”ス”テキな二人
「のど渇いた。何でもいいから飲み物」
「分かったわ。ちょっと待ってて……はい、どうぞ」
「サンキュ……って、すっぱっ!? えっ、何これ?」
「すっぱい? そんなはず……ごめん、これ酢だったわ」
「はっ!? 酢! ありえねえ、普通間違うかよ。わざとかわざとなのか!」
「素で間違えたわ……酢だけに」
「上手くねえよ!」
「えっ、酢だけに?」
「そっちの美味くねえじゃねえよ!」
「まぁ、酢だからおいしくないのは当然よね」
「あっ、どういう意味だ?」
「おいしいとは美味。酢は英語でビネガー。ビネガー、美ネガー、美ネーガー、美ネーカー、美ねえか。美味から美を抜くとただの味。……ねっ」
「…………それはそうとちゃんとした飲み物ないのかよ」
「スルーが一番傷つくわよ」
「悪いけど、俺には処理できねえぞ」
「それに関しては謝るわ。私もどうかと思ったもの」
「だったら言わなきゃいいじゃねえか」
「思い立ったが吉日とはよく言ったものよね」
「今の状況なら口は災いの元というほうが合ってると思うが」
「私を辱めてどうするつもりなの?」
「そんなつもりはまったくない」
「顔から火がでそう……物理的に」
「それだとただの人体発火現象だぞ」
「減らず口を叩かないで」
「減りようがないぞ。口は一つしかないからな」
「ちっちっちっ、甘いわね。糸で縫えば開かないからゼロになるわよ」
「やめろよ実行に移すのは」
「それはあなた次第よ」
「そうかよ」
「えぇ、そうよ」
「…………」
「…………」
「なんか疲れたな」
「えぇ、そうね。あなたが素直に酢を飲んでいたら疲れなかったのに」
「やっぱわざとだろ」
「さぁ、どうかしら? ……ただ一ついえるとしたら私は今無性に酸っぱいものが欲しいわ」
「……まさか」
「えぇ、そのまさかよ。赤ちゃんができたの」
「マジかよ。早く言えよな。っで男、女?」
「さぁ、まだそこまでは。ただ男の子がいいわね。……オスだけに」