第0話 タダイマ
始めて書く小説なので至らぬ点もあると思いますが、生暖かい目で見守ってくれるとありがたいです。
*更新は不定期です
よく晴れた日に、とある丘の上にそれぞれ色が異なった花束が置かれていた。
その花束の前には一人の少女が立っている。
少女の足元にはいくつもの水滴が落ちてゆき、乾いた土を濡らしていく。
王都では祭りが開かれ、全ての人が笑顔で家族や友人、恋人たちと騒いでいる。
世界でただ一人、少女だけが泣いていた。誰も少女が泣いている理由は分からない。分かるはずがない。何故なら、少女自身さえも自分が泣いている理由が分からないからだ。
ただ一人、──だけは知っていた、覚えていた、思い出した。もう一度繰り返すから泣いているのだと、忘れてしまったことを泣いているのだと、涙があることを確認しているのだと。
太陽は雲に覆われ、世界は暗闇に支配される。
少女は泣き止み、自らの帰る場所へと歩み始める。
誰かが言った
「今度こそは」と、
誰かが思った
「失いたくない」と、
誰かが願った
「また楽しませてくれ」と、
世界は回りだす。制御を失い狂ったように回りだす。
もうだれにも止められない。
───丘の上には枯れた花の束だけが取り残されていた。