七話 ランク
「まず、ランクってのはジョブを授かると同時に定められるんだ。ランクは、戦闘系のジョブなら強さ、非戦闘系のジョブなら質の良さを表す目安のようなモンだ。因みに魔物や魔族(獣人を含む)にもランクはあって、危険度を表している。このランクはFランク~SSSランクまでがあって、さらにA+やA-と言った、+、-もある。当たり前だけど、Aが中間でA-がAより少し劣り、A+がAより少し優るっていう事だからな。」
ソーレンが話を一旦途切らせると、アルカが質問をする。
「そのFランク~SSSランクって大体どんな感じなの?」
アルカの質問を聞いたソーレンは、本を片手に説明をする。
「分かりやすく言うとだな、Fランクは未熟者、Eランクは一般人、Dランクは一人前、Cランクは村で指名の依頼が来る程度の実力者、Bランクは街で指名の依頼が来る程度の実力者、Aランクは都市で指名の依頼が来る程度の実力者、Sランクは国から指名の依頼が来る程度の実力者、SSランクは英雄、SSSランクは人外って感じだな。魔物や魔族の場合は、ランクが高ければ高いほど危険度が高いって思ってくれればいい。まあ、あくまで目安だから『ランク=強さ』に必ずなる訳でもないんだとよ。」
「なるほどなあ~。じゃあ、ジョブを貰った時は皆Fランクから始まるの?」
「いや、それがジョブごとに与えられた時のランクがあってだな、例えば、運び屋だとFランク、冒険者だとEランク、騎士だとDランクといった具合に決められているんだ。一部を除けば最高でもCランクから、らしい。この初めからCランクになるジョブは、禁忌ジョブか希少ジョブしかないらしい。後、稀にだがBランク以上で得ることができる『上位ジョブ』と呼ばれるジョブというものをさ預かる人もいるみたいだな。」
因みに、伝説のジョブを授かった者のスタートラインは、Sランクからとなっている。
「要するにこれも運しだいってことなんだね!」
「まあ、そうなるな。だけどランクは努力すればするほど上がるらしいんだ。で、ランクが上がればジョブの格も上がって、『上位ジョブ』になることができるんだ。例えば、魔術師が魔導士に、盗賊が怪盗に成ったりという具合にな。後、中には派生するものがあって、騎士が聖騎士か暗黒騎士に、剣士が魔剣使い、大剣使い、双剣使い、二刀流なんかになったりするんだ。だから、最初に低ランクのジョブを授かっても努力次第ではどうとでもなるんだ。まあ、最初に高ランクのジョブを授かった方が有利なのに間違いはないけどな。」
ソーレンの言葉に他の五人は納得したように頷く。
「弱いジョブから、努力して強くなるかあ~憧れちゃうな!」
「ボクは最初から高ランクのジョブが欲しいかな?」
「私もレイアさんと同じですね。最初からある程度の強さは欲しいです。」
「あたしは兄貴の言ってることも共感できるし、レイアとリナの考えもいいと思うぜ」
「俺様は、どんなランクのジョブでもいいぞぉ!なぜならっ!努力の前にはランクなど関係がないからだ!正に『積水成淵』!」
五人は自らが思ったことを口にしていく。カリオスが少しぶっ飛んだ考えを言っているが、あながち間違えでもないので気にしてはいけない。
「俺はレイアとリナちゃんと同じかな。やっぱある程度の強さは欲しいわ。ああ後、ジョブを貰ったその時に、体が空気中の魔素(魔法に使う、魔力のもととなるもの)を取り込んで、そのジョブに合った体質となって力が扱えるようになるらしい。っと、『ジョブ診断』についての話はこれで終わりだ。後は一週間待つだけだな。」
ソーレンが話を終わらせると、リナが全員の方を向いて話し出す。
「そういえば、皆さんはどんなジョブになりたいと考えているのですか?」
「そういえば聞いてなかったな…」
リナが全員に「なんのジョブを希望しているのか?」を聞き、ソーレンもそれに乗る。
「一人一人、言っていきましょうよ!まずは言い出しっぺの私から言いましょう。私は、『魔術師』になりたいですね。できればダブルになりたいのですがここは一つだけにしましょう。」
「リナちゃんは魔法に興味があるのか?」
「ええ。魔法を今よりも使えるようになれば、生活も向上しますし、戦うこともできますからね。」
現段階でも、アルカ達は得意不得意はあるが、魔法が使える。しかしそれは、『生活魔法』と呼ばれるものであり、料理をする際に小さな火をだしたり、掃除をするために風を発生させる程度のものであり、戦闘などできるはずもない。
「なるほどね。なら、次は俺が言おうかな!俺は戦闘系のジョブがいいかな?特に、色々なジョブに派生することができる『剣士』がいいな!」
「ボクもソーレンと同じく戦闘系のジョブがいいかな。できれば、元々のランクが高い『騎士』がいいな。守りたい人がいるしね。」
レイアはアルカの方をチラッと見ながら言うがアルカは気づいたそぶりもない。彼の頭の中では「レイアは家族思いだなぁ」としか考えていない。無残なり。
閑話休題。
リナ、ソーレン、レイアが順に答えて行き、アルカへ視線が移る。
「ボクはやっぱり、調教師とか魔物使いがいいかな?戦闘系のジョブも憧れるけど、向いてなさそうだしね。」
「兄貴はブレないなぁ…。あたしは、別に何でもいいけど戦闘系のジョブがいいかな?家に力仕事ができるやつがいないからな。」
アルカが申し訳なさそうに頭を掻き、リナも少し気にしていたのか目が泳いでいる。
「最後に俺様だな!俺様やはり、『大剣使い』だな!漢と言えば、巨大な武器を振り回し、その名を世界に轟かせるものだからなっ!」
「努力の前にランクは関係ないとか言いながら、上位ジョブの『大剣使い』になりたいとか意味わかんねぇな」
ソーレンが冷静な突込みをするが、カリオスはガハガハと笑っているだけで、確実に聞いていない。他の四人も苦笑いをしながら二人を見る。
すると、ソーレンが溜息を吐きながら話し出す。
「まあ、皆なりたいジョブはあると思うが、どんなジョブになっても俺たちの関係は変わらねぇ。あまり、ジョブに期待しすぎて、痛い目を見ないようにな。俺たちは『ジョブ』以上に大切な『友』がいるってことを忘れんなよ!」
「「「おうっ!」」」
「あ、禁忌ジョブだけにはなるなよ!」
「ボクが思うに、一番ソーレンがなりそうだけどね。」
「なんでだよっ!?」
六人は他愛もない会話をしながら、笑い合う。
いつの間にか太陽は地平線へと沈んで行き、夕日が六人を照らす。六人はそれぞれの家へと帰るために歩き出す。夕日を背に六人は丘の上を歩いて行く。六人の先には、もうすぐ満月になる月が雲に隠れるように空に浮かんでいた。
──の足音は確実に近づいている。
カリオス「ソーレンが良いことっぽいことを言っても、しっくりこないなっ!」
レイア「あっそれボクも思ってた」
リナ「実は私も」
カノア「あたしも」
アルカ「ぼっ僕も?」
▼ソーレンハ チノナミダヲ ナガシテイル!