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モンハン書いたら速攻消されたので、オリジナルをあげます(´・ω・`)
悪い箇所あれば教えてください、一人じゃ限界です……
「うひょー! 山田氏山田氏! 見て見てリザードマンでござる!」
「あー……うん……」
「おおおお! なにあの胸!? 三次始まってたお!!」
「お、おう。……なんでこのデブこんな元気なの?」
心から思う。
いや、それより頭が痛い。デブが元気なのがすごいイライラする。思考が混濁しているのが自分でもわかった。
「完成度激高! あ、カメラ! 山田氏、カメラだしてよ」
うぜぇ、こっちはそれどころじゃないんだよ。
頭痛をこらえるためうずくまったときに気づいたのだが、俺たちはいま土の上にいる。意外だった。だから、後ろを向いた。
こそには、門があった。
東京都千代田区、秋葉原駅から徒歩15分の裏路地に、一軒のホビーショップがあった。俺たち二人がその店に行くと、見慣れない小さな店が出来ていた。外見は古ぼけていて、新築ではないことはわかったが、たいして気にしていなかった。
東京なのだから、半年もこなければ様変わりするだろう、と、無意識に納得してしまったのだ。――いいや、それが後悔に繋がるとは思えない。そこに気づいたとしても、その店には入っただろう。
おどろおどろしいとまでは言わないが、どこぞのホラー映画を彷彿とさせる洋式の外観。しかし裏路地に合わせたかのようなミニチュア感が、とてもアンバランスだ。
ドアは手すりを押すタイプで、アメリカやヨーロッパの80年代映画を思い出した。ネバーエンディング物語の映像が一瞬頭をチラついたが、内容はよく思い出せず、それを気にすることもなかった。
デブが先行して店に入る。扉でつまずくデブをバカにしながら続いて俺も入った。夏だというのになんと涼しいのだろう……エアコン嫌いの俺としては、なんとも迷惑な話なのだが、デブは嬉しそうにタオルで顔を拭いていた。臭いタオルで顔を拭くものだから、刺激臭がこっちにまで漂ってくる。いままですれ違っていた人もこの臭いを嗅いでいたのかと思うと、申し訳なくてDSの電源を切ってしまいたくなる。
そのデブを見たときに気づいたのだが、はて、エアコンはどこにあるのだろうか。見渡そうとしたとき、背後で扉が閉まった。その音に意識を奪われ、エアコンのことは忘れてしまった。どうせどこかにあるだろうし。
「いらっしゃーい。あらあらー、珍しいー。お客さんだー」
トタトタという軽い足音とともに、二階から女性の声が近づいてきた。
降りてきたのは日本人――なのかな。本場のメイドが着ていそうな堅苦しい洋服と、大きい帽子がよく似合うおばさんだった。美熟女キターと小声で呟くデブが目障りこの上ない。
白い髪の毛が、白髪であるとは思えない初老の女性。ほうれい線がうっすら流れているが、それが逆にそそるむしろいい、そう呟くデブの言葉が俺の心を侵食する。そう言われればそうかもしれない。
「ここに越してきて初めてのお客さんねー、あ、ちょっとまっててね、プレゼントあるのよー」
そう言いつつおばさんは、棚から宝箱を取り出した。
小さいがRPGに出てくるような宝箱。なにこれほしい。
「無料だからねー、気にしないでねー」
おばさんが取り出したのは――なにこれ? え? なにこれ、え?
おばさんは、模様をつまみ上げていた。
「どっちがいいー? 剣とー、星なのー。男の子だから蝶々は嫌よねー。他のもあるけどー、まぁいいよねー」
それをもらってどうするって気がしないでもないが、おばさんは両手で俺たちに模様を差し出していた。
切り絵なのだろう。あいにくそれをそのまま持ち歩くわけにはいかないので、断ろうと思った矢先、デブはデブらしからぬ速さで動いていた。
おばさんの両手を肉まんでも包み込むように握って、お礼を言おうとしたのだろう、その時だった。
「いでぇっ!?」
デブが両手を離し、千と千尋のお母さんのようにこっちに転がってきた。前足をかばうように体を丸め(傍目にはよくわからないが)痛みをこらえているようだ。
「え」
「あらあらあらあら、両方つけちゃったー。どうしよー、一人一個の予定なのにー。まったく、欲張りさんねー」
プギィプギィと喚く豚と心配する素振りもなく、おばさんは――俺を見た。
「あ、え、あ、の」
逃げるとか、敵なのかもとか、そんな考えは一切浮かんでいなかった。思考がまったく追いつかない。
おばさんは自分の指輪を外しながら俺の手を取り、それを小指にはめた。
その瞬間、唐突な頭痛に襲われる。延髄から脳へ五寸釘でも打ち込まれているような痛み。声も出せずにうずくまり、口からよだれを垂らすハメになる。
「あらあらー大丈夫ー? お薬持ってきましょうかー?」
パタパタ足音が聞こえてくる。痛みをこらえ顔を上げると、あのおばさんがのんびりと二階に登っていく。思考を必死に取り戻す。痛い、痛い、痛いけど、とりあえず逃げよう。せめて隠れよう。
デブはよだれと涙で顔をベチャベチャにしながら、変わらず転がっている。そのデブを手すり替わりに立ち上がる。
そこには、門があった。
背後には扉があるが、それより先に、壁にある門が目に入ってしまった――そう、俺が一番後悔しなければいけないところだった。デブを引きずるのに扉の段差が邪魔になるなどと、どうせ回らない思考なのだから気にしなければよかったんだ。
門の位置を考えれば、そこを潜れば今日秋葉原に来た目的の、ホビーショップにつながっているはずだ。交番が駅のほうにあったな、いや、それより電車乗って逃げるべきか。
足音が聞こえる。ズルズルと引きずる音とは全く異質な、ペタペタという足音。二階からだ。
「お薬ねー、切らしてるのー、って、あらー?」
見つかるっ!
