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帰り道で死ぬ呪い

夏のホラー2023参加作品です。テーマは「帰り道」です。

 えっ!?「このマンションは俺の家ではないのか?」だって?


 確かに、このマンションはまるごと俺の所有物だよ。


 だけど、部屋は賃貸で全部他人に貸しているんだ。


 今から君と二人で向かっている最上階の部屋も人に貸している。


 ああ、安心してくれ、名義だけ他人にしているだけで、実際に住んでいるのは俺だ。


 えっ!?「何でそんな変なことをしているの」だって?


 うん、君とは結婚することを決めたのだから話しておこう。


 実は俺は「家に帰ろうとすると帰り道で死んでしまう呪い」にかかっているんだ。


 きょとんとしているね?


 まあ、信じられないよね。


 俺が高校生の時、男友達三人で仲良しグループだったんだが、俺を含めた三人全員がその呪いにかかった。


 最初は、俺たち三人は誰も呪いを信じなかった。


 しかし、一人が家に帰ろうとすると、帰り道で心臓麻痺で死んだ。


 残された俺たち二人は「もしかしたら……」と呪いの可能性を考えた。


 俺たちは高校から家に帰らずに、友達の家に泊まったり、ホテルに泊まったりした。


 それを一ヶ月ほど続けたが、一人がどうしても家に帰らなければならない用事ができた。


 一ヶ月も経つと「呪いなんてありえないだろ。あいつが帰り道に心臓麻痺で死んだのは偶然だ」と俺たち二人は思うようになった。


 そして男友達は家に帰ろうとして……帰り道に心臓麻痺で死んだ。


 最後の一人になった俺は「呪い」は本物だと判断するしかなかった。


 家には帰れない。


 だが、友達の家やホテルに泊まり続けるのにも限界がある。


 どうするか俺は考えた。


 幸いなことに俺の親は金持ちだった。


 親に「生前贈与」で、このマンションを買ってもらった。


 最上階の俺が生活する部屋も賃貸で他人に貸していることになっている。


 俺は住民票の住所は実家にしたままだからな、「他人のマンションの部屋に長期滞在している」ということになって「家に帰った」ことにならないのでは?と考えたんだ。


 その考えは当たった。


 何年も俺はマンションの最上階に住んでいるが、俺は帰り道で死なないんだ。


 もしかして気味が悪くなった?


 俺との結婚を辞めたくなった?


 良かった!君の気持ちは変わらないんだね!


 俺と君が結婚すると、君の住民票も住所は俺の実家になるからね。


 もちろん、住民票の住所をこのマンションに移したりしないでくれ、呪いが発動してしまうからな。


 えっ!?「そもそも、何で、帰り道で死ぬ呪いをかけられたの?」だって?


 くだらない話だよ。


 俺たち三人で同じクラスの男子一人をちょっとからかってやったら「いじめられた」と遺書を残して自殺してな。


 その遺書に帰り道で死ぬ呪いをかけたと書かれていて……





 長年、警察に勤めていると、妻に夫が死んだと告げなければならないことが何回もあったけど、今回は特に辛かったね。


 結婚したばかりの夫が妻の待つ自宅マンションへの帰り道で死んでしまったのだからね。


 人通りが多い道だから目撃者は多かったし、防犯カメラにも映っていた。


 夫は道を歩いていていきなり倒れたんだ。


 検死の結果は心臓麻痺、事件性は無いね。


 妻に会って話を聞いたけど、夫婦の住民票の住所をその日にマンションの部屋に移したばかりだったそうだ。


 ああ、それと、妻の兄が夫と高校で同じクラスだったそうだ。


 兄は高校の時に亡くなっているそうだがね。


 兄を亡くし、夫を亡くすとは、不幸な女性がいるものだね。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ピンポイントで自分で自分の殺し方を説明してて草 [気になる点] お兄ちゃん、なんでそんな呪いにしたんや……
[良い点] 人間が一番怖いということを実感させる話でした。 オチが独特で秀逸です。 [一言] こんな話が世の中に出回るから、結婚しない「独身貴族」が増えるのか、、、。
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