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雨のち鬼  作者: 灯
1/4

始まりは日常以外の何物でもない

5:30

敷島 出の朝は早い。

それは彼が現在暮らす実家からそこそこに離れた大学に通っているからであるが、本人的にはもう少し遅い時間でも良いのでは無いかとも思っている。

何せ、“あいつ“と同じ交通機関を使わねばならない。そう思う度に朝の支度は捗らず、どんどん焦っていくのだが。


出は白地に英字の書かれたプリントTシャツ、濃紺のジーンズと当たり障りのない服を選んで、袖を通した。帰る頃には冷えるだろうと、1枚、上着をリュックに詰め込む。


6:00

部屋から出て、リビングへ行く。薄暗いリビング、まだ自分以外は起きて居ないのでそっと動く。

冷蔵庫の上段、昨日の晩のうちに母が作ってくれたお弁当(朝ご飯)があった。このお弁当を通学中に食べるのが常である。小さく合掌して、お弁当をリュックの1番上に入れた。


6:45

最寄りの停留所から駅までバスで向かう。この時間だと高校生や社会人もチラホラ見かけるが、比べて人は少ない。出はいつものように運転手の真後ろの席を陣取った。ここで駅に着くまでは一眠りする。


7:20

駅へ到着、急いでバス停から地下鉄駅へ。直ぐに乗らないと一限へ間に合わない。ギリギリ駆け込むと8割くらい人で埋まっていた。慣れたものだが、ほぼ満員電車が出来るなら避けたい事象であることに変わりはないのである。


7:27

“あいつ“がやってくる。

出は半ば無理やりに満員電車の最深部へ進んだ。“あいつ“は見つけたら確実に出に照準を合わせる。



「っ、すいません」

「すいません」

「すいませんっ」

謝りながら進む。何人かぶつかって怪訝そうな顔をされたが仕方がない。

出は後ろを見た。“あいつ“はここから見えないので、見つからずに済んだだろう。今日は成功した。明日は失敗するかも知れない。明後日は午後からだから心配しなくても良い。つらつらと考え、ひとまずの安堵感を得た。


“あいつ“とは誰か。



他でもない、出の実の兄である。

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