小さな女の子と黒猫の子猫と古いラジオ。
小さな女の子と黒猫の子猫と古いラジオ。
わたしたちは、いつか、どうしてもなにもかもを忘れてしまうということ。
お誕生日プレゼント、どうもありがとうございます。本当にとっても、嬉しいです!
その日、小さな女の子は自分のお誕生日に、一台の古いラジオを病院の先生や看護婦さんたちからプレゼントされた。(それは古いラジオだったけど、とても丁寧に手入れがされている、アンティーク調のとても素敵なラジオだった。ぐるぐると回すタイプのダイアル式のリモコンもかっこよかった)
「本当にこれ? 私がもらってもいいんですか?」
大きな瞳を二つともきらきらと(星のように)輝かせながら、小さな女の子はそう言った。
「もちろん。いいよ」年老いた太っちょの病院の先生はとても穏やかな笑顔で小さな女の子にそう言った。
小さな女の子は次に双子の看護婦さんたちを見た。
小さな女の子の面倒を見てくれている、双子の看護婦さんたちは「もちろん。お誕生日おめでとう」と言って、小さくぱちぱちと拍手をして、笑顔で小さな女の子の誕生日を祝福してくれた。
「どうもありがとうございます!!」と小さな女の子はまるで太陽のように明るい笑顔で、みんなに言った。
それからの小さな女の子の病院での生活の中心は、その古いラジオになった。
小さな女の子はくるくるとダイアルを回して、ラジオを調整して、いろんな音楽を一日中、ずっと飽きることなく、ベットの上で聞いていた。(もちろん、音は小さくしてだけど)
「にゃー」
そんなところに、一匹の黒猫の子猫がお散歩から帰ってきて、やってきた。
その黒猫の子猫は、小さな女の子がこの古い病院の中で拾った、ずっと病院に入院している、孤独な小さな女の子の唯一の友達である子猫だった。
「あ、猫ちゃん」小さな女の子が言う。
「ほら、こっちにおいで。猫ちゃん」小さな女の子は黒猫の子猫を手招きした。
すると黒猫の子猫は「にゃー」と鳴いてから小さな女の子のいる白いベットの上に移動をした。
「猫ちゃんも一緒に音楽、聞こうね」
小さな女の子が言う。
でも、その生意気そうな黒猫の子猫は、別に音楽に興味なんてないよ、と言ったような表情をして、小さな女の子のひざの上で丸くなって、そのままその場所で一人で勝手に眠ってしまった。(それはいつものことだった)
そんな気持ち良さそうに眠っている黒猫の子猫を見て、小さな女の子は、くすくすと嬉しそうに笑った。
小さな女の子と黒猫の子猫のいる小さな病室の中には、いろんな色をした音楽が、まるで踊りを踊っているかのように、溢れていた。
……、やがて、ゆっくりと時間が過ぎて夜の時間がやってきた。
「おやすみなさい」
小さな女の子は古いラジオを消して、そう言って明るいたくさんの星の輝いている夜の中で、眠りについた。
とても深い眠りに。
……、とても、安からな眠りに。
たくさんの星の光に守られながら。
……、友達の黒猫の子猫とずっと一緒に。
きみのこと、大好き。
小さな女の子と黒猫の子猫と古いラジオ。 終わり