魔界
「お前ダノンを倒したみたいだな」
孝介は睨む。
「おー。こわいこわい」
男はまったく怖がっていなかった。
「お前に会わせたい人物がいる」
孝介は素っ気なく男に聞いた。
「どなたですか?」
「魔王だ」
「魔王っていうと魔界ですか?」
「そうだ。話が早くてたすかるな。二日後に向かいに行く。衣食住は我々が用意する。魔界に行く人数は何人でも構わない」
と言い残し男は去った。
エレナ達に魔界に行く事を伝えた。
「こうすけ。魔王って私達が倒したよね」
と聞いたのはアリシナだ。
「天使や悪魔が言うには僕達が倒した魔王は勝手に魔王と名乗っていたらしい」
「それって私達が倒した魔王って偽物という事?」
「そうだね。ごめん黙っていて」
「偽物でも本物でも別にやる事は変わってなかったわ。ただ、モチベーションは違ったわね。こうすけの判断は間違ってなかったと私は思う。
で誰が魔界に行くの?」
ガタっと扉が開く。
ルイが部屋にドタバタと入って来る。
「ご主人様。魔界って」
「それについてはモコとクロス来てから話すよ。ルイ、モコとクロス呼んできて」
「畏まりました」
ルイはモコとクロスを連れて部屋に入って来た。
孝介はルイ、モコ、クロスに魔界に行く事を伝えた。
「という訳で魔界に行く事は決まっているのだが、まだ誰が行くか決まっていないんだよね。
どうしようか?」
コツコツ
コツコツ
と時間が流れた。
相談の結果、全員で魔界に行く事になった。
魔界。
孝介達は男に案内された屋敷に入ると、
ズラッと執事が並んでいた。
{さっきから微動たりしない。生きてるのかなぁ}
と思い孝介はほっぺを突っつく。
「きゃっ」
とかわいい悲鳴だった。
「あの女性ですか?」
「はい、私以外にも何人か居ます。魔王様が趣味で…いえ何でも」
{魔王の趣味?男装が…どんな人なんだろう}
「こうすけ殿こちらです」
孝介は男に呼ばれ後をついて行く。
豪華な部屋に案内された。
トントン。
と扉をノックする音が聞こえ。
「どうぞ」
と孝介が言った。
執事が部屋に入り。
「魔王城まで案内します」
と言い執事は後を向き歩き出した。
「この馬車にお乗り下さい」
と執事に言われ孝介、エレナ、アリシナは馬車に乗った。
魔王城。
孝介達は王座の間で魔王と対面した。
孝介は魔王の容姿が中学生位に見えた。
魔王は水着に近い服装だった。
(魔王、露出狂かな?)
と孝介は思った。
王座の隣にいる美男子が言う。
「平伏せ」
魔王が制した。
「構わぬ妾が魔王ディアじゃ」
魔王ディアは立ち上がり、
階段を下りた。
魔王ディアは孝介の頬に右手を添えた。
「そなたがこうすけ殿か?」
「はい。僕が孝介です」
「どうじゃ妾の一〇番目の夫にならぬか?」
孝介は即答した。
「なりません」
魔王ディアは淋しそうに言う。
「ふむ、そうか。所でこうすけ殿がダノンを倒したじゃな?」
「違います」
孝介はアリシナを見て続けて話した。
「アリシナが倒しました」
魔王ディアは目が開き。
「それは本当か?アリシナ殿」
「ええ、本当です」
「そなたの魔力、量っても良いかのう?」
「ええ」
とアリシナが返事をすると魔王ディアの目が緑色に光った。
緑色の光が止むと魔王ディアが頷きボソっと言った。
「なるほど。確かにこの魔力量なら倒せるのじゃ」
「アリシナ殿。こうすけ殿はそなたより強いじゃろ?」
「強いわ」
とアリシナが答えると魔王ディアはニンマリ笑った。
「あはは。そうか、そうか。どの位強いか試さないといかんな」
「場所を変えるのじゃ」
魔王ディアは部屋から出た。
孝介達は魔王ディアに付いて行くと広場に出た。
「ここで始めるのじゃ」
魔王ディアから黒い翼が飛び出た。
それを見たエレナとミシェルは孝介から離れた。
孝介と魔王は間合いを詰める。
拳と拳がぶつかり衝撃波が生まれた。
悪魔や魔族が孝介と魔王の戦闘を傍観していた。
「あの人間。魔王様と互角?」
と魔族の呟きを悪魔が拾う。
「今の所は」
「魔王様の方が強いわよきっと」
と女悪魔が言うと、
男魔族が。
「いやいや、あの人間も相当できるぞ。俺には人間の方が強いように見える」
「あんた、何言っているの。魔王様の方が強いわよ」
女悪魔と男魔族はいがみあった。
そこに真摯な男悪魔が。
「まあまあ、二人とも魔王様と人間の戦闘を見ようではないか」
ドカバキ。
五分経過したが、戦闘は続いていた。
力を開放し互角以上に戦える相手を見つけ、
魔王ディアは笑っていた。
「妾は楽しいのじゃ。残念じゃが、そろそろ決着つけるのじゃ」
魔王ディアから血管が浮き出る。
「はー」
と掛け声と共にエネルギーの塊を魔王ディアは孝介へ飛ばす。
孝介はエネルギーの塊を両手で受け止める。
孝介から汗が流れる。
「このー」
と言い孝介はエネルギーの塊を弾いた。
魔王ディアに当たりエネルギーの塊は爆発した。
光が広場全体を包んだ
「魔王様」
と傍観していた悪魔、魔族が叫んだ。
視界が晴れる。
魔王ディアはその場で倒れ。
「はあ、はあ」
と肩で息をしていた。
魔王ディアは笑みで。
「妾の完敗じゃな」
孝介は魔王ディアに近づき手を差し出す。
「立てます?」
手を掴み魔王ディアは立ち上がった。
魔王ディアの服装はボロボロだった。
「あれじゃな。そなたに渡したいものがある後で王座の間に来るのじゃ」
「こうすけさん。怪我ありませんか?」
エレナに聞かれ孝介は答える。
「無いよ」
アリシナが孝介の上着を捲った。
「うん。怪我無いようね」
アリシナが手を放すと捲れた上着が自然に元に戻った。
孝介は何事も無かった様に言う。
「王座の間に行こうか?」
「行くわ」
「行きます」
アリシナとエレナは返事をした。
王座の間。
「こうすけ殿に渡したいものはこれじゃ」
と言うと魔王ディアは抱き抱えていたものを孝介達に見せた。
「これは卵?」
「そうじゃ。魔族の卵じゃ。こやつを一緒に連れてってやってくれ」
「分かった。連れて行く」
と言うと孝介は大きな卵を受け取った。
にこっと魔王ディアは笑い。
「良かったのじゃ。こうすけ殿、三〇分は肌身離さず持っていて欲しいのじゃ」
「分かりました。他に有りますか?」
「無いのじゃ。元々こうすけ殿達の強さを確かめる為に呼んだのじゃ。今日は屋敷に泊ると良いのじゃ」
「分かりました」
と返事をし王座の間から孝介達は出た。
魔王は孝介達が王座の間から出て行くのを見届けると。
「ぐふふふ」
とニタニタ笑った。
孝介は大きな卵を寝室に置き寝た。
次回 「冥王はロリコン?」