3話 どうして泣いているの?
「ふぁー。おはよう、パパ」
「おはよう、キャロ。体の調子はどうだい?」
ボクが相変わらず朝から薬を調合しているとキャロがベッドから起き出してきた。
「えっとね……大丈夫みたい。なんで昨日はあんなになっちゃったんだろ? 急にパパに甘えたくなって……」
顔を赤くしたキャロはすぐに手で顔を隠す。
うーん、我が娘ながら可愛いなぁ。
街で一番……いや、国で一番可愛いんじゃないかと考えるのは親バカだろうか。
「それは昨日行ったノーズィードラッグのお茶に薬が盛られていたからだね」
「うん、それは分かってるんだけど……どうして我慢出来なかったのかなって。あそこの薬を使っちゃった冒険者の人達も、こんな感じなのかな?」
「きっとそうだろうね。依存性があるからもっと悪質さ。やっぱり許せないから今日はお城に行って大臣に訴えるつもり……」
と、ボクがそう言ったところで店のドアがノックされる。
ウチの店は道に面した側が店、奥側が家といった構造なので、家の方にいたボクは小走りで店側の扉まで向かった。
「もしかしたらお客さんが戻ってきたのかな?」
そんなキャロの嬉しさを含んだ言葉を聞きながら扉を開く。
確かに冒険者達はこのくらい早朝によく薬を買いに来るし、もしかしたら。
「リーフのくすりやさん店主のリーフで間違いないな?」
そう考えながら扉を開けた途端これだ。
ドアの前には帯剣した4、5人の男たちが立っていた。
「はぁ、そうですけど何の御用でしょうか? 薬であればすぐお出しできますが」
「何を言っている! 我々はこの街を守る衛兵だ。ここで違法な薬が売られているという告発があったため検めさせてもらう」
「……はぁ?」
ボクは無理矢理店に入り込む兵士を呆然と見送った。
正直いって、何を言っているのかがよく分からなかった。
このボクが……違法な薬を?そんなバカな。
少しでも街の人が健やかに暮らせるように、少しでも笑顔を増やせるようにとずっと考えてきたのに。
「隊長! ありました!」
「調べろっ!」
おいおい、それは昨日ノーズィードラッグで買ったポーションじゃないか。
まぁノーズィードラッグのラベルもついているしすぐに誤解だと気付いてくれるだろう。
「試験紙で調べましたが違法薬物が検出されましたっ!」
そうさ、ノーズィードラッグはポーション依存症患者を次々と作りだしているんだ。
ここで見つかって良かったかもしれない。
今ここで訴えればいい……そう考えていた時に肩を叩かれて、ボクはようやく気を取り直した。
「店主よ……これは違法な薬物が入ったポーションに間違いないな?」
「はいっ!」
ボクは元気よく返事をした。
これでノーズィードラッグの悪事が白日のもとに曝されるだろう。
「そうか。素直でよろしい」
「いえ、ではなくここのラベルを見て……ラベルを……ラベル?」
隊長と呼ばれていた兵士が持っているポーションを見るもノーズィードラッグのラベルが貼っていない。
昨日までは確かに貼ってあったはずなのに。
剥がされた……誰に?決まっている。
こいつらだ。
何のために……まさかボクを……嵌めるため?
「店主リーフよ、貴様は本日より薬の販売を行ってはならない! 詳しい沙汰は状況を確認後に追って伝えるのでそれまでおとなしくしておくこと」
そういって兵士達は帰っていった。
一団の中で口元を醜く歪めていたあの瓶を見つけた兵士が主犯か?
いや、誰が瓶を見つけるかなんて分からないから……全員がグルか。
「パ……パパぁ……」
一連の流れを震えながら見ていたであろうキャロが駆け寄ってくる。
「心配をかけてごめんよ、キャロ。パパは大丈夫だから。調べたらきっとみんな分かってくれるよ!」
「本当に大丈夫なの?」
「ああ、もちろんだ」
「それなら……」
——それならどうして泣いているの?
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