表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/24

触れてはいけない岩

俺の父方の実家の話なんだが、触れてはいけない岩がある。


N県の山の近くにある町に実家があるんだが、裏の山に入ってすぐに神社がある。


その神社の境内の中に立派なしめ縄みたいなので飾られ、柵で近づけないようにされている岩があって、それが触れてはならない岩だそうだ。


触れてはいけないは物理的な話だけではなくて、話のタネにしてもならないらしい。


おじいちゃんが言うには、岩の下にヤマタノオロチの子供を封じ込めているらしい。


おばあちゃんが言うには、昔そこで親切な仙人を殺してしまい、その祟りを抑えるためにあるらしい。


お父さんに聞くとまた別な話が出てくるくらい、いわれはたくさんあるが、とにかく触れてはいけないというのだけは共通している。


このことを知らない人間に説明するためになら話に出してもよいらしく、小さい頃は覚えていないふりして何度もこの話をしてもらったw


従妹と神社に行って、どれだけ近づけるかのチキンレースをやったりしていた。柵としめ縄しかないこの岩だが、この遊びは不思議と飽きなかった。


でも結局何も起きないのだから、正直俺は舐めていた。


大学生になって、一人暮らしを始めた俺は、二年生の夏に彼女と一緒にそこに帰省することになった。お酒を覚えた俺らの目的は、祖父母にちやほやされながら、そこの地酒を無料で呑むことだった。


