伝説になっていたアパート
投稿30分遅れてごめん
俺が貧乏大学生だったころに住んでいた家の話。
当時俺が住んでいたのは大学から徒歩5分、駅まで徒歩10分、ワンルーム風呂トイレ別で2万5千円の物件だった。
云十年前の当時ですらありえないほど安い物件ではあったが、とにかく金のない学生にとっては、屋根壁あれば文句ないので、速攻で入居した。
大学生活が始まって、友達が増えてきた5月くらいの頃から、立地が良い俺の部屋は当然呑みの場になる。
ほぼ毎日誰かしらが来ては帰っていく生活だったが、その中で特に仲の良かった四人がいたんだ。
順番にA、B、C、Dとする。その四人と俺の計5人だけで呑むって会を月一でしてた。
その中の一人、Aには霊感があるらしい。いつも数珠をつけているような奴で、傍から見るとイタい奴だったが、嘘心霊体験を聞かせてくるようなうざいやつじゃなかったから普通に仲良くしてた。
ただ、そんなAに対して一個だけ不満があったんだ。
それが、絶対に終電で帰ることだった。
Aをどんなにべろべろにしても、逆に俺らがどんなにべろべろになっててもあいつは帰る。
酒カスの考え方でしょうもないが、俺らは何回かつぶれたことあるのにAだけつぶれてないのはおかしいって話をよくしてたんだ。
で、ある日、Aをつぶす会ってのがひそかに立ち上がっていた。
ありえないほど強い酒を用意して、Aの腕時計を回収して、その日は始まったんだ。
順調に酒を呑んでいくA。ニヤニヤしているそのほかのメンツ。
楽しく会は進み、ついに終電を超え、Aはつぶれた。
俺たちはハイタッチして、そのあとも呑んでいた。
三時くらいになったころ、みんなもべろべろになってそろそろお開きにするかってムードになっていた。
そしたら、それまでうつぶせになって眠りこけていたAが突然起き上がった。
糸の付いた人形を起こすときのような、ありえない起き方。
みんなびっくりして一瞬固まったんだが、その直後爆笑してた。そんな寝相あるかぁって思ってた。
ただ、Aの様子だけおかしかった。ずっと虚空を見つめながら口をパクパクしている。
俺らはそれ見てさらに笑っていたんだが、Aが白目をむいていることに気付いて俺だけは笑えなくなっていた。
そのうちBが笑いながら「なんか言ってね?」って言いながら耳を近づけたんだ。
その次の瞬間、Aが近くにあった瓶をもってBの頭をぶん殴った。ブドウみたいな色した血がそこら中に巻き散らかされた。
俺もCもDも酔いが醒めて慌ててAを止めた。が、三人がかりでも止められないほど力が強い。Aはひょろがりなタイプで、俺は普通、CとDはアメフトやってたから、どう考えてもおかしかった。
そのころにはAがなんて言ってるのかが分かるようになってきた。
「生かして返さない!!!私を捨てやがって!!!」
女性の金切り声みたいだった。とにかく止めるのに必死で、Bの様子は見てなかった。
一時間たったころ、日が出始めてAは突然力が抜けた。カクっと、本当に突然。
俺らは肩で息をしながら座り込んでいた。が、Cが叫んだ。「Bは!?」
慌ててBの様子を確認したら、こいつも静かに寝てた。血だと思っていたのは瓶の中に残っていたワインだった。本当に安心した。
そのあと一応眠ったが、昼前に起きて、みんなを起こしてAの説教を始めようとした。
「昨日のお前の酒癖は酷かった」
そう始めようとしたら、Aは慌てて「昨日俺は何時までこの部屋にいた!?」と聞いてきた。
あまりの剣幕にCが一日いたと答えると、Aは青ざめた。
一通り昨日の顛末を説明した。意外なことに、Bも昨日のことを覚えていなかった。
全部聞き終わったAは、隠していたことがあると言って話し始めた。
「俺に霊感がある話は前もしたよな。言ってもなんかいるかもしれないって感じで、気配感じるだけとか、ぼやーっと靄が見えるくらいなんだ。でもこの部屋だけは違った。初めて部屋に入った時から女が見えてた。」
そこまで話したAは、突然うつむきながら、場所を変えようと提案した。
ここまで来て逃げるのかといらだった俺はそんな必要はないと言ったが、Aはどうしても場所を変えたい、変えないなら話はしないと折れなかった。
仕方なしに俺らは近くの雀荘に移動することになった。朝からやってる落ち着ける場所がそこくらいしかなかった。
雀荘の卓を一つ借りて、みんなが座ったタイミングでAは泣き出した。
何故泣いているのか聞いても、要領を得ない。Aが落ち着くまで、2時間ほど待つことになった。
その間にBは、大学の授業の時間になったため先に帰ることになった。
Bは「打ってもないのに金だけ払うなんて」とぼやきながら帰った。
Aが落ち着いてからもう一度最初から話を聞くことになった。
「部屋に女がいるって?」
「初めてお前の部屋に行った時からずっと見えていた。基本ぼーっと立っているだけだから大丈夫だとは思っていたが、夜が更けていくごとに姿がはっきりしだすからいつも終電で帰っていた。」
「酒癖悪いのはまだいいとして、それを霊のせいにするのは人としてないぞ。」
正義感の強いCが、若干威圧しながらそう言った。俺もその時はおんなじことを思っていた。
本当だと言い張るAを俺とCで責めようとしていたが、Dがそれを止めた。
もう少し聞こう。Dがそういうから仕方なく聞くことになった。
「女はおそらく前ここに住んでいた男にフラれた女の霊なんだ。普段は無害なんだが、Bがその男に似ているものだから勘違いして逆恨みしている。俺は霊感があるだけで力がないから、夜のあいつに取りつかれたら抗えない。だから今までも終電で必ず帰っていたんだよ。全部本当だ、信じてくれ。」
信じてもらえてないことに焦ったようなAは、矢継ぎ早にそういった。
話にならないな。俺とCが一発殴ってけじめつけさせようとしたときだった。
「俺はその話、信用できると思う。」
Dがそういった。
「Cも聞いたことあるだろ、このアパートのうわさ。」
DがCにそう語ると、Cもハッとした顔をした。
なんでも、アメフト部の中で伝説のように語られているのが俺の住むアパートだそうだ。
数世代前の先輩に、女に関してだらしのない先輩がいて、このアパートの一室にいろんな女を連れ込んでいた。いろいろ手を出していた女の中に、嫉妬深い女がいたらしい。その女は、自分だけを見るように先輩に言い続けたが、先輩の浮気癖は直らず、ついには先輩の住んでいたこのアパートで自殺したらしい。
それ以降、なんとなく俺の家で呑むのは少なくなっていった。
また、Bにはこの話はしていない。
Aが言うには、女の霊はその日以降、俺の部屋にではなくBに憑いているらしい。
不動産系、曰く系、地縛霊系みたいなジャンルです。この手の話は、霊が見えて怖い思いをする霊感少年、少女と、その霊感持ちの人の話を裏付けてくれる第三者、そしてそこに住む主人公が必須です。Bの存在はなくても大丈夫なのですが、オリジナリティ出そうと思って書きました。結果、30分投稿が遅れました。
この手の話の有名な奴は「ゾッとする話 ライセンス藤原 一人暮らし」と調べると面白い話が見れます。
解説部分はもうちょっと後で追加する、とりあえずこんな感じ。
最後まで読んでくれてありがとう、感想あったら送ってくれ