こんな時までドジっ子じゃなくても・・・
「こればらまかれたくなかったら俺とデートしろ」
「はいっっっっ――!?」
この時程時間を戻したいと思ったことは無い
時は遡って今朝、私は誰よりも早く学校に来て幼馴染で初恋の相手の篠原拓海の靴箱に三日三晩考えに考え尽くしたラブレターをいれた
彼はまさに才色兼備で顔よし、頭よし、運動神経よし、なにより性格よしのモテ男である
それに引き換え昔から私は愚図でダメなドジっ子だ
顔も頭も普通運動も普通にいいのだがドジなためよくミスをして皆によく笑われる
でも拓海君はそんな私のことを笑ったりせずにいつも助けてくれる
彼は私にとって王子様なのである
だから私が他の子を差し置いて彼女になるのは無理なのは分かっている
しかも彼はどんなにかわいい女の子にコクられても「他に好きな子がいるから」と言って振るそうだ
でもこの思いは日々募るばかりでこの際玉砕されてスッキリさせようと思った
そして今朝ラブレターを彼の靴箱に投函したハズなのに私が体育館の裏で拓海君を待っていると学校一乱暴で粗暴と有名な相崎煉がやって来た
「あんたが綾小路桜?」
「えっ・・・そ、そうですけど・・・・」
いい噂を聞かない彼とは一切喋ったことが無い私はいきなり話しかけられたため、ビクビクしながら答えた
「じゃぁ、この手紙ってあんたが書いたやつだよな?」
そう言いながら彼は私が拓海君に宛てた手紙をヒラヒラさせながら私に見せた
「あっ・・・!それどうしてあなたが・・・・・」
「俺の靴箱に朝入ってたんだけど?」
「え・・・?」
私は頭が真っ白になった
彼は今私に一体何を言ったのかすぐには理解できなかった
それから今朝の行動を振り返った
ドキドキしながら拓海君の靴箱を探して鞄から手紙を出した瞬間誰か人が来る気配があったため急いで靴箱にそれを入れた
『あっ!あの時か!クソッ!こんな時までドジっ子にならなくてもいいだろがぁ!・・・』
おっと少し言葉が乱れましたね
コホン、とにかくそれは誤解だと目の前の彼に伝えましょう
「えーと、実はそれ、あなたとは違う人に宛てたもので・・・とっ、とにかくごめんなさいっ!間違えました!!だから、そのーとりあえずそれ返してくれる?」
しどろもどろに頭を下げながら謝りなんとか用件は伝えられた
当然のように返してくれるものと思っていた私はすぐに彼から手紙を取り返そうとして手を伸ばすがスッとかわされた
相手の行動に不可解さを抱いた私は見上げてみるとまさに鬼の頭をとった様にニヤリとこちらを見下ろしながら笑った顔があった
その顔に私は反射的に後ろに引こうとしたがその前に私の手を掴まれた
「こればらまかれたくなかったら俺とデートしろ」
「はいっっっっ――!?」
そして今に至る
「なっ、なんで私があなたと・・・!!」
「じゃぁ、これ掲示板にでも張りだそうかな~」
怯えよりも驚きと怒りが勝り、私は大声を上げたが彼はまったく意に介さずに脅し文句を言ってきた
それを聞いて私は一気に怒りの熱が引き、困惑に陥った
そんなことをされれば私はきっと恥ずかしさで死ぬ
「わっ分かりました・・・でも!一回だけっていう条件で!!」
最後は彼に縋りつくように懇願した
彼はその行動に少し驚いていたようだが逆光で表情は見えなかった
その時彼の頬が赤く見えたのは多分気のせいだろう
「じゃ、決まりな」
そう言いながら彼は顔を横に向けながら私を元の位置に戻し、こちらに手を出してきた
それを不思議そうに見ていると彼はその手の意味を言った
「携帯、貸せ。メアド交換すっから」
それから私は急いで携帯を出して彼の手の上に置いた
彼の番号が登録されると私に返し、彼は立ち去ろうとして何か思い出したようにこちらを振り向き捨て台詞を吐いた
「楽しみにしてるぜ、桜」
「―――っ!?」
私は目を見開いて呆然と私の反応を見てクスッと笑って立ち去った相崎君を見ていた
なぜなら最後の笑顔が見惚れるほどのものだったから
その後、私は身近な人しか呼ばない名前で呼ばれたのも相まって思わず赤面してしまった
予鈴が鳴ったため、私は我にかえり急いで教室に帰った
その光景を誰かが見ていたとも気づかずに―――――