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ウメノカ
「梅の花、お前はお砂糖みたいだ」
不意を突かれて動きを止めた
囲炉裏をとんと飛び越えてお酒を飲んでいる胡坐の中に飛び降りた
「何をする危ないだろう」この人は言うが、自分の期待に満ちたまなざしに気が付いたみたいでちょっと
面白そうな顔をする
「それはどういう意味?」本当はもう一回言ってほしいのを知っているのに
あの人は 「さあな」と言って笑う
すこし意地悪なところも変わらない
食事が終わるとお酒をもって階段を上がる
病気から解放されて痩せてしまった体も元に戻っている
強靭な腕にもたれかかると心から安心できる
そこにはよこしまな感情はなく、欠落も過剰もない、子供の時はいつもこうだった
心はどこまでも平坦で何も怖がってはいないし欲しがってもいない
最初に外に連れて行ってもらったとき手を引いてくれたのを思い出す
澄みつつ溢れる月の光、黄水仙が草原を遠くまで覆って何もかも匂いに満ちていた
嬉しくて笑ってばかりいた。
けれど、横になって雪あかりの中で胸に顔をつけてみると少し悲しくなる
心臓の音がしない 死んだ人は年を取らない