王都防衛戦 ⑽魔獣大行進
黒龍は北側上空にあった。
ロキとアイーシャはキャノピーを開けて下の状況がよく見える様に立ち上がっていた。
「ロキ様、あれを見て下さい!龍の大群です!」
アイーシャが遠くを指差した方に龍の一群が迫りつつあった。
「そんな……あれ程の龍の大群、見た事がありません!少なくともこの大陸にあれ程の数の龍はいないはずです!」
龍の大群は猛烈なスピードで近づきながら前を飛ぶワイバーンの群れに襲いかかった!
「ロキ様、龍がワイバーンを喰らっています!」
龍はワイバーンを、鉤爪で掴み、または一口の元に噛み殺し喰らっていった。
「敵はどうやら無尽蔵の魔獣共をやたらに呼び寄せている様だ。あれはもう王都を目標に進軍する一群じゃない、それを捕食しようと暴れ回るただの野獣の群れだな」
龍の一群は黒龍の姿を遠目からみとめると、火球による攻撃を繰り出してきた。
黒龍はそれを見事に回転しながら避けると熱線で対抗したが、ワイバーンの様な雑魚とは違い、数頭の龍を落とすにとどまった。
「アイちゃん!地上もえらい騒ぎになってるよ?」
言われて地上を見ると巨大な蜘蛛や百足の化け物の大群が暴れている!
「あぁ何て気持ち悪い!!私、足が多い虫は苦手なんですー!!」
アイーシャはキャノピーになんとか掴まりながら地上の惨状に顔が蒼ざめた。
黒龍はそれを聞いたか、地上に向けて熱線と火球を連射した。それは虫の化け物に十分な打撃を与えたが、いかんせん数が多過ぎる。
その間にも龍の大群の攻撃を受け、黒龍はそれを避けなければならなかった。
「こりゃ、凄い!魔獣大行進だな、アイちゃん!」
ロキは想像を超える状態に興奮を抑え切れずに叫んだ。
「ロキ様、何を感心してるんですか!魔王城の時みたいに隕石でも落として何とかして下さい!」
アイーシャは懇願する様に叫ぶ。
「んー隕石は駄目だ、魔王の城はどうでも良かったけど、此処で落とすとこの辺り一面王都含めてめちゃくちゃになる。温泉が……」
ロキは腕を組んで悩みながら言った。
「いやいや、温泉なんてまた作れば良いでしょう!」
何言ってんだこの人、という表情だ。
「でも……この後すぐに入りたいから……」
「ロォーキィーさぁーまぁー!!」
アイーシャの怒りが爆発した!
「わかったわかった!何とかするからアイちゃんはコクピット入ってて!」
「どうするんです!?」
ロキはアイーシャをコクピットに座らせ、キャノピーを閉めながら笑顔で言った。
「野獣の群れには、野獣の群れをぶつけるさ。もっと狂った奴らをね」