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12話 迫り来る死

お読みいただきありがとうございます。

また、ブクマ、評価、感想とても励みになります。

ということで感謝の更新です。

長くなってしまったので2つに分けて残りは朝方更新します。

 次の日もボクとキャロはのんびり隣街を目指した。


「これは?」


「シビレシダだよ。あんまり近寄らないで、その名の通り痺れるからね」


「うわ、こわいね……」


 そういいながらスススっとボクにくっついてくる。

 長時間触れなければ大丈夫なんだけどね。


「でもきちんと処理すると麻酔や湿布になるんだよ。薬と毒は実際同じものだからね。上手く付き合うのが大事かな」


「へぇー、パパはなんでも知ってるんだね!」


「なんでもは知らないよ、調合に関することだけの頭でっかちさ」


 実際に調合と料理以外に関してはキャロの方がしっかりしてたりするからな。

 パパとしてもう少ししっかりしなくては。


「じゃあこれは?」


「これはツマネキ草だね。傷薬の材料になるんだ」


「やっぱりこれも毒があるの?」


「いやこれにはないかな。食べるとお肌が綺麗になるらしいよ」


「パパ……多めに採って」


 ボク達はのんびりとそんな会話を楽しみつつ隣街へと向かっていた。

 その道中では調合素材の採取も欠かさない。まぁこれは職業病かな。


「それにしてもやけに森が静かだね」


「そうなの? キャロとしては平和だなぁって思ってたけど」


 そういいながら辺りを見回している。


「まぁ魔物が出ないのは良いことなんだけど、野生動物もいないのがちょっと……ね」


 ボクがそういうとキャロは無言でボクの袖を掴んだ。

 なんだんだまだ子供だから怖いものは怖いんだろうな。


 そしてボクのそんな勘は当たった。

 いや、当たってしまった。


「……ん? なんか聞こえなかったか?」


「うん、聞こえた! 悲鳴みたいな……近くに人がいるのかな?」


「行ってみよう!」


 ボクとキャロは進む速度をあげて声の聞こえた方向へ進んだ。

 足場と視界が悪くて走れないのがもどかしいな。


 声がしたであろう場所へ着くとそこには三匹の馬が地面に転がっていた。

 それだけではなく、人も二人……血溜まりに沈んでいた。


 目の前では片腕を失くした老騎士のような男がぴくりとも動かない女性を庇うようにして立っていた。

 その老騎士の前には熊がいた。……いや熊じゃないな、これはマウェッタという魔物だ。

 腕を失くした老騎士はそれでも戦意を失わずにマウェッタと睨み合いをしている。

 なるほど、この魔物を恐れて森の弱い魔物や動物が逃げ出していたのか。


「パパっ」


 キャロが木の陰から魔物の注意を引かないように小声でボクを呼ぶ。

 ああ、この状況はまずいな……おそらくあと数秒もしたらあの老騎士の命の灯は消えるだろう。

 余り目立ちたくないけど仕方がない。


「キャロはそこに居てくれよ」


 ボクはそういうと小箱から注射器を取り出す。

 相手は力の強い熊系の魔物だ。

 この前使った薬だと少し力面では不安がある……ここは……。



「き……きくぅ……」


 オレは薬が効き始めたのを確認して、剣を握りしめると木の陰から飛びだした。


「おいっ!」


 そう一喝するとマウェッタの意識をこちらに向けることが出来た。

 目の前にいる死にかけの老人より背後から現れた新たな脅威に警戒をしたのだろう。


「グオオオオゥ!!」


 マウェッタは横槍に怒ったのか低く太い声でこちらを威嚇してくる。

 腹に響くその低音は普通の人なら腰を抜かして立てなくなるかもしれないほどの声量だ。


 まぁ、今のオレにはそんな叫び声は効かないけどな。

 全く意に介さずという態度で剣先をマウェッタに向けると完全に敵対した、とみなしたのかこちらに向けて牙を剥く。


「早く来いよ……それともオレからいくか?」


 オレの方は効果時間三分という制限時間つきだからこんな所でお見合いをしているわけにはいかない。

 一気に地を蹴るとマウェッタに向かって走る。

 相手も戦闘開始の鐘の音が聞こえたのか、最大の武器である腕を振り上げた。


 マウェッタという名前の由来は「死」である。

 マウェッタが軽く腕を振っただけで並の人なら頭が失くなってしまうだろう。

 その爪で裂き、そして牙でもって人を喰らう熊。

 出会ってしまったら一流の冒険者でも逃走を選ぶ者が多い。


 そんな死の振るった右腕をボクは軽く(・・)受け止める。


 さっき使った薬は力に特化した、いわばマッスルドーピングだ。

 人の限界を超えた膂力を発揮するため、激しく動くと筋繊維が千切れてしまう諸刃の薬だ。

 それを一緒に調合してある回復薬で治しながら戦うという完全な肉弾戦専用薬。

 それをオレは使用していた。


「なんだ、こんなもんか」


 攻撃を受け止めた剣を振り上げると数百キロはあるであろうマウェッタの体が後ろに(かし)ぐ。

 しかしマウェッタも持ち前の体幹でなんとか持ち直すとさらなる追撃を仕掛けてきた。


「ワンパターンだな」


 先程と同じような軌道で振り下ろされた右腕を下から切り上げる剣筋でもって力任せに両断する。

 オレの体の内部からはブチブチッという不快な音が響くが……すぐに治るだろう。


「ガァァァ!!」


 目の前のマウェッタは痛みに喘いでいる。

 きっと強者故に今まで傷ついたこともなかったのだろう。

 その腕を振ればたちまち目の前の獲物は命を散らしていたはずだ。

 オレは右腕を失って瞳から闘志を失いつつあったマウェッタに近づくと難なく左腕も切断する。

 これで決死の攻撃をされる心配もない。

 薬の残り時間もあるしキチンとトドメを刺しておこう。


 剣を水平やや上に構えると一気の踏み込みでマウェッタの心臓を刺した。

 マウェッタは胸を刺された事で前に倒れ込み、自ら剣に深く刺さっていく。

 そうしてついに剣はマウェッタの背中から顔を出した。


「終わったか……」


 串刺しにしたマウェッタを前にしてオレがそう呟くのも仕方がないだろう。


「あ、危ないですぞっ!!」


 マウェッタの背中側からそんな声が聞こえた。

 ふと気付けばマウェッタの体は既に剣の柄部分まで刺さっていた。

 つまり体の上には顔があるわけで……。

 マウェッタは最後の力で口を大きく開くとオレの肩に噛み付いた。


「パ……パパァァァ!」

他の作品でも出しましたが、マウェッタはヘブライ語で死という事でその辺りをイメージしております。


少しでも続きに期待してもらえたらブクマ、評価、感想をお待ちしております。

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現代が舞台で迷宮を探索する話です!面白いので是非!!
迷宮症候群—Labyrinth Syndrome— <目覚めぬ最愛の妹を救うためならSSランクの迷宮だって攻略してやる> script?guid=on
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