負け戦に興奮する男
魔王城の玉座の間に魔法陣が現れた。
そこから出現した青髪の男はペタペタと裸足で魔王レイスに近づいて来る。
「待て、何者だ?それ以上近づけば殺す」
魔王の腹心の一人、魔女狼ウルが警告した。
グラマラスな体を強調する黒いボンテージに身を包んでいるが、その両手は長く鋭い爪、口から剥き出された牙はその凶暴さを示している。
しかし、青髪の男はそれに構いもせずに歩を進める。
「いやぁ参ったよ、ロキ強過ぎるね」
ウルがこれ以上進ませまいと飛びかかる。
が、青髪の男が指差してウルの体を硬直させた為、飛びかかった姿勢のまま、地に落ちた。
「君さぁ、生き返らせてもらった人にいきなり襲いかかるなんて野蛮がすぎるよ?」
青髪の男は次元の書を開いて大画面の映像記録を再生し、魔王レイスに見せた。
ロキが王都を取り囲む化け物を黒龍で駆けながら縦横無尽の活躍で叩き潰す様子がつぶさに記録されていた。
「なんだこれは……ほぼ一人で壊滅させているではないか」
レイスは改めて相手の異次元の強さを見た。
「おい、俺はこいつに勝てる程強くなったのか?」
それを遮って男は画面を指差し、興奮して言う。
「ちょっと待って、ここ!これ見てよ軍隊アリで注意逸らしてさぁ、今気付かれない様に雲の上にいるのよ。それでね、来たー!黄金龍もそれに気付く!でもーー?首をどーん!二人と一頭のトリプレッツ!」
「おい、随分楽しそうだな?敵じゃないのか?」
「いや、敵だけど付き合い古いしさ、ロキの戦い方好きなんだよねー最高じゃない?あのアパッチ軍団のくだりとかさ、タラララーラ♪タラララーラ♪ワルキューレの何とかって曲らしいよ?」
男の様子に魔王は我慢の限界だ。
「ふざけるのもいい加減にしろ、俺はこいつに勝てる程強く……」
男は急に真顔になって言った。
「無理に決まってるじゃん?そんなんじゃ。今、見たでしょ?わからない?無理だよ、まだ全然。雑魚いよ」
「貴様!」
「おっと、やめときな。レイス、今のお前じゃ僕でも片手で殺せるよ?」
「では、どうする気だ」
「まぁ、力押しの時間稼ぎは駄目ってわかったから、ひとまず和睦だね、その内ロキがやって来るだろうから殺される前に申し出なよ」
「くそ!」
その時、玉座の間の天井に、新たに魔法陣が現れた。




