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あの部屋はね、ダメなんだ。

大学卒業してしばらくフリーターをしてた頃の話。


個人営業のコンビニみたいなところで土日だけ入ってた。レジ打ちは店主の家族がやってるから、俺は納品された商品の品出しや倉庫の在庫管理が仕事。


ちっちゃい店なのに納品される商品の数はいっちょ前に多くて、倉庫はいつも人一人が通れるかどうかのスペースしかなかった。


ある日、いつも通り在庫の数を調べていたら、倉庫の隣にもう一つ部屋があるのに気づいた。


何で今まで気づかなかったかって言うと、その店は住居兼コンビニみたいなお店なんだよ。都会の人はピンと来ないかもしれないが、田舎にはよくあるものなんだ。そんなわけで、今まではその部屋は住居スペースの一環だと思ってた。


もう一個部屋があるならそこに在庫を置きたかった。その方が在庫管理が楽になるのはサルでもわかる。


すぐに仕事をいったん止めて、店主に話に行った。


店主は30後半くらいの若い兄ちゃんで、話の通じる人なので、すぐに開けてもらえると思ってた。


「ああ、その部屋はね、ダメなのよ。倉庫だけで頑張ってくれる?」


普通にはあ?ってなった。なんなら口に出てたかも。


俺はそんなこと言われると思ってなかったから結構しつこく食い下がった。


「商品置くスペースもそんなにない、倉庫も小さい、けど納品数は多いってなったらあの部屋使わない理由ないでしょ。使わせてくださいよ。」


「んー、でもあの部屋はダメなんだよね。倉庫だけで頑張って。」


マジでこれ以上話が進まなかった。どんだけ理屈並べても店主の断り文句はおんなじ、「あの部屋はダメなんだよね」の一言。


全く納得いかなかったが、店主がだめっていう以上使うわけにはいかないから、その日も倉庫だけで在庫管理やり切ったよ。


在庫管理終わった後ちょっと時間が余ったから、その部屋を覗いてやろうと思った。そんなにだめっていう理由が気になったんだ。


倉庫と同じタイプの、一般的な引き戸。ちょっとだけ開けようと思ってドアノブに手をかけた。


軽く引く。びくともしない。少し力を入れてドアを引く。ピクリとも動かない。


先のやり取りでイライラしていた俺は、渾身の力を込めて引いた。壁に足までかけて引いてやったよ。


そしたら、ちょっとだけ動いた。隙間が空くほどじゃないけど、ドアの側面がちょっとだけ見えた。


ドアの側面、お札だらけだったんだ。見てすぐ気持ち悪くなった。ドアを慌てて閉めなおして、ちょっと早かったけど退勤の打刻をしに行った。


事務所に行ったら店主が難しい顔をして待っていた。開けようとしたのがばれたのかと思って若干ビビりながら、さっさと帰ろうとしてたら話しかけてきた。


「俺君、さっきの部屋の話、申し訳なかったね。でも何度も同じ話をするのも申し訳ないけど、あの部屋はダメなんだよ。」


俺はもう理由なんてどうでもいいから早く帰りたくて、そっすかって言って荷物をまとめてた。そんな俺にお構いなく店主は話をつづける。


「というのもね、このお店、僕のおやじから引き継いだんだけど、そのときの引継ぎの内容の中にあの部屋を開けないことってあったんだよ。俺も親父に何でか理由を聞いたんだが、親父も祖父から引き継ぐときにそうとしか聞いてないらしいんだ。で、祖父に聞いたらこの家を買い取る時の条件にその部屋を開けないなら格安で渡すって言われただけらしくて、その元の持ち主とはもう連絡が取れないらしい。」


俺は帰りたいのに話が終わらない苛立ちと焦りで訳が分からなくなっていた。上着にそでを通し終わった俺は、もう帰っていいですかって言おうとした。


店主の次の言葉を聞くまでは。


「僕ね、そうなると気になっちゃってね、開けちゃったんだよね。」


「…は?開けた?開けちゃダメなのに?」


店主はあっけらかんとうなずいてニカッと笑った。


「それでな、なるほどってなった。あの部屋はね、ダメなの。どう頑張っても使えない部屋だわ。」


そのときにドアの側面にびっしりついていたお札とか思い出して気持ち悪くなっちゃって、ちょっと戻しちゃった。


えずいてる俺を見て、店主は背中をさすってくれた。


しばらくそうしてくれて、俺はちょっと落ち着いてきた。


戻したものを片づけながら謝罪していると、店主は変わらずにこにこしながら言った。


「ね?そうなるでしょう?」


それからしばらくしてその店は解体されることになった。もうちょっと都会のほうに移転するらしい。


解体工事は何事もなく進んでいたが、不自然にあの部屋は最後まで残っていた。


この話は開かずの間系の話です。

開かずの間系の話は開かずの間を開けて中を解明する話と、開けずじまいであれは何だったのかみたいな話に分けられるかなと思っています。今回はその中間の中途半端なところで止めてます。

開かずの間が若干出てくる話では「リョウメンスクナ」なんか有名じゃないですかね。開けちゃダメなところにあった呪物の話です。呪術廻戦の元ネタかな?一度読んでみると面白いですよ。

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