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美香さん

俺は警備会社に勤めてるんだが、その中で起こった話。


昔廃校になった小学校を使って作られた地域の交流センターみたいなのがあって、うちはそこの夜間巡回も任されてる。


相当な年季の入った建物で、夜は相当おっかない。


基本二人チームで巡回に行くんだが、二人とも臆病だから、学校中の電気をつけて巡回する(本当はダメなんだけどね)


で、その学校の巡回を任せられて一週間もしないうちに、あることに気付いた。


それが、深夜2時を過ぎると、あらゆる場所の電気が順番に消えては点いてを繰り返す。バチバチって感じの短期間にじゃなく、廊下の蛍光灯一本だけ消えて、そこが点いたと思ったらその隣の蛍光灯が消えて…みたいな。


一定のスペースの電気が丸ごと消えるわけじゃないから、どう考えても設備の不具合じゃないってことで、最初はビビり散らかしていた。引継ぎの人に聞きたかったが、勝手に電気使ってますとも言えず、相談もできない。


でも人間なれるもので、一か月もすれば何とも思わなくなった。蛍光灯が消えている場所には超絶可愛い女の霊がいるってことにしようってなって、美香さんって名前まで付けてた。


美香さんって名前を付けると不思議なもんで、蛍光灯が消えてるところしか歩けないせいでいちいち電気を消してる、可愛い霊のような気がしてきた。


いつも遠目にみながら、今日も美香さん散歩してるねなんて話すのが日課になっていた。


ある日、相方に特別棟を任せて、俺が一般棟の警備をしているときに、美香さんが特別棟を歩いてるのが分かった。


三階の廊下の電気が、人が歩くのと同じくらいのペースで一つ消えては一つ点きを繰り返してた。


俺は面白くなって、無線で連絡を取った。


「おいww美香さん特別棟三階に出現してるぞww」


「まじすかw僕今三階回ってるんですけど、すれ違うのも怖いのでトイレに隠れますわww」


見てると相方が手を振りながらトイレに入っていく。


本当に隠れるのかと笑いながら、合流したら美香さんにもビビるなんてってバカにしてやろうと思ってた。


美香さんは廊下を歩きながら、どんどんトイレに近づいて行った。そして、トイレの前で止まった。


美香さんが止まるのは初めてだったものだからびっくりした。巡回もそこそこに見続けていると、無線が入った。


「俺さん、やばいっす、今トイレの前の電気が消えて、動物みたいに荒い吐息が聞こえるんですけど、そっちから何か確認できませんか。」


「は?トイレ前何もいねえよ、美香さんが立ち止ってるだけだよ。トイレから出て至急確認しろ。」


「無理です、本当に怖いです、ありえない、吐息が増えてきてる、こっち来てください」


本来なら相方一人に対処させる事案だが、無線からもは湿っぽい吐息が聞こえてきたので慌てて向かうことにした。


「今向かってる、トイレのドア付近に待機して不審者の動きを把握してろ。それくらいできるだろ。」


「はい、わかり」


そこで無線が突然途切れた。パッと特別棟に視線を向けると、トイレの前の蛍光灯が点いてる。


良かった、と思って足を止めたときに気付いた。代わりにトイレの中の電気が消えている。美香さんがトイレに入ったんだ。


それに気づいた瞬間、全身の毛がぞわっと逆立った。


嫌な予感がして慌てて特別棟三階、トイレへと向かった。


特別棟について玄関を抜け、階段を駆け上がってる時に、蛍光灯の消える音がした。


おそるおそる顔を上げると、踊り場の電気が消えていた。ちょっとの沈黙の後に踊り場の電気がついて、階段の蛍光灯一つ目が消えた。


俺のところまで、蛍光灯3つぶんの距離に、美香さんがいる。


恐怖で足が動かなかった。また一つ蛍光灯が消え、一つ点いた。無線越しに聞こえた、あの湿っぽい吐息が聞こえる。


ああ、やばい。やばいのに足が動かない。


体中がバカみたいに震えだした。そのとき、無線が入った。


相方の声はしなかったが、無線の入ったときのくぐもった音。なぜだか知らないが、それで俺は動き出せた。


美香さんに背を向けると振り返ることもなく全力ダッシュ。


警備室代わりの空き教室に飛び込んで、朝まで相方にずっと無線をかけ続けてた。


朝日が出て、恐怖より眠気が勝ち始めたころに、相方は戻ってきた。


俺が本気で怒りながら何をしていたのか聞くと、相方は「トイレの個室で眠っちゃってました」って答えた。


ただ、異様ににやにやしてて、俺が何言っても「そんなこと言わないでくださいよお」って流そうとする。


相方は次の日から無断欠勤が続いて、1週間後には退職していった。


俺は退職こそしなかったが、警備担当を外してもらった。


今でも、街頭がふいに消えたりすると足がすくむ。

簡易版くねくねです。もっと怖いの見たい人はそっち見に行きましょう。

見てはいけない謎の化けものみたいな怖い話では、大体その正体をなんとなく知っているおじいちゃんが出るのが定番です。おばあちゃんではなく、おじいちゃんが出るのが定番なんです。

でも今回のには出しませんでした。正体を考えるのが面倒くさかったからです。

この化け物の正体と、小学校にあったとされる曰く付きの話なんかを付随させるともっと怪談らしくなります。


読んでくれてありがとう。良ければ感想ください。

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