俺だけは、本気で彼女のこと好きだったので、親に紹介することも目的だった。


新幹線で何時間か揺られて帰った俺らは、まず実家に顔を出したのだが誰もいなかった。


彼女もなんだかんだ緊張していたようで、少し安心していた。


俺は取り合えず荷物だけおいて、近所を案内することにした。


案内って言っても周りに畑と山しかないこの場所では回るところは限られてくる。


結局俺らは例の神社に行っていた。


彼女は大学で民俗学を勉強していて、神社の説明書き?みたいなのを熱心に読んでいた。


俺はそんな彼女を眺めていたのだが、そのうち長旅の疲れからか、ベンチで眠ってしまっていた。


小一時間経った頃に彼女に起こされ、俺らは実家に再び向かった。


実家に着くとちょうど祖父母が俺の両親とともに帰ってきたところだった。


彼女は俺の家族に軽く挨拶をして、家に入った。


家に着いてからも俺は妙に眠たくて、客間で寝ていたのだが、その間に彼女は祖父母と一緒に料理を作っていたらしい。


起きると夕食の準備が整っていた。



夕食は俺が彼女を連れてきたこともあって豪華だった。さらには俺と彼女の狙い通り、地酒もたくさん用意された。


夜も更けみんなだいぶ酔っぱらっていた。


「そういえば、裏の山の神社、素敵でしたね」


彼女が昼間見てきた地元の話の流れで神社の話になった。


彼女は民俗学的な見地からみて非常に面白かったことを語り、地元を誉められた家族もにこやかだった。


「それにしても、あの岩、なんなんですかね。花崗岩?みたいな手触りでしたけど。」


「触れたんか!あの岩に!」


突然おじいちゃんが叫んだ。びっくりした俺は飲んでいた酒を噴き出したのだが、それについて誰も触れなかった。


おじいちゃんの逆鱗に触れたのかと様子を見ると、お父さんも顔を強張らせていた。おばあちゃんは泣き出していた。


「触れたんか!あんた、あの岩に触ったんか!どこに触れた!どのくらい触れた!」


おじいちゃんの矢継ぎ早の質問に、彼女は半泣きになっていた。


「おじいちゃん、何もそんな怒らなくても、ちょっと触っただけだって。」


俺がなだめようとすると、お母さんに手を握られた。


「あんたは少し黙っていなさい。」


今まで見たことのない表情のお母さんにそういわれた俺は、何も言えなくなった。


彼女が助けを求めるようにこちらを見たので「答えて」とだけ言った。


「あの、中間らへん、このあたりを…」


と彼女が自分を岩に例えておなかあたりをさすった。


「なんでよりにもよって…」


さらに泣き出すおばあちゃんをなだめながらおじいちゃんはお父さんに電話をかけるように指示した。


お父さんは真剣な顔でガラケーを手に出ていった。もうみんな酔いが醒めていた。


「娘さんや、怒鳴って悪かった。今からそこの神社の神主が来る。あんたにはもう2日ほど泊って行ってもらう。」


有無を言わさぬ物言いでおじいちゃんはそう言うと、おばあちゃんとともに仏間に行って何かの準備をしに行った。


彼女は震えていた。俺は抱き寄せてなでることしかできなかった。


しばらくしてお父さんが戻ってきた。


「今から〇〇さん迎え行ってくる。説明頼んだ。」


お母さんにそう言うとお父さんは車に乗ってどこかへ向かって行った。


震えている俺らに対してお母さんはズボンのすそをめくった。


「私も嫁入り前にここにきて、あの岩を触った。私の時は岩の一番下だった。」


彼女は震えながらもお母さんを見た。息を呑む音がした。


俺のお母さんの足首はひどく爛れた跡があった。


「私はアキレス腱を持っていかれた。だから私は歩き方が変なの。あの岩はね、何なのかわからない。理屈もないわ。ただ、触れた部位と同じところを持っていく。怖がらせるつもりはないけど、それなりの覚悟はしてね。」


話を聞き終わった彼女はぽろぽろと泣き出した。俺はどう慰めればいいのかわからなかった。ただとにかくそばに居続けた。岩のことを否定することができる雰囲気ではなかった。


30分ほど経って、神主さんが来た。大きなバッグを持った、髪の薄い、白髪のおばさんだった。


神主さんは彼女のそばに座り、岩のどこを触ったのかを詳細に聞き出した。俺は離れろと言われたが、絶対に離れる気はなかった。神主さんはしばらく離れるように説得してきたが、やがてあきらめた。


話を聞き終わった神主さんは小さくため息をついた後、バッグから大きな瓶を取り出した。


「私には厄を払う術はない。ただ、被害が大きくならないようにすることならできる。この酒をできるだけ一気に飲んでくれ。」


彼女はコクコクと何度もうなずくと、瓶を口に当て一気に流し込んだ。


半分ほど飲んだところで、彼女は瓶を下ろし、腹を抑え始めた。


どうしたと聞く前に、神主さんが彼女の服をめくった。


へその少し下あたりが真っ赤に腫れていた。俺は小さく悲鳴のようなものを上げたような気がする。


神主さんは瓶の中身を口に含むと、腫れた部分に吹きかけた。彼女は大きく口を開けて悲鳴をあげた。


神主さんはその口に瓶を突っ込んだ。彼女はちょっと噴き出しながらもそのまま飲み続けた。


全てを呑み終わった後、神主さんは数珠とお守りを渡した後帰って行った。


「明日一日生き延びれれば大丈夫だよ。ただ子供は残念だけど諦めな。」


お父さんとおじいちゃんは神主さんを送りに行った。残った三人で彼女を慰めていた。


次の日、彼女は何事もなかったらしい。


らしい、というのは、俺が高熱を出して寝込んでいたからだ。おばあちゃんが心配して神主さんに電話をすると、「一日で引くから安心しな」といった。その言葉通りその日のうちに熱は引いた。


結局二泊して俺たちは帰ることになった。帰るとき、おじいちゃんに「お前ら残念だけどここにはもう来ないほうがいい」と言われた。一度岩に触れたものは、岩に目を付けられるらしい。


その後彼女とは一度別れたが、なんだかんだで今は結婚した。結婚式に俺の父方の親せきは出なかった。


結婚して3年、いまだに子供はできない。

田舎の謎の風習系です。ちょっと違うけど有名なので言えば「くねくね」とか「八尺様」みたいなジャンルですね。

民俗学の話をちょっと交えると、日本には山岳信仰や巨石信仰?みたいなのが昔からあるので、まじめに触れてはいけない岩とか、入ってはいけない山がちょいちょいあります。

そういう話をベースに触れるとどうなるのか、入るとどうなるのかって話が作られがちです。

だいたいこういう事態に陥ると中途半端に助けてくれる謎の能力者が出てきます。今回は神主さんでしたが、多くの場合地元で有名な胡散臭い人です。

理由不明で~してはいけない場合、それを破ると死ぬんですけど、人が死ぬ話書ける自信なかったので中途半端になりました。

あと最後らへんはどの話でも似たような展開なのでめちゃくちゃに端折りました。

感想、アドバイス欲しいです。

最後まで読んでくれてありがとう。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] これ系だと私はリョウメンスクナやリゾートバイト、海から来るものを思い出しますね。 やたら怒鳴る人と、泣き出す人 ◯◯さん呼ぶからまでが三点セットだと思ってます(笑)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