俺と吸血鬼と喰屍鬼と
「君、正気かい?吸血鬼退治って、そう簡単ではないんだよ」
「え?黒葉さんはソイツらの倒し方知ってるんじゃないのか?」
「他力本願かいッ!!」
黒葉任せで、後はなんとかなるだろうという感覚の武兵に呆れ返る黒葉。
取り敢えず下校しながら、作戦を立てることにする。
「隣町の吸血鬼って、どんな奴なんだ?」
「そうだね。情報によると和服姿の女性吸血鬼らしいよ」
「へぇ。ところでそれって、何処情報?」
「私の先生からの情報だよ。あ、先生って『改心草食教』の教祖ね」
黒葉の説明を聞いて、彼のいう『改心草食教』に少し興味を持つ武兵。
するとそこへ、緑のジャージ姿に赤毛のツンツン頭の少年が武兵に声をかける。
「美和、久しぶりッスッ!!」
「鯖田ッ!!久しぶりだなッ!!元気してたか?」
「ムビョー、知り合いかい?」
「ダチだよ、ダチッ!!鯖田一丸って名前。な?」
黒葉に一丸を紹介しつつ、彼に同意を求める武兵。
それに対して一丸は頷き、武兵とハイタッチをする。
しかし黒葉は一丸の方を見て、浮かない表情をする。
「どうしたんだよ?黒葉さん」
「ムビョー、落ち着いて聞いてほしい。残念だけど、彼はもう人ではないよ」
「へ?何……言ってんの?黒葉さん。冗談だろ?」
黒葉の言うことが解らず、冷や汗を掻く武兵。
振り返って一丸の方を見ると、彼もまた浮かない表情をしている。
「おい、鯖田。冗談だよな?」
「その人の言う通りッスよ。実はオイラ、二週間前に交通事故で亡くなったんスよ。でも何故か数時間後に生き返って……そしたら…………」
「喰屍鬼になっていた訳か」
「グール?」
黒葉の言葉で解らない単語が出てきた為に、疑問符を頭に浮かべる武兵。
すると黒葉は、喰屍鬼について懇切丁寧な説明をする。
「喰屍鬼と書いてグール。先天的と後天的が存在するが、先天的は現在数える程度しかいない。事故死や自殺、殺害された直後に強い未練を抱くと後天的に変化する。見た目は人間の頃とあまり変わらないが、舌が青いという特徴がある」
「舌が青い?」
「原因は不明だけどね。喰屍鬼になると人肉か人骨を摂取しないと生命維持出来ない。まぁ、動物の肉で代用したり、ミントで欲求を抑制することは出来るらしいけど」
「鯖田……お前……」
黒葉の説明を聞いて、愕然とする武兵。
まさか自分が知らないうちに、友達がこんなことになっていたとは思わなかったからだ。
すると一丸の様子が急におかしくなり、武兵の方を見ながら息を荒くする。
「何でかな?美和を見てたら急に、お前のこと喰いたくなってきた。こんなこと、今までなかったのに…………」
「食人衝動か」
「美和、オイラはお前を食べたくない。だから……オイラを殺してくれ」
「なッ!?」
一丸に殺してほしいと懇願され、愕然となる武兵。
すると一丸は、続けて武兵に今まで言えなかったことを話し始める。
「実はさ、オイラ美和のことが好きだったんスよ。けどオイラ、告白する日に死んじまって……諦めたハズだったのに。美和のことまた考えてたら、死んでから久々に腹減ってきて…………」
「鯖田?」
「ああぁ、欲しいッ!!喰いたいッ!!美和のこと全部ッ!!」
「おい、鯖田ッ!!一回落ち着けッ!!黒葉さん、鯖田がッ!!」
初めて自身を襲う食人衝動に呑まれそうになる一丸。
武兵は彼を落ち着かせようと、黒葉に助けを求める。
「ムビョー、きっと彼の未練は『君へ告白すること』だったと私は思うよ」
「は?それとこれと、何の関係があるんだよッ!?」
「彼はきっと、本気で君が好きだったんだよ。だから今、食人衝動と葛藤している」
武兵にそう解説すると黒葉は、一丸の方を指差す。
一丸の方はというと、武兵を食べたい欲求と葛藤して自身の腕に噛みつき抑えている。
「何でオイラ、こんなヒドイ化け物になっちまったんだろうな?」
「鯖田……」
「頼む、美和。……オイラが……正気の……うちに……殺して……くれ……ああッ!!」
「イヤだッ!!俺は鯖田を殺したくねぇッ!!助けたいッ!!」
武兵に懇願する途中で、再び食人衝動に呑まれそうになる一丸。
武兵は一丸を助けたい一心だが、何の策も思い付かず焦燥する。
すると黒葉が影を操り、一丸の体を縛り身動きを封じる。
そして隙が生じた瞬間に、彼の背後をとり首を手刀で叩き気絶させる。
「ッ!?」
「鯖田ッ!!」
「安心しなさい。気絶させただけです。それより、君は彼を助けたいんですよね?」
黒葉の言葉を聞いて胸を撫で下ろし、大きく頷く武兵。
すると黒葉は影をしまい、一丸を背負い武兵を見る。
「先生の所へ行きましょう。それに、あそこは安全ですしね」
こうして三人は急遽、『改心草食教』の拠点へと向かうことにしたのだった。




