表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/5

騙されやすい女の子の話

「先輩! 私先輩の事が好きです! 付き合ってください!」

「……何?」


 男の眼鏡がキラリと光る。

 告白してきた女のゆるくウェーブのかかった髪を、さらりと掬い上げた。


「それは俺の女になりたいという事か?」

「ぴっ!?」


 吐息がかかる程顔を近づけられ、女は慌てて二歩下がる。


「あ、あの、ち、違くて、その……、そう! エイプリル・フールです! 引っかかりましたね先輩!」

「嘘だったのか?」

「そうですよー! どうですかー? いつもポンコツだのお間抜けだの言ってくれちゃってる女の子に騙された気分は!」


 勝ち誇る女に、男は大きな溜息を吐いた。


「……ここまで間抜けだったとは……」

「な! どこが間抜けですかー! あ! わかっちゃいました! 負け惜しみってやつですねー!?」

「エイプリル・フールに恋愛に関する嘘をついてはいけないという法律を知らないとは……」

「えっ!? ほ、法律……!?」


 男の言葉に青ざめる女。

 眉をしかめた男は、さらに言葉を続ける。


「知らなかったのか。全くお前という奴は……。エイプリル・フールだからといって告白して取り消し放題となったら、結婚詐欺が横行する日になってしまう」

「た、確かに!」

「故に二年前の国会で法案が通り、今日から施行されている。この事がバレたら一年以下の禁錮または十万円以下の罰金だ」

「ど、どうしましょう先輩! 私前科持ちに……!?」


 真っ青な顔をした女の頭に、男が優しく手を乗せた。

 優しさを感じた女の目に、男の張り付けたような笑みが映る。


「簡単だ。俺と付き合え」

「えー!? な、何でですか!?」

「俺とお前が付き合えば、告白は嘘ではなくなる。簡単な事だろう」

「あ、そ、そうですね……。で、でも……」

「前科持ちと彼氏持ち、どっちになりたいんだ?」

「か、彼氏持ちで!」

「よし。じゃあ次の日曜日にデートに行くぞ」

「は、はい……」

「時間と場所は後で連絡する」

「は、はーい! よろしくお願いします!」


 何やら楽しそうに手を振る女の声を背中で感じながら、男は溜息をついた。


(下手な嘘だからカウンターでからかうつもりが、あそこまで真に受けるとは……。いい機会だ。付き合うふりして色々教えてやらないとな……)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 先輩、女の子を騙してる腹黒眼鏡さんかと思ったら、意外と良い人そう? 前科持ちと彼氏持ち、語呂が似ていますが確かに彼氏持ちの方がいいですね(笑) [一言] エープリルフールも国や地域でルール…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