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増えたアクセス数

作者: コメタニ

 こんにちは、はじめまして! 私はムギヤマといいます。ここ『小説家になろう』に投稿を始めて半年になります。今日は、私の不思議な経験を聞いてください。

 

 今朝、私はコーヒーショップに居ました。ラテをすすりながらノートパソコンを立ち上げ『小説家になろう』のサイトを開きました。昨日書き上げた新作短編をざっとチェックして投稿しようと思ったからです。


 ログインをして、まず4日前に投稿した作品のアクセス数を見てみようと思いました。どうせ1か2、ヘタをしたら0なんでしょうけど、確認をするのが習慣になっていたからです。


 ずらりと並ぶ投稿済み作品の中から一番上の作品をクリックし、さらにアクセス解析をクリックしました。ところが、そこに表れた画面は予想しなかったものでした。棒グラフは昨日の22時から真っ青に塗りつぶされ、左上に表示された数字は2万を超えていました。しばらくの間、茫然と画面を見つめていました。何が起こっているのか理解出来ませんでした。とりあえずラテをひと口すすり、心を落ち着かせようと努めました。

 

 そして、はたとある考えにたどり着きました。どこかで晒されたのかもしれない。盗作の疑いをかけられ、どこかで晒され、興味本位に大勢が覗きに来たのかもしれない。背筋に冷たい汗が流れ落ちます。そこで、作品のURLをGoogleに打ち込みエゴサーチを行ってみました。すると検索結果には、ずらずらとまとめサイトが並びました。胸の鼓動が激しくなり店内に響き渡っているように感じます。そのひとつを開いてみると、思いもしなかった記事が表示されたのです。


 まとめサイトの見出しはこうでした。


《呪いか!? 予言か!? 恐怖の小説》


『なんのことだろう?』混乱しながらも記事を読み進めると、半年前に初めて投稿したアクション短編が引用されていました。その作品には某航空会社の旅客機が墜落する描写があるのですが、その部分がピックアップされていました。そして、それに対応するようにニュース記事が引用され、その内容は旅客機の墜落事故で航空会社は私が作品に登場させたそれでした。事故は、作品を投稿した4日後に起こっていました。


 まとめの記事を読みながら『そういえばそんなことがあったなあ』と当時を思い出しながら、続きを読み進めました。


 二作目が引用されていました。ラブロマンスの短編です。そこで私は主人公の恋人の容姿を、ある男性俳優に例えていました。続けてニュース記事の引用。それはその男性俳優が事故死したという記事でした。三作目はスリラーで、東京のある街が大雨で洪水になる描写があり、それに対応するニュース記事は、やはりその街が大雨で洪水になったというもの。そんな調子で投稿した十作品すべてがピックアップされ、それに対応する事件、事故のニュースが引用されていました。どれも作品投稿から一週間以内に起こっているものでした。


 ちなみに、4日前に投稿した一番新しい作品は官能小説で、エクスタシーの瞬間をある火山の噴火に例えていました。そして、その火山が昨夜遅くに噴火したと、今朝のニュースでやっていたことを思い出しました。おそらく、私の作品を読んでいた読者が、火山が噴火した報道を昨夜見てその関連性に気づき、過去の作品に遡って検証し、その結果をどこかに書き込んだのでしょう。昨夜22時に突然跳ね上がったアクセス数の謎はこれで解けました。


 まとめサイトを閉じて、ツイッターを開いてみました。昨日まで千を超えるくらいだったフォロワーが10万を超えていました。昨日まではほのぼのとしていたTLでしたが、うって変わって誰もが私の登場を待ちわび、呼びかけても姿を現さない私を口汚く罵っていました。メッセージも多数届いていて、その内容はどれもが私に予言を頼んでいるものでした。

『次回の競馬の結果を教えてください』

『明日の株価は上がるでしょうか?』

『お笑いコンビの○○は今年で消えますか?』

『○○と結婚した○○を呪ってください』

こんなのばかりです。なかには現役の議員からのメッセージもありました。

『次の選挙前に党を移った方がいいでしょうか?』


 私はツイッターのページを閉じて大きくため息をつきました。そんなことをいわれても困ってしまいます。だって、私は予言をしているつもりなどはつゆほども無く、ただ思いつくままに小説を書いては投稿をしていただけなんですから。こうして実際に起こった事件との関連性を指摘されて、こっちが驚いているほどなんですから。


 でも、私が弱ってしまった一番の理由は他にありました。再び『小説家になろう』のサイトに行くとログインをして、執筆中小説の欄に表示されている作品をクリックしました。画面に表示された、完成済みであとは投稿を待つばかりの新作を私は初めから読み始めました。

 それはコメディの短編小説で、その内容は地球と月が衝突して砕け散ってしまうという話でした。

この作品はフィクションであり、実在する人物、団体、ブログ等とは一切関係ありません。たぶん

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― 新着の感想 ―
[良い点] 面白かったです ^ ^ 読んだ後くすりと笑ってしまいました。星新一さんの「ショートショートの広場」みたいです。
[良い点] ひたすらドキドキした後のオチが秀逸で吹きました!笑笑
[良い点] 面白い。 頭の中にコーヒーショップで悲観する紳士の姿が目に浮かびました。(性別は明記されて居ないので完全に想像ではありますが) 文字が踊って私の脳の上を闊歩するように、ジワリジワリと入って…
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