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チュムチュムの悪役令嬢体験

よろしくお願いします。



 もう何をやっても、あの方はわたくしを振り向いてはくれないのだわ。

 わたくしを好きだと、幸せにするとそう言ってくださったのに。


 最初は手紙がだんだん届かなくなっていきましたの。


 週に一度だったのが、月に一度、三ヶ月、半年と間隔が伸びていき、今年は誕生日に明らかに代筆と思われる簡素な手紙が届いただけでした。


 長期休暇に戻ってきてくださったのも、一年目の夏季だけで、それ以降はあちらの国にずっと残ったままでしたわ。


 留学を終えて戻っていらっしゃった時にも、わたくしには何の連絡もなくて、その後に会いにいきたくても断られるばかり。


 三年の留学の間に、わたくしの婚約者は別人になってしまったかのように、わたくしのことを邪険にするようになってしまいました。


 でも、わたくしとてお馬鹿ではありませんので、最初に違和感を感じた時点ですぐに動きましたわ。

 何事も初動が大事なのですわ。これは商会を営んでいるお爺さまの教えですのよ。


 きっかけはあちらの国でのパーティだった様ですの。第三王女に気に入られ、媚薬を盛られて関係を持ってしまったのですわ。

 最初はわたくしに対する罪悪感からわたくしを避け、その後は初めて知った快楽へのめり込んでしまい、だんだんとわたくしのことを思いやることができなくなっていったのですわ。

 わたくしの婚約者はチョロいですわね。


 なのでわたくしは全力でリモート嫌がらせを致しましたの。

 婚約者を取られそうになった令嬢は、相手の御令嬢に嫌がらせをするのが常識なんですのよ。わたくしの場合王女でしたけれども。


 ふふ、実は内緒にしていましたが、わたくし魔力が人より多めだったのですわ。お母様の実家のリューリュー家は遠くは魔道士の家系だったのです、いわゆる先祖返りですわね。

 なのでリモート嫌がらせもバッチリなのですわよ。

 まさかこの様に離れた場所から嫌がらせされてるとは思わないでしょうね。

 第三王女は毎回ヒステリックにキーキーとわめいておりました。


 きちんと悪役令嬢として、相手の方に嫌がらせの責務を果たしましたわ。でもあと一つだけとても重要なミッションが残っていますの。

 公の場での、断罪、婚約破棄からの国外追放コンボですわ。これ無くして悪役令嬢は語れませんもの。

 流行りの少女小説のように、悪役令嬢の立場で断罪される日が来るなんて世の中何が起こるかわかりませんわね。


 あぁ、いつ婚約者は私を断罪するのかしら。

 いくらなんでも遅すぎません?早くしないと愛する第三王女と婚姻できなくなりますわよ。


 未だに会いにいけていませんし、まさかこのままなし崩し的に婚約を無かったことにしようとしてるのでは?!

 あり得ませんわ!ぜひ断罪していただかなくては!わたくしは覚悟を持って悪役令嬢を演じたのですもの!!


 わたくしはこの時気がついていませんでしたの。


 ひとつ重大なミスを犯していたのですわ。

 そう、わたくし、何一つとして証拠を残さない完璧な嫌がらせをしてしまっていたのです。

 なんということ!わたくしは遠く離れた国にいる上にリモートできるほど魔力が高いことを知ってる人はいませんの。

 

「マニョマニョ公爵家アルフレート様!!!わたくしはあなたとの婚約を破棄します!!!」


 どうしても断罪劇がしたくなってしまったわたくしは、反対に婚約者を断罪することにしたのですわ。そもそも心変わりをしたのはあちらですものね。

 というか、婚約者ってこんなお顔でしたっけ?三年ぶりだとよく分からないですわね。もっと爽やかなイケメンだったはずですけども。

 この方は鼻は低めで一重ですし、ニキビがいくつもありますわ、これ絶対別人よ。


「あのー、どちら様ですの?」


 せっかくのわたくしの断罪劇がだいなしですわ。どうしてくれますの。

 

「ワン!!!!!」


 ワンコ?どうして夜会にワンコがいますの?尻尾を盛大に振ったビーグル犬がヘッヘッ言いながらこちらへきますわ。

そう思ったらポフンッと音がして煙がワンコから上がりましたの。


 煙の中から現れたのは本物のアルフレート・マニョマニョ様わたくしの婚約者でした。あの犬はアルフレート様でしたのね。


「チュムチュム!!」


 とたんに、わたくしを抱きしめるスラックスとはだけたシャツ姿のアルフレート様。


「君のおかげで呪いが解けたんだ!!」


 呪いですって!?わたくし魔力は高いけれど呪いはよく分かりませんわ。


「ピリピリ第三王女に関係を持てと迫られた時に断ったんだ。薬を盛られたが、その、君以外には反応しなくて……」


 モジモジとするアルフレート様。身体の大きな殿方がモジモジしてると、少し気持ち悪いですわね。


「彼女は呪術が使えて、思い通りにならない僕に犬になる呪いをかけた。そして自分の従僕を周りに僕だと思い込ませる魔法をかけて、僕の様に振る舞わせてたんだ」

 

 なるほどですわ。呪いはわかりませんが魔法なら魔力の高い私には通用しませんもの、それでわたくしにはきちんと別人に見えたのですわね。


「呪いを解く鍵は、君が偽物に婚約破棄を言い渡たして、別人だと気がつくことだったんだよ」


 アルフレート様は抱きしめたままのわたくしを、さらにぎゅっと抱きしめましたの。

 嬉しく思ってしまうなんて、わたくしはやっぱりアルフレート様のことが好きなのだわ。


「チュムチュム、もう婚約破棄したいなんて言わないでくれ、愛しているんだ」


「わたくしも、アルフレート様をお慕いしています」


 巷で噂の、悪役令嬢気分も味わえましたし、リモート嫌がらせや断罪劇も経験できましたので、満足しましたわ。

 ピリピリ第三王女は今頃呪い返しで醜い動物の姿にでもなっていることでしょう。

 

 でももう、あんなに悲しい気持ちになるのは嫌ですの。


「わたくしを絶対に離さないで幸せにしてくださいませ」


「勿論だよ、愛してるよ」


 半年後、わたくしたちは夫婦になりましたの。


「もし、呪いが解けなかったらどうなっていたのかしら」


 ワンコの期間が長かったアルフレート様はリハビリを頑張りましたけれど、お腹を見せて甘えてくる癖が抜けませんでしたの。ごろんと仰向けで頬をすりすりしてくる姿が可愛く見えるなんて、わたくしもだいぶ色ボケしてますわね。


「犬のままでもチュムチュムにまとわりついてそばに置いてもらっていたよ」


「でしたら今と変わりありませんわね」


 わたくしはそう言って、大きなワンコに口づけをしましたの。





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