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第13話



 起こしてしまったものはもうしょうがない。そう割り切りつつ、右から来たライ兄様からの小言を左へ受け流しながら、軽くアルグレアス氏に説明をした。

 ちょうどお昼休憩の時間になっていたので、ミスティカドールが円形に座り込んでるだけの簡易陣地を敷き、各々の機体から降りて昼食を摂る。当然話題は、先ほどの岩窟亀と、”トレイラス”の異常機動だ。

 

「ふーム、調弦率がマイナスに、そして機体の反応度が段違いニ……興味深いでスが、ワタシの領分ではないですネ。ワタシはあくまでモ考古学が専門なのデ」


「ですよねー。まぁ私もなんでこんなことができるかわからないんですけど」


『なら尚更、そんな危険なことはしない方がいいと思うな』


 ライ兄様だけは、周辺警戒のため、”ライトブリンガー”に乗ったまま昼食を摂っている。そういう役割なので仕方ないのだが、こういう時でも降りれないのは流石にちょっと不憫に思えてくる。


「まァ、おかげデ岩窟亀は撃破されましタ……ガ、代償に行軍速度がガタ落ちでス」


「重ね重ね面目ない……」


 私の”トレイラス”は、各部関節を保護する術式にエラーを起こし始めてしまった。多分、【ヴァーディクトレイ】を放った瞬間、機体を維持する分のマナまで一時的に持って行かれてしまったのだろう。マナの供給が切れることを想定していない、ミスティカドールの機体維持術式は、それで変な挙動を起こし始めてしまったのだ。

 おかげで、ロボットダンスも斯くやというカクカクの動きしかできなくなってしまった。


「この調子だト……日が落ちる前ニ到着できれバ万々歳、トいった具合でス。まァ、そのためニ余裕はかなり設けテありまス」

 

 こればっかりは、アルグレアス氏のプランニングスキルに救われた形になる。テンションがぶち上がって変なことをした私が全面的に悪いので、もう完全に頭が上がらない。

 他の調査隊の面々も、私を責めるでもなく笑いながら気にするなと言ってくれるので、ますますどこかいたたまれない気持ちが強くなる。


 「さテ、そろそろ時間でス。出発しマしょうカ」


 アルグレアス氏の号令で、各々のミスティカドールに乗り込み、再度行軍を開始した。

 もうこれ以上迷惑はかけない、と心の中でしっかりと誓いながら、私も”トレイラス”との調弦を開始した。


 

 ◆◇◆◇◆◇

 

 

 それから数時間。

 太陽が地平線にたどり着いた頃、私たちはようやく目標地点まで辿り着くことができた。


「つ、ついたーー!! なぁんもなぁーーーい!!」


 たどり着いたその場所は、さながら山中に拓かれたサッカーコートというべきか……森の中にぽっかりと、木々の生えない、真四角の空間ができていた。


「こういうところでサッカーなり野球なりしたいですよねー。The・田舎の原風景……」


 『リファ、流石の田舎でももうちょっと何かあるよ……あと、さっかーにやきゅうって何だい?』


「あとでルールから全部教えますね」


 改めてこの開けた空間を見渡してみると、かなり広いことがわかる。

 一辺だけで1km以上はありそうだ。それが綺麗な正方形になっている。明らかに自然に発生したものではない、人工的に拓かれた場所だ。

 だが、地面を見渡しても、ところどころに雑草が何食わぬ顔で繁茂しているだけで、それ以外は完全に陽光に灼かれきった脆い土壌が露出している。


 『間違いなクここでしょウ。今日ハここでキャンプを造るだけニしましょウ。もうすぐ日が沈みまス』


 アルグレアス氏が場所を指定し、調査隊の”エクスプローラ”のうちの1機が、そこに積荷を下ろす。

 繊細に動作するマニピュレータが積荷を開封していくと、中から組み立て式の大型テントが数基出てきた。1基は調査隊本部用。1基は調査隊たちの就寝用。1基は私とライ兄様の就寝用。まだ出てくる数基は、今回の調査で発掘された資料を一時保管するためのものらしい。


 4機の”エクスプローラ”たちが、とても慣れた手つきでテントを組み立て、配置していく。その様はまるで、ミニチュアを組み立てる工業機械のようだった。

 突如として始まった浪漫溢れる光景にうっとりとしていたら、いつの間にか作業が終わり、調査隊の面々が機体から降りていた。

 調査のしおりを確認してみれば、ここからは打ち合わせの時間らしい。アルグレアス氏やライ兄様に呼ばれ、私も機体を降りていった。


 ”調査隊本部”と書かれた看板が掲げられたテントに入ると、もうすでに折りたたみ式長机が展開されており、その上に資料がいくつか広げられていた。


「わぁ、早いですね」


「当然でス。旧時代の資料というのハ、いつ失われるかわかりませン。なのデ、何よりもまズ速度が優先されるのでス」


 ……もしかしたら私は、かなり彼らの足を引っ張っていたのかもしれない。ますます申し訳なさが膨れ上がってくる。


「まズ、今後の流れを整理しまス。今日はこのまマ、設営が終わったラ各々休息を取ってくださイ。明日ハ、3班に別れまス。ワタシ含めた二名デ、周辺の調査発掘。一名ハ、リファリード殿の”トレイラス”の整備。もう一名とライルネント殿で、周辺警戒をしてもらいまス。警戒班ハ、ライルネント殿が固定、もう一名は調査隊持ち回りで行いまス」


 テキパキとアルグレアス氏が班分けをしていく。ただし、その中に私の名が含まれることはなかった。ある意味当然ではあろう……とはわかるが。


「あのー、私は何をしてればいいですか?」


「ンー……機体整備の補佐でモしててくださイ。それでモ暇なら、調査キャンプの掃除とカ、食事の用意とカ、いい感じにお願いしまス」


「わかりました!」


 ある意味1番適材適所なのだろう。暗に役立たずと言われても気にしないしへこたれないのだ!

 のだ……



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