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4話 初体験

 ボクは目の端を袖で拭ってキャロの方を向く。

 いい機会だからここでキャロに打ち明けてしまおう。


「あのねキャロ。実はパパ、冒険者の真似事をしていたんだ」


 そういって調薬台の裏側から剣を取り出す。


「うん、知ってるよ?」


「なに!? なんで知っているんだ……」


 キャロにはお客さんが入らない事で心配を掛けていたから、せめてお金の事では心配を掛けないようにと材料を取りにいくと言ってはこっそり魔物退治をしていたのに。


「あのさ、パパ。私がお金を管理しているんだよ? 薬も売れてないのに突然お店のお金が増えたらおかしいでしょ? パパってそういう所に鈍感なんだから……」


「そ、そうだったのか……黙っていてすまない」


「ううん、いいの。キャロに心配させない為って分かってたからね。だからたまに剣を研いだりしてあげてたんだよ?」


 なんという事だ。

 今日はやけに簡単に魔物が倒せるからもしかしてボクって強くなってる?ふふふ。

 と思っていたのは間違いで、実はキャロの頑張りが裏にあったのか。


「それは……ありがとう。まぁそういう事だから違法薬物の誤解が溶けるまでの間だけはちょっとこっちの方で頑張るよ。だからキャロは心配しなくて大丈夫だ」


「……私も行く」


「ん? なんだい?」


「私もパパと一緒に魔物を倒しに行きたい!」


 キャロはとんでもない事を言いだした。


「ダメに決まっているだろう。魔物との戦いは遊びじゃないんだよ?」


「そんなの分かってるよ。でも私だって狼の獣人だよ? 力だってパパより強いんだから」


 う……確かにキャロが10歳になる頃くらいから力比べで勝てなくなっていたな。

 いやそれでもやっぱり駄目だ。


「だって一人で家にいてまたさっきの人達みたいな人が来たらどうするの? キャロを変な目で見ていたあの人達が来たら……キャロが汚されてもいいの!?」


 汚されてもだって!?

 どこでそんな言葉を覚えてきたんだ。大事に温室で育てていたというのに。

 でもキャロが言うことも一理あるか……むしろ近くにいてくれた方が守れるか?


「うーん……わかった。とりあえず今日一回行ってみて危なそうだったら明日また考えよう」


「ホント!? パパ大好きっ」


 そういって抱きついてくるキャロ。

 こんな可愛いキャロだからこそ心配になっちゃうんだけどなぁ。


「それじゃ、キャロはこのナイフを持っていって。採取用だからあんまり攻撃力はないと思うけど……戦わせるわけじゃないから護身用にね」


「うん、じゃあ着替えてくるね!」


「わかった、ボクの方も魔物退治の"用意"をしておくよ」



 そうして準備を済ませたボク達は冒険者が集まる冒険者協会に来ていた。

 キャロは冒険者としての登録をしていなかったのでそれをするためだ。


「ええと、キャロさん、で種族は……あら珍しい。狼の獣人種ですね。経験は……なし、と」


 経験はなし……それは良かった。

 いや違う、これは魔物との戦闘経験ということだな。


「はい、これで冒険者登録は完了です。では、こちらの針を指に刺して貰えますか?」


 そう言われたキャロはボクの方を心配そうに見つめている。


「大丈夫だよ、キャロ。じゃあボクがやってあげよう」


 そういって目を瞑るキャロの指をチクッと刺す。

 すると血がプクッと浮き出てきたので協会のお姉さんから受け取った指輪に血を付ける。

 これは魔道具の一種で、こうする事で本人にしか指輪の情報を引き出せなくなる。

 指輪には請けた依頼やらこれまでの経歴やらが記憶されているし当然の処置かな。


 指輪に赤い線が走ったのを確認したボクはすぐにキャロの指に薬を塗る。

 ボクの作った薬ならこれくらいの傷はもうあっという間に消えてなくなってしまう。


「はい、キャロ。もう大丈夫だよ」


 こうしてキャロは冒険者になった。と、いっても戦わせる気はないんだけど。


「じゃああっちの依頼掲示板を見に行ってみよう」


 そういってキャロを連れて掲示板の近くに行くと依頼と、今の魔物の相場を確認する。


「んー……今日はオークの肉が高く売れるみたいだね」


「パパ、何を言ってるの? こっちをよく見て」


 隣のキャロがちょっと呆れたような声を出す。

 キャロが指しているものを見ると……。


「これはフォレストウルフの牙だね……こっちのオークの肉より大分安いよ?」


「オークはお肉だけでしょう? パパはフォレストウルフの牙っていう部分だけ見てるけど、こっちには毛皮と肝も書いてあるよ? 合わせたら……どう?」


「あ、そうだね。一体倒したら全部手に入るわけだし合わせると……大分そっちのほうが高いみたいだ」


「でしょう? どっちも倒せるならその方がいいと思うんだけど」


「じゃあそうしようか」


 その言い分に納得したボクはフォレストウルフを間引くという依頼を請け、冒険者協会を出た。

 よし、今日はフォレストウルフを倒しに行くぞ。

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現代が舞台で迷宮を探索する話です!面白いので是非!!
迷宮症候群—Labyrinth Syndrome— <目覚めぬ最愛の妹を救うためならSSランクの迷宮だって攻略してやる> script?guid=on
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