少年
少年は山道を走った。
足はボロボロ、あっちこっち悲鳴を上げていた。
それでも走った。
遠くから男の声が聞こえた。
「ガキ! 何所行った!」
少年は恐怖で涙を流した。
(殺されるなんて嫌だ! 死にたくない)
少年は必死に走る。
足がもつれ少年は倒れ、べちゃと泥が付いた。
少年は立ち上がり走り出す。
男との距離も次第に縮んだ
少年は石に躓き倒れた。
少年は起き上がり振り向くと男が目の前まで迫っていた。
恐怖で少年は怯えていた。
少年は後ずさりした。
「助けて」
と少年は小声を出すのがやっとだった。
男は冷たく言い放つ。
「駄目だ。男は皆殺しだ」
男は持っていた斧を振り上げた。
少年は目をつぶった。
(僕は死ぬの。誰か助けて)
と少年は願った。
「ぐげぇーーーー」
と男は衝撃を受け、声が出た。
少年は恐る恐る目を開ける。
目の前に男は居なかった。
少年はきょろきょろと辺りを見渡すと男は離れた場所で倒れていた。
男を吹き飛ばし倒したのは孝介だった。
孝介の他にエレナとミシェルが居た。
少年に駆け寄り孝介は優しく声を掛けた。
「もう大丈夫だよ」
孝介はエレナに言った。
「エレナ少年の治療お願い」
「わかりました」
とエレナが返事すると少年に近づき。
エレナは穏やかな笑顔で。
「治療始めますね」
少年は痛みが無くなり礼を言った。
「お姉ちゃん。ありがとう」
「どう致しまして他に無事な人いる?」
少年は下を向き。
「わからない」
「村の場所教えてくれる?」
少年は言った。
「お姉ちゃんが山賊から助けてくれるの?」
エレナが目線を孝介に送り。
「私じゃなくてそこの方が助けてくれるわ」
「お兄ちゃんが?」
孝介は力強く言った。
「そうだよ。僕が山賊倒すから」
「分かった教えるよ」
孝介とミシェルはエレナと少年より先に村に辿り着いた。
あっちこっちに死体があった。
ざっと数えて一〇〇人。
込み上がってくる怒りを孝介とミシェルは抑えた。
村人は中央に集められ取り囲む山賊が三〇人程いた。
「僕は右側から攻める。ミシェルは左側お願い」
「わかりましたわ」
孝介とミシェルは音を立てずに山賊に近づく。
山賊は何にも見えなかった。
バタバタ。
バタバタ。
バタバタ。
と山賊は倒れて行く。
建物の陰から巨大な醜い男が出て来た。
「ひっ」
と村人は悲鳴を上げた。
ドスン。
ドスン。
と音は立て巨大な醜い男が孝介に近づいて来る。
「どうだ。俺、醜いだろう。なんせ俺はオーガと人間のハーフだからな」
孝介は見た瞬間、こいつが賞金首の奴と思った。
孝介達が山奥に来た理由は賞金首退治だ。
巨大な醜い男は言った。
「俺、優しいからな」
巨大な醜い男の目が動き、ミシェルが映った。
「俺に女を寄越せば、お前の命だけで良いぞ」
孝介はため息を吐いた。
「はぁ」
孝介は倒してしまおうと思った。
ゾク。
孝介は悪寒が走った。
「ふふふ」
とミシェルが不気味に笑っていた。
ミシェルを見た孝介は。
(ミシェルを怒らせるのは止めよう)
アキトが孝介に話し掛けた。
(お前でも恐怖、感じるんだな)
孝介はミシェルをチラっと見て。
(当たり前だと思うよ)
アキトも肯定した。
(そうだな)
ミシェルは巨大な醜い男に向かって一歩踏み出した。
「私を寄越せですって」
また一歩踏み出す。
「わ・た・く・しは」
さらに一歩踏み出す。
「こうのものですわ」
孝介は「いや違うぞ、ミシェル」とは言えなかった。
カイトは孝介に話し掛けた。
(不味いですよ。このままでは彼女、間違いなく殺しますよ)
(分かっている)
と言うと孝介は走り出していた。
孝介はミシェルを見る。
{怖いがやるしかない}
{ごめんミシェル}
と孝介は心の中で謝り、ミシェルを抱き付いた。
ミシェルは顔を下に向け抱き付いた相手を見る。
(こう)
ミシェルが孝介だと気付くと般若から普段のミシェルに戻って行く。
ミシェルは徐々に冷静さを取り戻し、顔が真っ赤になった。
(なぜ私にこうが?)
孝介がミシェルから離れ巨大な醜い男の目の前に立つ。
「あっ」
とミシェルは名残り惜しいと思い声が出た。
巨大な醜い男はポカーンとしていた。
巨大な醜い男は先程まで感じていた恐怖が無くなり動き出す。
「邪魔だー」
巨大な醜い男は孝介を殴る。
孝介は拳を受け止め力を入れた。
ミシミシ。
ミシミシ。
と音を立て拳は砕かれ。
「ぎゃあーーーーー」
巨大な醜い男は悲鳴を上げ、後ずさりした。
巨大な醜い男が瞬きをした時には気を失っていた。
どうやら村人で生き残った男は少年一人の様だった。
少年の両親は共に亡くなっていた。
孝介達は村人と相談し少年をリアル王国にある孤児院に預ける事にした。
エレナとミシェルは少年を孤児院に預けていた頃。
孝介は巨大な醜い男を引き渡し賞金を受け取っていた。
孝介はエレナとミシェルと合流し帰宅した。