慌てて――充分慌てているが――デブを力任せに門の奥へ押し込む。デブのベルトに指が引っかかって、俺もそのまま門の外側に倒れ込んだ。前のめりに倒れこみ、土を噛むことになる。
なぜ土が口に入ったのかは理解できないし、そんなこと気にする余裕もなかった。振り返り、あのおばさんを見る。
――なんでおばさんは、門を締めようとしているのだろうか。
「説明とかしないでー、ごめんねー」
バタン
門が完全に閉じた。
「はぁ……」
頭痛はひどいが、とりあえず一安心だ。都会こえぇぇぇ。都会超こぇぇぇ。もうやだ、今日は帰ろう、二ヶ月旅行なんて無理があったんだ。くそ、ダメだ、立てない。
ぐちゃぐちゃと思考が淀んでいるなか、黄色い悲鳴が聞こえてきた。
「うひょー! 山田氏山田氏! 見て見てリザードマンでござる!」
「あー……うん……」
「おおおお! なにあの胸!? 三次始まってたお!!」
「お、おう。……なんでこのデブこんな元気なの?」
心から思う。
いや、それより頭が痛い。デブが元気なのがすごいイライラする。
「完成度激高! あ、カメラ! 山田氏、カメラだしてよ」
うぜぇ、こっちはそれどころじゃないんだよ。
頭痛をこらえるためうずくまったときに気づいたのだが、俺たちはいま土の上にいる。意外だった。だから、後ろを向いた。
門は閉まっていて、あのおばさんが追ってくる気配はない。
「撮影は今度にしろよ。それより逃げよう……やべぇって東京」
そう言って俺は顔を上げた。
「え」
そこには――いや、そこは、まるでRPGに出てきそうな神殿だった。しかも広い。体育館くらいあるぞ。ありえない。ありえない。ありえないだろこのデブ。
「いてぇ、山田氏、手痛いんだからー、早くカメラー!」
「こいついっぺん殺したろうか」
声が響く。その響く感じが心地よくもあるが、目の前にいる四人の視線は、とても居心地が良いとは言えない。
「お、おい、あいつしゃべれるぞ!」
「人間……だよな? どうする、殺すか?」
なんて物騒な!
四人は男女混合のコスプレ一団に見えた。
デブが言ったとおり、赤い鱗を持つトカゲ人間。手には身の丈を越える長い槍。これは男。アルマジロのような甲殻を持ち、大きな盾をこちらに構える性別不明のやつ。一番人間っぽい、猫のような毛並みと目を持つ巨乳の猫娘。三次元始まってたな。可愛いか可愛くないかで言えば、正直怖い、え、怖いよ、可愛くないよ。最後の一人は、杖を持った小さなやつ。魔法使いのような出で立ちで、フードを被っているためなんとも言えない。
完成度で言えば、ものすごく高いだろう。なんだこれ、コスプレ? こんな特徴のある格好、アニメでも漫画でも忘れるはずはないのだが。
パシャ
「なんのコスプレだろーねー! いてぇー! こんなコアなコスプレイヤーいるのに俺が知らないとかー、一生の不覚ー」
「おま、やめろって!」
「え、あ、そうか、写真いいですかー!? すみませんー!」
「ちょ、え、なにしてんのあいつら! 魔法なの? え? 光ったよね!」
猫娘の声が神殿に響く。そして、その瞬間、デブから不吉な言葉を聞き取ってしまった。
「外国人コスプレイヤーやっぱすげええええ! 全日がオッキするレベル! 山田氏英語できるよねー! 写真とってきてよ。俺、やっぱり手が痛くてー」
取り返しがつかないところに、俺たちはいるのかもしれない。とりあえずデブは殴った。