山梨君の好みを聞いてみたいだけだ
「どうかな山梨君。エイプリル・フールを題材に四つ書いてみたのだが」
「ど、どうって言われても……」
四月一日に図書室に呼び出され、遠藤に渡された四つの作品。
すごい読書量だから、書き手に回ったらどうなるんだろうと思っていたけど、こんなに色々なパターンで書けるのか……!
しかも短いのにまとまってる感じがする……!
……俺には書けないな……。
「お、俺恋愛ものには詳しくないからさ……」
「あぁ、専門的な評価が欲しいわけじゃない。山梨君の好みを聞いてみたいだけだ」
「俺の、好み……?」
それこそ何の役にも立たない気がするけど……。
「……好みで言うなら……」
「うん」
最初の話は、主人公が何に騙されたのかちょっとわからない。
二つ目のは俺様キャラが若干苦手だなぁ……。
三つ目のはストレートにラブストーリーって感じで、嫌いじゃないけどちょっと照れる……。
そうすると消去法で……。
「……『騙されない女の子の話』、かな。コミカルな感じが……」
「……そうか」
あ、あれ? 何か声のトーン低くない!?
何か俺間違えた!?
「参考になった。ありがとう」
「あ、あぁ……」
な、何の参考になったんだろう……。
何だかがっかりしていたように見えたんだけど、気のせいかな……。
読了ありがとうございます。
という訳で前段四作は、拙作『書くは独り 読むは独り』の遠藤結の書いたストーリーでした。
読専の結が何故筆を取ったのか……。
その理由は結だけが知っている……。
多分永太にはわからない……。
お楽しみいただけましたら幸いです。