余白なお 超短編集
『夕日に照らされて』
「河野くんどうしたの?」
「えっ?何でそんなこと聞くの?」
「いや、なんか言いたそうな顔してたから
気になっちゃってさ。」
「、、別に何も言いたいことなんかないよ。」
「そっか、ならいいけど。」
急に水原に言われ、びっくりしてしまった。
俺ってそんな顔してたのかな?
小学校の5年3組の教室。
1日を終えるホームルームが終わり、
担任の数谷先生に言われて、
今日の日直の仕事をやっていた時のことだった。
みんながランドセルを急いで背負って帰っていく中、
急に数谷先生から
「今日の日直は河野と水原だな!クラスで飼ってる亀の水槽あるだろ?最近亀が元気がない気がするし、水槽洗ってやってくれないか?」
と言われた。
(やっと帰れると思ったのに面倒事を押し付けやがって)
なんだか俺は先生にイラっとし、
モヤモヤしてしまった。
だけど先生とは朝の通学でたまにばったり会ったりして、
「河野おはよう!今日も元気に頑張るぞ〜!」
「おっ、河野今日は楽しい1日なりそうだな!」
とか、声を掛けてくれる優しい先生なんだよなぁ。
「はい、わかりました。」
とだけ言い、水槽の所へ向かった。
水原も俺のとこに来て掃除の準備に取り掛かる。
「じゃあ2人ともよろしくな〜!」
俺たち2人にそう言い残し、
そそくさ教室を出ていく先生を見送った。
そうして水原と水槽の掃除をすることになり、
亀を別の容器に移し替え、
一緒に水槽を洗おうとしている矢先、
水原にそう言われて内心びっくりしてしまった。
一瞬手が止まってしまい、
「なんでそう思ったの?、、」
と、水原に聞いた。
「なんでだろう?なんか河野くんの顔見ててそう思っちゃっただけ。違かったならごめんね。」
水原は気まずそうに謝ってきた。
なんか悔しいな、水原に気付かれて。
いつも周りの人達に本心を言ったことなかったからだ。
水原に見透かされ、
少しだけ嫌な気持ちになった。
「そういう水原もなんか言いたそうな顔してたけどね。」
「えっ?、、」
「いや、やっぱなんでもない。」
教室の近くにある水場に着き、ゆっくり水槽を下ろし、水槽の中にある水を出す。
「ごめん。私、、」
「、、別にいいよ。」
しばらく沈黙が続いてしまい、なんとなく思ってたことを言おうかなって思った。
「、、本当はあるよ。言いたいこと。」
「えっ?、、」
「だってさ、
あの亀って先生が勝手に持ってきて、
クラスみんなで飼って生き物の尊さを知ろうって言ってた割に先生は全然世話しないじゃん。」
「確かに。先生が勝手に持ってきてたね。」
「だろ?なのに自分は面倒見ないんだぜ。
意味がわからないよ。」
「ははっ。ほんとそうだね。」
「ほんと、大人っていい加減だよな。
数谷先生は優しい先生だけど、
なんかさ、たま〜に自分勝手だよ。」
と言って水原の顔をチラッと見てみたら、
夕日に照らされて眩しかった水原が笑ってた。
思わず水槽を磨く手が止まってしまった。
「あはははっ、河野くんもそう思ってたんだ。
私と同じ事考えてたから面白いね!」
えっ?そんなに面白い事言ったか俺?
てか水原も同じ事考えてたんだ。
何だか胸の奥がフワッとして
水原に対して親近感が沸いた。
「水原もそう思ってたのかよ。
なんだよそれ。お揃いじゃん。」
「そうだね!お揃いだぁ。」
「てか、何でわかったのさ?」
「えっ?だって河野くんの顔にそう書かれてるもん。」
「ウソっ。まじで?」
顔を触りながら慌てて水原から顔を逸らした。
なんか顔が熱いな。
う〜ん、なんかやっぱ悔しい。
「河野くんって意外とわかりやすいんだね。」
「えっ?」
「だっていつも見てたからわかるようになっちゃった。」
「えっ?!」
「あっ!?えっと、、なんでもない、、。」
「あっ、、うん、、。」
「「、、、、、、。」」
それからお互い水槽の掃除に専念してしまったまま黙ってた。
黙々と水槽を洗い、新しい水を入れ、
水槽を元あった場所に運び、
カルキ抜きの液体を入れて混ぜ、
綺麗になった水槽に亀を戻して一息つく。
「ふぅ〜やっと終わったな。」
「そうだね。疲れたぁ。」
やることもやったしあとは帰るだけだな。
陽の光がオレンジ色に教室を照らし、
お互い帰りの身支度をしていた。
なんだろう?さっきのことが頭から離れなくてモヤモヤしてたら、
「じゃあ帰るね。バイバイ。」
と、ランドセルを背負って教室の入り口に移動していた水原が言ってきた。
準備早いな。
「あっ、うん。バイバイ。」
そう言って残りの荷物をランドセルに詰め込んでいた時に、
「あっ、あのさ!」
「ん?どうした?」
「えっと、あの、、今日、、
話したことさ、他の人には内緒にしようね、、。」
「えっ?、、なんで?」
「だってみんなに知られたら、なんか恥ずかしい、、。」
「えっと、、うん。わかった。」
「約束ね!嘘ついたら
はりせんぼん飲ますから!」
「なんだよそれ。ゆびきりげんまんしてないじゃん。わかったよ。」
「じゃあね!バイバイ!」
と言って水原は急いで帰って行った。
「なんだよそれ、、。」
1人になった教室で
少しの間ぼ〜っとしながら水原のことを考えてた。
なんだかまた2人で話したいって感じて
今度一緒に帰ってみたいなと思った。
初めて書いたもので楽しかったです。
ここまで読んでくれた方、ありがとうございます。
もしよければ今後も載せていくので読んでもらえると嬉しいかぎりです^ ^




