帰還1
孝介は先程リアル王国に帰還した。
なんでも屋は綺麗だった。
クロス、モコ、ルイが定期的に掃除をしてくれたおかげだ。
ヘトヘトだった孝介は布団を敷きそのまま眠りについた。
目を開けるとエレナが居た。
はたから見るとエレナが孝介を押し倒している様に見える。
一度、目を閉じ孝介は心を落ち着かせた。
再び目を開けた。
エレナはにっこり笑い。
「私達が今日からお世話する事にしたんですよ」
孝介はブルリと震え。
{恐い最近エレナが恐い}
エレナは笑ったまま。
「どうかしました? こうすけさん」
「いや、何でもない」
「それは良かったです」
悪寒が走り孝介は。
{エレナの笑顔が恐い?}
孝介はエレナをチラっと見る。
{気のせいだ。気のせいだ。気のせいだと思いたい}
状況を確認し、孝介は勇気を出してエレナに声を掛けた。
「着替えるからそこをどいて」
エレナは孝介の横に座った。
それを見た孝介は。
「出来れば部屋から出て欲しいのだけど」
エレナは部屋から出る際。
「手伝いましょうか?」
「いや、いい」
と孝介が断るとエレナは部屋から出た。
エレナはエプロンを付け料理を作り始めた。
「こうすけさん。今から朝食作りますね」
食材無かったはずだ、ここには。
気になり孝介はエレナに聞いた。
「食材どうしたの?」
エレナは振り向き。
「屋敷から持ってきましたので」
「そう」
不思議と孝介はエレナと自然に会話ができた。
恐怖が無くなっていた。
エレナはできた料理を食卓に並べていく。
朝食のメニューはパン、サダラ、スープだった。
エレナはにこにこして孝介を見つめていた。
孝介は視線に気付き。
「エレナ。見られてると食べにくいんだが」
「すみません、こうすけさん。久しぶりに二人きりで嬉しくて。一週間ここに居るんですよね?」
「居るよ」
エレナはにこにこ笑い。
「良かったです。明日はアリシナさんがこうすけさんをお世話するそうです」
孝介は聞かなかった事にしてスプーンでスープを飲み始めた。
朝食後、孝介はエレナと本屋に来た。
孝介は雑誌コーナーを見て回る。
一冊の雑誌が目に留まり立ち止った。
雑誌に載っていた洋館の前に孝介とエレナは来た。
{お化けが出てきてもおかしくないな}
と孝介が洋館を見て思っていると。
「こうすけさん。何しにここに?」
「ちょっと気になって調べに」
そう言って孝介は洋館の敷地内に入りドアノブに右手を掛けた。
カチャ。
鍵はかかっておらず簡単に開いた。
丁度その頃。
ビキニパンツ一丁のアキトはビーチチェアの上で寝そべっていた。
爽やかな笑顔でカイトはアキトに声を掛けた。
「それにして暑いですね」
「だな」
二人は肉体が無いので暑さを感じない筈だが孝介の体内にいる影響で暑さを感じた。
アキトは上半身を起こし。
「かき氷食べようぜ」
ポン。
音が鳴ると何もない空間からかき氷が出た。
カイトに驚きはない。
今、二人がいるのは孝介の精神世界だ。
孝介が記憶しているものは何でも生み出せる。
アキトはかき氷を口に運ぶ。
「冷たくてうまいな」
カイトもアキト同様かき氷を出し食べた。
「本当に美味しいですね」
二人が美味しく感じるのは孝介が以前食べて美味しいと思ったからだ。
アキトとカイトは2杯、3杯と勢い良く食べ続けた。
カイトは真顔になり。
「こうすけは恋をした事が無いのでしょうか?」
「分からん」
アキトは続けて話す。
「ただ俺に分かるのは、こうすけの心はボロボロだという事だ」
カイトは相づちを打つ。
「でしょうね。私達にできる事があると良いのですが」
アキトは頷き。
「だな」
埃が床に積もっていた。
何年も使われてい無い様だった。
孝介とエレナは埃が舞い上がらない様に慎重に歩いた。
二人が歩く度に足跡が残る。
数時間経過した。
結局洋館には何もなかった。
夜、孝介は布団を敷き眠りについた。