不思議な世界と「カカシサン」
「ここが草原?」
啓示をされた草原に私は行く。その草原は何かあった訳ではなく、何の変哲もない場所だった。正直、やはりあれは御伽のファンタジーの世界の話なのだろう、ここでは私は何も用がないのだろうと……そう思っていたのだけれど……その違和感に気づいたのは草原の立ち入り禁止という看板をどけようとした時だった。
看板にーー重さがなかったのだ。それどころか、背後を見ると見覚えのない光景がそこに広がっていた。その光景は……正しく思い描いていたファンタジーそのもの。だからこそ私はその草原に少しだけ期待感を寄せていた。ここなら私を楽しませてくれるのかもと。ここなら私が本当の自分を出せるかもしれないと。
「さあさあ、私を探してご覧なさい! 世界は私を求めているの? 世界は私を拒んでいるの? 答えなさい、答えなさい! 拒んでいないのならーーそうね、カカシ! 動くカカシを私に見せてみなさい!」
まるで世界の王様になった気分だった。まるで世界の支配者になった気分だった。気分が高揚し、有り得もしないことをその草原で叫んだ。だけどーーこの草原は私を受け入れたーー
「お呼び、ですか?」
「えっ……?」
不思議な国のお姫様。それはきっとアリスだと。不思議な国のアリスだと……そう思っていたのに。