様、船を案内するんでしょ?さっさと行きましょう」
勅使河原は目を輝かせて思う。
(これが、例のイチャコラモードか、実にけしからん、もっとやれ)
ロキは魔法陣を出して旗艦マタ・ウエンガに案内した。
甲板の上はタンガの戦士たちが其処彼処で酔い潰れて寝ている。
「いや、本当に素晴らしい船です!勅使河原君、詳しい設計は専門家に任せるから、取り急ぎ全体的に写真を取っておいてくれるかい?」
「あの社長、どの写真も酔い潰れた、顔に刺青入った怖い人が入っちゃうんですが……ってひぃー、あっちからパイレーツオブってる人が来ます」
「まぁ、ありゃ本物の海賊の頭だからな」
(今更だけど、ここにいる人って全員本物のファンタジーなんだよなぁ……)
勅使河原はここがテーマパークのそれじゃない事を実感した。
「ロキ殿、早いな」
「タンガも早いじゃないか」
「いや、女の声が聞こえたのでな。しばらく陸に上がってないからご無沙汰で目が覚めてしまったわ」
(ひぃぃ本物の海賊に見られてるぅ、怖いよぉ……)
「タンガ、彼らは俺の知り合いでオヤマダと秘書の勅使河原さんだ。この船の改修の為に何度か顔を出すだろうから覚えておいてくれ」
「あぁ、わかった、二人ともよろしくな。特にアンタいい女だな、仲良くしようや」
タンガがいやらしく手を差し出したが、アイーシャがそれを制して言った。
「タンガさん?この方たちは荒っぽい事に慣れてませんので、その辺、心得て下さいね」
(強カワやん、強カワここに極まれりやん……)
「大丈夫ですよぉ、アイーシャ様。あなた様が噂のタンガ・ロウ様ですねー、いや勇ましいお姿ですなぁ。今後とも宜しくお願いしますぅ……」
オヤマダは名刺を取り出して差し出したが、その手はプルプル震えている。
「さぁ、ぐずぐずしてると周りの荒くれ者どもが起き出すから行こうか」
「ですね、舞子さんが可哀想だから行きましょう」
(あーん、お姉たま、なんて優し可愛い……)
「じゃあ、タンガ、待たせて悪いが今日中には陸に上がれる様にするから」
「あぁ、ロキ殿よろしく頼む」
一同は格納庫に戻り、魔王城の工事と船の改修の要望など、細かな打ち合わせを行った。
「それでは、アイーシャ様三日後の工事の帯同宜しくお願い致します」
「はい、わかりました。舞子さん、今後とも宜しくお願いしますね!」
「ちょっと帰る前に黒龍様にも挨拶してきます!」
勅使河原は黒龍に向かって駆け出したが、鼻息の準備万端の黒龍を見て足を止め、一礼した。
黒龍は残念そうに小さく咆哮して答えた。
「うふふ、黒龍は舞子さん気に入ったみたいですねー」




