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タンスが海とつながっていた

小さい頃、親の部屋にあるタンスから海に行くことができた。


小学校上がる前くらいのことだから、当時はどこでもドアって全然未来の道具じゃないじゃんって思うくらいだった。不思議に思ったことはなかったかなあ。気づいたころにはそれが当たり前だったし。


海はすごく広くて、泳ぎが苦手な俺は頑張って泳ぎの練習をしていた。


ただ、景色はセピア色だし、音が全くなかったのは覚えてる。子供ながらに、ここはなんかおかしいんだなって思ってて、絶対に変なもの食べないようにしてた笑


砂浜にうちのタンスがなぜかおいてあったので、それを通るといつでも帰ることができた。


小学校あがったか上がってないかくらいに、DVDでナルニア国物語を見た。タンスをくぐって雪国に行くシーンを見て、「うちは海に行けるよね!」って言ったら何言ってんだ?って言われた。


それで、あの海には子どもしか行けないんだなって思った。妖怪とかも大人になると見えないっておばあちゃんが言ってたし、そういうもんなんだなと。


ただ、その話をして以降、タンスを開けても海に行けるときといけない時が出てきた。それまでは一人の時に開ければ10割海に行けたのが、8割くらいに下がった。


それでも小学校上がってからはプールの授業が始まったのもあってよく海にいっていた。友達は連れて行ったことなかったなあ。親にタンスの話をした時の何言ってるのお前みたいな反応が軽くトラウマになっていたんだと思う。


夏は学校で泳いで、タンスで泳いで、っていう生活を続けてた。ちょっと時が飛んで小学校三年生の時。


そのころにはタンスを開けて海に行ける確率が半分斬ってきてて、そのうえタンスが海につながっている不気味さに気付いた俺はあまり海に行かなくなっていた。


親の部屋に勝手に入ることも禁じられていたし、友達と遊ぶ方が多くなっていた。


ある日、プールの授業でクロールのテストが予告された。


クロールができなかった俺は、仕方なくあのタンスをまた開けることにした。


水着に着替えて、バスタオルとビニール袋を片手にタンスの戸に手をかけた。


戸を開けた瞬間、ぶわっと風が吹き込んで思わず目をつぶった。


しばらく自分の顔や体にかかる砂を手で払いのける。そうした後顔を上げて驚いた。


目の前には鮮やかな色彩に包まれたいつもの海が広がっていた。風の音も、海のさざ波も聞こえるし、遠くからは車の音のようなものも聞こえてた。


知っている場所のはずなのに、いつもと違う違和感に戸惑っていると肩をたたかれた。


後ろを向くと優しそうな初老のおっさんが立っていた。


「何か落としたようですよ、三田こうきくん。」


指さされた足元を見ると、持ってきていたバスタオルとビニール袋を落としていた。


あ、ども。とか言いながら拾いながら、どうして名前を知られているのか、と気づいてゾッとした。


「あまり質問に答えられないのですがね、私はあなたを知っています。あなたはいつもタンスを通ってここに来ていますね。どうやって帰るおつもりですか?」


どういうことか、理解が追い付かなかったが、とにかく怖くて帰ろうとおっさんの後ろへ走った。


でも、あるはずのタンスがなかった。


パニックになった俺は砂浜を掘り返したり、海の岩場まで探しに行ったりしてた。


途中から泣いていたと思う。日が暮れ始めたころには疲れ果てて動けなくなってしまった。


ここも日が落ちるとかの概念あったんだな、と現実逃避的な考えをしていた。


「こうきくん。」


またあのおっさんが来た。夕日をバックに俺を見下ろしている。


八つ当たりをしようとキッと睨みつけながら顔をあげた。


おっさんは逆光の所為か、顔が塗りつぶされたようになっていた。


「こうきくん、よく聞いてください。あなたはこのままではおうちに帰れません。本来、来れるはずのないあなたがここに何度も来れていたことがおかしいのです。」


俺はいよいよ大泣きした。帰りたいって叫んだ。小学校三年生とは思えないほど駄々をこねてしまった。


そうしている俺をしばらく眺めていたおっさんは何かボソッとつぶやいた。今考えてみると、「子供にこれは酷かな」だったのかな。


おっさんは俺の頭をアイアンクローすると、そのままありえない力で俺を放り投げた。


ズンっというすさまじい衝撃がして、そのまま意識を失った。


次に目を覚ましたら自分の部屋のベッドだった。


リビングに向かうと両親とお兄ちゃんがいた。


みんな俺を囲んで、どこに行っていたんだと怒りだした。


両親が言うには、俺は丸一日帰ってきてなかったらしい。


警察に捜索願を出して、近所を探し回って、さっきタンスの中に水着姿で眠っていたところを見つけたらしい。


そこからは親の説教を受けて、お兄ちゃんの質問攻めにあって、警察にも話を聞かれて、怒涛の展開で記憶が飛び飛びだ。


今考えても不思議な思い出。

時空のおっさん系の話です。遅れてごめんなさい。

時空のおっさんとは、パラレルワールド系の話の中の一派です。詳しくはそのまま時空のおっさんで調べてください。

本来時空のおっさんは成人済みの人間がひょんなきっかけでパラレルワールドと思わしき世界に迷い込んだ際に、帰り道として現れる人間?なので、この使い方は正直間違ってます。

僕自身この手の話に精通していないので、精通していない僕を小さい子供として物語に登場させてます。

最後まで読んでくれてありがとう。最近読んでくれる方が増えてきました。とてもうれしい。だけど感想は全く来ない。寂しい。ぜひ感想をください。

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