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幼女転生から始める異世界解読術  作者: りょう
第1章幼女エルフは本を好む
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第1話 エルフに投げ飛ばされ天使に出会って

 人はいつか必ず大きな壁にぶつかる時が来る。そしてそれを乗り越えてこそ人は成長するとどこかの本で読んだことがある。


 俺は転生してすぐにその壁にぶつかることになった。


「え、えっと、ゆ、ユウだよね? 今明らかに変な口調だったけど、ユウだよね?」


 俺の顔を覗きこみながら何度も問いかけるエルフ耳の少女。どうやらユウというのは、恐らく俺が転生した姿の子で、あの反応から察するに最近息を引き取ったのだろう。

 だけどそこに夏目龍之介という新しい魂が入ってきたことにより目を覚まし、それに彼女は驚いたのだと思う。


(って、何冷静に分析しているんだよ俺)


 あの声から察するにユウというのは人間で言う小学生くらいの子で、間違いなく女の子。そして恐らく目の前のエルフの妹。

 これらのことから導き出される結論はただ一つ。

 俺は男から女に生まれ変わってしまったのだ。


(最悪だ)


 いくら本が読めるからって、これは流石にない。


あの神様は伝えるべきとをちゃんと伝え忘れていたのだ。


「え、えっと、ユウ? さっきから何も喋っていないけど、もしかして私が分からないの?」


 先程から考え事をしているせいで何も喋っていなかった俺もといユウに対して少し焦った様子を見せる少女。俺はあくまで今は夏目龍之介ではなくユウという少女なので、ここはしっかり言葉を選んで彼女と会話をしなければ。


「分かる訳ないだろう」


「え?」


 やっちまった。ついカッとなって言ってしまったが、声は非常に可愛い(自分で言うのもおかしいが)。そんな声でこんなセリフを言ったら、誰だって驚くに決まっている。


何せ俺が一番驚いているのだから。


「あ、え、えっと違くて、そ、そのお、お姉ちゃんだよね?」


 もう手遅れかもしれないが、急いで少女風の口調に修正する。な、何とか誤魔化せる……よな?


「だ、誰あなた。もしかしてユウの成りすまし? ユウをどこにやったの?!」


 手遅れでした。


怒り心頭です彼女。


「ま、待ってお姉ちゃん。私成り済ましとかそういうのじゃなくて、わ、私はちゃんと、その、ユウだよ!」


「ユウはそんな口調で喋らない! 私の大切な妹を返して!」


 必死の弁明もむなしく、胸ぐらを捕まれ涙で訴えかけられる。こちらも抵抗をしようにも力が弱く、それを振りほどけない。


「ち、違うんだって! とにかく話を聞いて!」


「この犯罪者がぁぁ」


 そして俺は何も抵抗ができないままエルフの少女に思いっきり投げ飛ばされた。到底女性とは思えない程の力で。


「嘘ぉぉぉ」


 俺は我が身に起きた信じられない現象に、大きな悲鳴だけをあげながら家の外へと吹き飛ばされていった。


 ああ神様。


 俺には二度目の人生をやり直すことは、非常に難しいようです。

俺の第二の人生は、投げ飛ばされるところから始まったのであった。


 ■□■□■□■□

 エルフの少女に投げ飛ばされた俺は、五十メートルほど吹き飛ばされたのち、ようやく地面に落下した。


「痛てて。流石に飛びすぎだろ」


 少女の馬鹿力に驚かされながらも、何とか俺は痛む小さな体を何とか起こし、周囲を見渡す。そこに広がっていたのは、ファンタジーの世界ではよくある王都呼ばれていそうな場所だった。どうやら少女の家はその一角にあったらしい。


「ファンタジー……。まさかこの年でその言葉を発するなんてな」


 自分の姿すら忘れてそんな言葉を漏らす。だけどそれを気にする者はおろか、王都だというのに他の人の姿がなかった。これだと俺が想像していたファンタジーな世界とはまるで違う。


「どうなってんだこれ」


 あの神様は世界を救ってほしいと言っていたけど、もしかしてそれとも関係があるのだろうか。そうだとしたら、俺の力でどうにかなるのかこれ。


「え!? も、もしかしてユウちゃん?!」


 そんな状況に困惑していると、突然大きな声で俺の名前が呼ばれる。俺は思わずビクってしてしまう。先程の事があって、今は誰とも遭遇したくなかったのだが、こういうところは俺の不運な点だ。


「え、えっと」


 俺は恐る恐る声がした方に体を向けてみる。するとそこには天使が立っていた。


 決して言葉の彩ではなく、そのままの通り白い翼を背中に生やした天使が立っていたのだ。


(異世界ってすげえ)


 まさか本物の天使にすら簡単に会えてしまうなんて。


「ほ、本当にユウちゃんなの?」


 先程のエルフ同じ反応を見せる天使。どうやらさっき考えていたことは正しかったと、彼女の反応ではっきりした。


(俺からしたらあなたが天使なのか聞いてみたいです)


それを尋ねることは勿論できないけど。


(でもこの反応の仕方、やっぱり転生って普通じゃ考えられない事か……)


死人がこうして生き返るだなんていくら異世界でも簡単な話ではない。二人の驚きかたからそれが見てとれる。


「う、うん。私生き返えったの」


 何も喋らないわけにもいかないので、とりあえずそれらしい反応のしかたを言葉にしてみる。


「生き返ったって、天界でもそんな特例聞いたことないのに、どうして」


「それは私にも分からないの。それより一つ頼みたいことがあるの」


 俺は口調を間違えないように天使にす先程の出来事を説明した。まああ時は明らかに俺の口調が悪かったわけだけど、流石に実の姉にあたる人にはしっかりと誤解は解きたい。場合によってはちゃんと俺の事も説明して、理解してもらいたいのが本音だ。


「ティナ、ユウちゃんが亡くなってすごくショックを受けていたから、あまりの事に受け入れられなかったんだと思うの。流石に投げ飛ばしちゃうのはどうかと思うけど、それくらい嬉しいんだと思うの。許してあげて」


「う、うん」


 あれが喜び表現とは到底思えないけど、それで通ってしまうあたり彼女はかなりの馬鹿力……力持ちなのかもしれない。あとさらりと流したけど、どうやら姉はティナという名前らしい。これで信じてもらえる要素は増えた……と思う。


「それよりはユウちゃん、一つ聞いていい?」


「何?」


「服着ないの?」


「え?」


 今まで一度も見なかった己の体を見る。そこには少しだけ膨らみがある胸がありのままの姿があった。


 そういえばやたらと寒いと思った。


 というか裸の少女を投げ飛ばしたのかよ。


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