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二つの魂  作者: kuu
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冥王はロリコン?

 孝介の頭目がけて刃物で刺す。

 刺さった場所は頭ではなく枕だった。

 刃物を抜くと枕から綿が出た。

 孝介は目を開け。

「何している?」

 少女は笑う。

「お兄ちゃん。起きてたんだね」

「殺気で目が覚めた」

「さすがお兄ちゃん。ハデスお兄ちゃん程じゃないけどね」

「ハデス?」

「うん。冥王ハデス私の夫だよ」

{ハデスってロリコンなのか}

 と孝介が思うのは無理もない少女はどう見ても幼かった。

「ダーリンって呼ばれるよりお兄ちゃんって呼ばれるのが好きなんだよね。

ハデスお兄ちゃんって変だよね」

「そうかな」

 少女は頬を膨らませて。

「そうだよ。ダーリンって呼びたいのに」

 孝介が口を開く前に少女が口を開いた。

「言ってなかったね。あたしの名前はキャロって言うの。お兄ちゃんは?」

「孝介。で何しに来た?」

「こうすけ、かぁ良い名前だね。あたしはハデスお兄ちゃんに連れて来いって言われたの」

 孝介がキャロに聞いた。

「何所に?」

「零体になって冥界に行くの。人間は生身じゃ行けないの」

「零体って幽霊の事か?」

 キャロは横に首を振って。

「幽霊というより生霊かな」

「どうやって零体に?」

「うんとね」

 と言うとキャロは空間から注射器の様な物を出した。

「この注射器でね。ぷすっとやるんだよ」

 孝介はキャロの言葉を聞いて、

{やっぱり}

 と思った。

孝介は覚悟を決める。

「分かった。冥界行くよ。一つだけ質問。すぐ帰れるんだよね?」

「冥界はね、時間の流れが違うの。冥界に一年いても、魔界は一分も経たないよ」

「じゃ行こうか」

「うん」

 と言うと注射を孝介の腕に打った。

 

 孝介の体内から三つの生霊が出る。

 孝介はプカプカ浮いていた。

「こうすけ、こうやって会うの初めてですね」

「そうだね。カイト」

「お前とこうやって会うのも変な感じだ」

 とアキトはボソッと言った。

 孝介は振り向き。

「僕もだよ」

 キャロは混乱気味に。

「何故?お兄ちゃんから三つも?」

「天使と悪魔が体内に居たから」

 ???

 キャロの思考はショートした。

 ・・・・・・

 ショートした思考も回復したキャロは。

「……と、とにかく、こうすけお兄ちゃん。あたしに付いてきて」

 空間が円状に裂ける。

 孝介にはキャロが何をやったか分からなかった。

 キョロは円内に入った。

 孝介達も入った。


 冥界。

 孝介達はキャロに城まで案内され入った。

「ここがハデスお兄ちゃんの城だよ」

「大きい」

 と孝介は声を漏らした。

 キャロはニコニコして。

「当然だよお兄ちゃん。何て言ったって冥王ハデスの城だもん」

 キャロは歩き出す。

 孝介達は浮いたまま泳ぐ様にして後を追った。


 王の間。

 左右に一〇ずつ少女が並んでいた。

(本当にここ王の間か)

 と孝介は思った。

 キャロは冥王ハデスに向かって手を振った。

「ハデスお兄ちゃん。連れて来たよ」

 王座に座っていた冥王ハデスは立ち上がりキャロ達に近づく。 

「良くやった愛しのキャロ

 キャロの頭を冥王ハデスは撫でた。

「えへへ」

 とキャロは笑った。

 冥王ハデスの表情が変わり。

 先ほどまでのデレっとした表情ではなく真顔になった。

 冥王ハデスは孝介に目を向け。

「そなたがこうすけ殿か?」

「そうですけど」

「そうか。後に居る二人は?」

「僕の体内にいた天使と悪魔です」

「なるほど。名は何と申す?」

「私はカイトと申します」

「俺はアキトだ」

「我も名乗るとしよう。我は冥王ハデス。そなたをここに呼んだのは」

 冥王ハデスは一歩、孝介に近づき。

「単刀直入に言う。我の家臣になれ。唯ではと言わん」

 冥王ハデスが指を鳴らし。

 ガタと音が鳴り扉が開く。

 金貨が運ばれてきた。

 続いて美女が一〇人王の間に入って来た。

 全員ドレス姿だった。

(人の姿維持できるという事は人ではないよな)

