登山が趣味の友人/帰れない
登山が趣味の友人がいる。
友人は喘息持ちで、体力もそんな無いから、町が近くにある安全な山を登り、途中見つけた花や、きれいな風景を写真に収めて帰ってくる。
ある日、その写真を見せてもらっていた俺は実際にこんな景色を見ていたいと本気で思い、おすすめの場所と必要な道具を教えてもらった。
何個か初心者向けの山を教えてもらった後、用具のメモをしていると、友人がこんなことを言った。
「ああ、あとなんでもいいからタバコとライターをポッケに入れておけ。」
どうゆうことかと聞くと、タバコは山に化かされるときに無いと帰れないそうだ。
友人が以前、少し大きな山に挑戦した時のこと。
山道も外れていない、地図通りに進んでいるのに突然けもの道に迷い込んだことがあった。
後ろに引き返そうにも、前に進もうにも草木に阻まれ、その上霧が出てきたものでいよいよ動けなくなった。
どうしたものかと気に背中を預けて座り込んでいると、登山仲間に言われた言葉を思い出した。
「山で迷ったときはタバコをふかして煙をまとえ。獣や程度の知れた山の神なら煙を嫌って逃がしてくれる。」
友人はバッグの中にたまたま持っていたタバコ(俺がタバコ始めさせるために押し付けた物だったらしい)に火をつけて、煙を吐いたそうだ。
すると、ほどなくして霧が晴れ始め、一本吸い終わるころには視界が元通りになっていた。
その後荷物をもって少し木をくぐると元の山道に戻り、無事帰ってきたそうだ。
結局俺は登山に手を出すことはなかったが、友人は今でも喘息で吸うことのできないタバコをもって山を登っている。
昔、私がまだ小さかったころ、夜中に父から電話があった。
電話に出たのは出たのは母だったのだが、ひどく困惑しており、とにかく早く帰ってこいと言い続けている。
私がどうしたのかと聞くと、父が路地裏を通って帰ろうとしたところ出られなくなった。ここがどこかもわからないと半泣きになっているそうだ。
母は酔っぱらいすぎただけだろうと怒りながら現在地を聞き出そうとするが、父は酔いなんてとうに冴えたと言い張る。
聞いたところで私もどうしようもなかった。二人で困っていると、祖母が部屋からやってきて受話器を取った。
「〇〇(父の名前)や、今タバコはもっとるか。いったんどこかで座って煙ふかせ。」
それだけ言うと祖母は部屋に戻って眠ってしまった。
その後10分ほど経って父が帰ってきた。
母はそんなに酔っぱらうほど呑んだことを咎めようとしたが、父のスーツに着いた葉や枝、泥を見て洗濯に追われることになった。父は「説教なら今度ちゃんと受ける。今は寝かせてくれ」と言い、さっさと眠ってしまった。
後日、説教を受けながら父が言うには、そこそこ酔った後に店を出て、家に向かった。途中、方向的に家までのショートカットになる路地を見つけて入ったところ、出られなくなった。
30分ほど歩いても同じ家の横を何度も通るそうだ。
困り果てて母に電話したということ。
父は祖母に言われた通り、路地の真ん中に座り込んでタバコをふかしだした。すると心なしか少し付近が明るくなって、その後すぐに路地を抜けて帰ってこれたそうだ。
泥や小枝はいつついたわからないらしい。
説教をしている母と謝り続ける父を横目に祖母になぜタバコで出られたのか、私は聞いてみた。
「昔はよくあることだった。ここら辺も田んぼと森だらけだったころ、狸に化かされておんなじところをぐるぐる回らされる。でも奴らは煙が嫌いだ。だからタバコをふかせばすぐ逃げる。昔は森の近くの田舎にしか出なかったが、開発で森が切り開かれて町でも起こるようになった。」
祖母の3回忌なのでふと思い出した話。
どちらも帰れなくなる話です。
一個目は山の話で、登山家の間では有名だとかそうでないとか。登山家の知り合いがいないので審議は分かりません。
二個目は部隊が都会になっただけです。
この話、結局タバコで解決するんですけど、実はタバコである必要がないんですね。迷子になって焦ると、なおのこと帰れなくなります。それが例えば山の中とかになってしまうとシャレにならなくなってしまう。
なので昔は深呼吸をさせることを目的に「たばこを吸え」という話を広まらせた。という考察。ソースもくそもない。
夜に迷子になると焦る気持ちもわかりますが、皆さんもこんな目にあったときは一度座って、タバコでもふかして落ち着きましょう。
アドバイス、感想お待ちしております。
最後まで読んでくれてありがとう。