 と孝介は思う。

「どうだ。そなた為、我が選んだ。家臣になればそなたに差し上げよう」

 孝介は冥王の瞳を真っ直ぐ見て。

「家臣にはなれません」

「そうか」

 冥王ハデスは続けて言う。

「もしやそなたも我と同じ幼い子が好きか?」

 突然空間が歪む。

 バリバリっと空間に亀裂が入り、大きくなって行く。

 空間から最初に足、最後に頭が出てきた。

「ふう」

 と息を吐いたのは魔王ディアだった。

 魔王ディアはスタスタ歩き冥王ハデスに抱きついた。

「冥王ハデスよ。妾の夫になる気になったかのう?」

 冥王ハデスは魔王ディアを押すがぴくりとも動かない。

「それより離れよ」

「嫌じゃ」

 魔王ディアは冥王ハデスを見つめ。

「妾はそなたを愛しておる。そなたの気持ちを聞かせてはくれぬか?」

「年増は要らぬ」

 魔王ディアはプルプル震え。

「年増」

 と魔王ディアは呟く。

 ピリピリした空気に変わる。

「こうすけお兄ちゃん離れた方が良いよ」

 とキャロに言われ、孝介達は冥王ハデス、魔王ディアから距離を取った。


 戦闘になると思いきや。

 ピリピリした空気が元の空気に戻り、魔王ディアはぺたんと座り込み。

 魔王ディアが泣き出した。

「うあーん。・・・・・酷いのじゃ。今日は散々なのじゃ。こうすけ殿に振られるし、

冥王ハデスには酷い事言われるしもう帰るのじゃ」

 魔王ディアは立ち上がり、去った。

 

 冥王ハデスは孝介達に近づき。

「すまぬな、こうすけ殿。お見苦しい所を見せた。我とあやつとは長い付き合いなのだ。

知っての通りあやつには八人の夫が居る。頼みがある。魔王ディアを支えてやって欲しい」

「あの九人じゃあ」

「ああ、我を含めて九人だが我は夫にはなれぬ。返答を聞かせて貰いたい」

「支えるって夫の役目では?」

「そなたの言いたい事は分かる。残念だがあやつの夫8人は見せかけだ」

 孝介は冥王ハデスに聞き返す。

「見せかけ?」

「そうだ。魔王ディアが恐ろしくて結婚したのだ」

 重い空気が流れる。

 重い空気の中、冥王ハデスは口を開く。

「こうすけ殿に支えてやって欲しいと言った理由は魔王ディアより強く、怖がっていなかった」

「強く、怖がっていなかったって良く分かりますね」

「キャロがこうすけ殿と魔王ディアの戦闘を観戦してたからな」

「なるほど」

「他の理由も聞くか?」

 孝介は首を横に振った。

「そうか。改めて聞く。そなたは魔王ディアを支える気はあるか?」

「分かりました。自分なりに支えてみます。夫にはなりませんが」

 と孝介が答えると空気が軽くなった。

 冥王ハデスの口元が緩む。

「そうか、ありがとう」

 孝介は冥王ハデスの礼を素直に受け取った。

 冥王ハデスはポケットから何かを取り出した。

 孝介達に見せた。

 形から察するにペンダントの様だ。

「これを受け取って欲しい。と言っても零体のままでは受け取れないな、

魔界に着いたらキャロから受け取ってくれ」

 冥王ハデスはキャロにペンダントを渡した。

 冥王ハデスは孝介に尋ねた。

「こうすけ殿。もう魔界に行くか?」

「はい。魔界に戻ります」

「そうか。また会う事もあろう」

 冥王ハデスは後に向いた。


 孝介達は魔界に着いた。

「こうすけお兄ちゃん。あたしの注射で零体を肉体に戻してあげるね」

 キャロは霊体が抜け倒れている孝介の肉体に注射を打った。

 孝介、カイト、アキトは孝介の肉体へ戻って行く。

 孝介は立ち上がり感触を確かめる。

 手足を動かす。

「問題ないな」

 孝介は二人に問う。

(カイト、アキト問題ない?)

(問題ありません。ただ、ここは落ち着きますね)

 カイトに続きアキトが言う。

(問題ない)

(良かった)


「こうすけお兄ちゃん。ハデスお兄ちゃんから受け取ったこのペンダントあげるね」

 孝介はキャロからペンダントを受け取った。

 キャロは笑顔で。

「あたし行くね。また会おうね、こうすけお兄ちゃん」

 キャロは去った。


 早朝。


 ゆさゆさ。

 ゆさゆさ。

 と孝介は揺らす。

 魔王ディアは目を覚まし。

「えーい。誰じゃ」

 魔王ディアはがばっと勢いよく、起き上がり。

「こうすけ殿。何故ここに居るのじゃ」

 孝介はサラッと言った。

「デートしませんか?」

 

 魔王ディアは硬直した。

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